祝福に満ちた日

    「ベルサイユのばら」で「三ヶ日」と言えば

    『オスカルさまとアンドレが結ばれた日』
    『アンドレの命日』
    『オスカルさまの命日』

    の事なのだとはわかっているのですが

    私にとっては

    『オスカルさまとアンドレが結婚した日』
    『オスカルさまとアンドレが帰ることのない新婚旅行に旅立った日
     あるいは新居に入られた日』

    という感じで まさに ”祭” もしくは ”祝福にあふれた日” なのです。

    雑誌連載当時のファンではなく アニメから入った私は読む前から
    オスカルさまもアンドレも死ぬんだなと なんとなくわかっていました。

    だって 本屋さんに並んでるコミック8巻には
    「神にめされて・・・」って副題があるし
    表紙の絵もそれっぽいじゃありませんか(笑)

    だから オスカルさまとアンドレが亡くなったシーンを初めて読んだ時は
    ”やっぱり 死んじゃったんだ・・・”って感じで、それほど悲しくなかったのです。

    予想していなかったシーンに感動したのはその後でした。
    おそらく亡くなっているであろうばあやの上に
    アンドレと すっごく幸せで満足そうに微笑むオスカルさま。

    ”ああ 良かった! ちゃんとアンドレと再会して幸せなのですね!
     良かった 良かった おめでとうございます。オスカルさま アンドレ”

    まるで結婚式を見ているかのように胸が熱くなって 
    祝福の気持ちでいっぱいになりました。

    その初見のイメージが私の「三ヶ日」感になってしまって
    命日という、本来なら死者に想いを馳せて悼む日という感じが
    すっかり 無くなってしまったのです。

    今年もお二人が結ばれた記念の日をお祝いして
    「過去と未来のわたし」UPしました。

    革命を生き延び身も心も固く結ばれ、いい夫婦になられた
    42歳のオスカルさまと43歳のアンドレ君のお話です。

    あまりにおバカなお話ですので ブログでは連載せず サイトにだけ制限付きでUPします。
    そんなんでもみてやるかと おっしゃって下さる心の広い方は
    その他の一番上をご覧になるか、こちらの直通リンクからお入りください。

    http://ryokufuseirin.web.fc2.com/kakotomirainowatasi/kakotomirainowatasi1.html

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    華やかな葬式9

    "すまない アンドレ、わたしはまた 間違えてしまったのだな"

    アンドレの胸の中で 自分を取り戻したオスカルはやっと落ち着いて考えることが出来た。
    彼の怒りはもっともだ。彼はこの雪の中 ロザリーを探し回っていたというのに 
    わたしはフェルゼンのところに行っただけで帰って来てしまったのだから。

    まただ、また感傷的になって判断をあやまった。

    やはり、自然に忘れられる日など待ってはいられない。

    そんな日がくるのであれば もうとうにきていたはずだ。

    こんなに長い事 思い続けて いまさらそんな日がくるはずはないではないか。

    "やはり きちんと 自分でケリをつけなければ"

    冷えていたアンドレの体も次第に温まってきた。
    それと比して 彼の怒りも収まったようだ。

    今はただ 温かく自分を包んでくれる。

    この温もりがあれば 他になにがいるのだろう?

    『はっはっは やっぱり女だねえ
    センチメンタルに なんぞ なってるから
    ドジをふむのさ!』

    もう センチメンタルになんかならない。

    男として生きてきて、これからも男として生きていく。

    そのために、わたしはこの恋に決着をつけよう。
    女性としてのオスカル・フランソワを心の奥深く沈めてしまおう。
    わたしにはアンドレがいる。彼がいれば大丈夫だ。

    これ以上 周りを困らせないために 
    アンドレを守るためにも 自分はこの恋の幕引きをしよう。

    でなければ、わたしもいつか 愛の狂気におちてしまうかもしれない。
    思いが狂気の域に達する前に引き返せるうちに 終わらせてしまおう。

    今なら まだ 美しい思い出にできる。

    華やかに 優雅に 美しく この恋を思い出の中に埋葬しよう。

    たった 一度の わたしの恋だったのだから…

    翌週、オスカルは華麗なドレス姿で舞踏会に出かけた。

    長い 長い 片思いの葬列は装飾を施した豪奢な馬車に揺られていく。
    式場は煌びやかなシャンデリアに照らされ
    参列者は華やかに着飾り笑いさざめき、葬送曲は心躍るメヌエットであった。

    この葬儀に涙を流したのは オスカルただひとり。

    片思いの相手にも 幼馴染にも 妹のように親しく思っていた女性にさえ、
    一言も漏らすことなく 一人で抱え続けた想いを

    女としてのオスカル・フランソワを

    この時オスカルは胸の奥深く埋葬した。

    その泣き濡れるオスカルの心音の近くで 
    アンドレが自分の代わりにと持たせてくれた懐中時計が
    そっと寄り添うように時を刻んでいた。

    FIN 

    「華やかな葬式」は今回が最終回です。
    お読みいただきありがとうございました。

    華やかな葬式8

    ジャルジェ家に帰るとオスカルは出迎えたばあやにマントを渡した。
    「アンドレは?」
    「それが まだ 帰っていないのでございますよ」
    「そうか…」

    きりきり 痛んでいた胸が 今度はぽっかり空いたようになった。

    自室の暖炉の前のソファに深く座り、膝を抱えて火を見つめた。

    どうして、不安なのかわからない。

    男として生きてきた。

    これからもそうするだけのことではないか。

    『はっはっは やっぱり女だねえ
    センチメンタルに なんぞ なってるから
    ドジをふむのさ!』

    顔を組んだ腕の中に隠すようにして埋めた。

    「ただいま オスカル」

    アンドレの声にオスカルは隠れるように袖で顔を拭った。
    いつの間にか 泣いていたようだ。

    「どうだった…」
    声の調子から おそらくアンドレはロザリーを見つけられなかったのだろうとは
    予測が付いたが他に言うべき言葉がみつからない。
    「おれもダメだったよ。見つからなかった。
    パリの屋敷のみんなに手伝ってもらったんだけどね」
    「そうか」
    「オスカルはどこを探してたの。だれとも会わなかったみたいだけど」
    アンドレの声の調子がいつもと違う。まるで詰問するかのようだ。

    "怒っているのか?アンドレ なぜ?"

    「わたしは…」
    言いかけてピクリとした。そうだ、わたしは何故帰って来てしまったのだろう?
    まだ まだ 探すべき場所は有ったはずだ。
    「わたしはフェルゼンのところへ行った」
    アンドレは怒ったように自分を見ている。
    その目が怖くて つい 言い訳がましいことを口にしてしまう。
    「ほら フェルゼンとロザリーは知り合いだから」
    「それで 他には」
    「他って…」
    オスカルは言い淀んだ。
    「他はどこを探したんだ」
    「いや…」
    オスカルは目線を逸らして答えた。
    「そうか わかった じゃあおれはもう行く」
    アンドレはイライラして出て行こうとした。

    "いやだ! 一人にしないで"

    オスカルの胸が不安でいっぱいになる。

    けれど アンドレは怒っている。
    それでも 縋らずにはいられない。

    「…アンドレ…」

    アンドレはドアノブを回しかけた手を止めたが 返事をしてくれない。

    「アンドレ!」

    今度は強く呼び掛けた。彼は観念したように戻って来て、暖炉の薪を足し、火を起こした。
    それから ゆっくり自分の方を向いてくれた。

    オスカルの胸の穴が埋まっていく。

    そっと隣に座るアンドレから いつものオーディコロンが香る。
    その胸に顔を埋め目を瞑る。

    アンドレの手がそっと肩に掛けられる。

    それだけで

    たったそれだけで

    すぅと不安な気持ちが消えていく。

    (つづく)

    華やかな葬式7

    フェルゼン邸を後にしながら オスカルの心はまた沈んでいた。

    アントワネットさまへの愛ゆえに 破滅への道をひた走るフェルゼン。
    ジャンヌへの愛ゆえに 身を滅ぼしてしまったニコラス。

    ふっとアンドレの顔が浮かんでチクン…とオスカルの胸が痛む。
    彼もまた、自分への叶うはずのない想いを抱いている。

    "あっ…あいつは大丈夫だ!一生わたしが面倒をみるのだから…"

    アンドレはジャルジェ家に一生仕える覚悟と意思があり、
    現当主であるジャルジェ将軍も、跡継ぎの自分もそれを受け入れ
    生涯、責任を持って雇用するつもりであるのだから。
    貴族に仕え忠誠を誓い、生涯独身を貫く者など珍しくはない。

    それなのに、きりきり… 胸が痛む。

    "いけない…この弱さが 皆を危険にさらしたのだ"

    オスカルはふっと額に手を当てる。

    そうなのだ。自分の女性的感傷が、
    アンドレを、部下達を危険にさらし、ジャンヌ達の命を奪ってしまった。

    『はっはっは やっぱり女だねえ
    センチメンタルに なんぞ なってるから
    ドジをふむのさ!』

    きりっとオスカルは顔を上げる。

    もう二度とあんなことになってはいけない。

    自分は、近衛連隊長として 多くの隊士の命を預かる立場だ。
    そして、いずれは、ジャルジェ家と領地の者達に責任を負う人間となるのだから。

    だけれど…

    胸の痛みは治まらない。

    ただ ただ 心細くて 不安で きりきり 胸が痛む。

    湧き上がる思いに また囚われてしまう。

    このままでは いつかわたしも 愛の狂気に囚われてしまうのだろうか?
    その時、わたしは取り返しのつかない失態を犯してしまいはしないだろうか?

    ケリをつけなければ。

    この思いに。

    そうしなければ、不安に足がすくんで前には進めない。

    いつかは 自然と忘れられる日がくるのかもしれないが
    それを 待っていられる立場ではない。
    今は諦められずとも、心の中の決着はつけなければいけない。

    この想いをいつか諦められる時が来るまで深く 深く、心の奥底に沈めなければ。

    そうすれば、自分の中の女性的感傷も思い出の中に沈めてしまえるだろう。

    そのために、せめて一度だけ たった一度だけでいい。 

    自分の本当の姿を取り戻したい。

    本来あるべき姿を。

    素直な素の自分を。

    そうすることで、きっと決着がつけられる。

    オスカルは涙を振り切るように馬を走らせる。

    無意識に自分がどこへ 何を求めて走っているのか オスカルはまだ気づいていない。

    いや…

    気づいてしまうと 

    それこそ 本当に 大切な者を失うことになるとのだ

    心の奥底で わかっているのだ。

    (つづく)

    華やかな葬式6

    「ロザリーが!?いいや わたしのところへはきていない」
    フェルゼンは驚きと心配の入り混じった声を上げた。

    窓から外をみれば 雪は庭に積もり始めている。

    この雪の中をロザリーはまだ彷徨っているのだろか?
    それとも彼女が目指すべき場所にもう辿りつけたのであろうか?

    「オスカル……」
    背後から掛けられた言葉と肩に触れられた手に 
    自分でも驚くほどビクついてしまった。
    「遠いサベルヌからよく無事で帰って来てくれた」
    フェルゼンの声音はあくまで友人のものだ。

    そう、自分はフェルゼンの中で 友人でしかない。

    そして

    「わたしは今、アントワネットさまのために表立った行動はとれない。
    だからおまえひとりを危険な目に遭わせてしまう……
    すまない オスカル」

    詫びる声は恋に苦悩する男のもの。

    「たのむ……わたしの分もアントワネットさまを守って差し上げてくれ!」

    願う声は愛する人への持ちきれず溢れ出してしまった愛情と苦しみに溢れている。

    握られた手から感じられるのは

    真の

    自分ではない女性に向けられた

    真の愛情

    そうだ。この手が この声が わたしに向けられることは永遠にあるまい。

    オスカルは目を伏せるしかない。

    そんなオスカルの気持ちはタイミングよく現れたソフィア嬢によって悟られることはなかった。

    美しい令嬢を目の前にして オスカルは自分のあるべき姿を思い出す。
    頬を染めてムッシュウと呼びかける彼女の手にくちづけをおとす、完璧な貴公子。

    ソフィア嬢に向けるオスカルの顔は"いつものオスカル・フランソワ"であった。

    自分をドギマギしながら見つめるソフィア嬢の姿に
    オスカルはかねてからの計画を実行の移す決意を固めた。

    それでも

    もし フェルゼンの答えが 否であったなら 

    また 決心が揺らいだかもしれないのだが。

    彼の答えは
    「ああ 出ようと思っている。
    ソフィアにベルサイユの舞踏会を見せてやりたいし」

    ついでのように何気なさを装いながら その実オスカルはこの時、
    自分の人生を決める質問を彼に投げかけたのだった。

    ……うん!

    スッキリと心を決められた気がした。

    だが、オスカルはこの時、気づいていなかった。

    自分でしっかり考えているようであっても
    まだ、誰かに大切な選択をゆだねてしまっている自分自身に。

    (つづく)

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    青林

    Author:青林
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    ただいま、コメントへのお返事は基本的にはしておりませんが、頂いたコメントは大切に読ませていただいています。ありがとうございます。

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