白ばらとアブラムシとテントウムシ-6-

    屋敷に戻ると ヴィクトールは庭に出て バラを愛でた。ここ数日はいつもこうである。

    「また、その白ばらですか・・・」
    少し呆れた顔して ロミが声をかけた。
    「庭には他にも綺麗な花も緑もありますよ」
    「いいんだ。わたしはこの花が気にいっている。」
    ヴィクトールはその花を手折ることなく 愛おしそうに指をふんわり曲げて花を包み顔をよせた。

    甘くそれでいて少しすっとする匂い。花びらが外側に反り返り先が尖った形になっている。
    いわゆる剣弁の花弁だ。色はあくまで白い。
    そしてその中心には暖か味のある黄色い花芯が隠されている。

    "まるで あの方のようだ・・・"

    ヴィクトールはうっとりしながら白ばらにくちづけた。

    「あっ!!!」

    突然、ロミが叫んだ。
    「なんだ?!」
    ヴィクトールは一気に現実に引き戻された気がして驚いてロミを見た。
    「すみません。ヴィクトールさま。アブラムシを見つけたものですから」
    申し訳なさそうにしているロミが答えた。
    彼の手にしているばらの蕾には びっしり黄緑色の小さな虫が付いている。
    「なんだ 虫くらい。しかもそんな小さくて可愛い虫で。」
    夢心地だったのが照れ臭いやらはずかしいやらで 複雑な苛立ちを憶え、
    ヴィクトールは少々 ぶっきらぼうに言った。
    そんなヴィクトールの様子にお構いなしで ロミは蕾を手に取り調べている。
    「可愛いだなんて とんでもない!
    こいつらはあっという間に増えて 蕾やら新芽やらをダメにしてしまうんです。」
    「繁殖力が強いんだな。」

    "わたしの大事な オスカルさまが・・・"

    とは口には出せなかったが ヴィクトールはちょっとブルーになった。

    「でもご安心ください。」
    ロミはフフンと胸を張って 辺りを探した。
    「いた いた」
    嬉しそうになにやら捕まえて 手の中に大事に抱えてきた。

    「この間 酒場で知り合った人に もらったんです。」
    そう言うと手を開いた。中には赤い背中に黒い丸い模様のついた 
    これまた小さくて可愛い虫がいた。
    「テントウムシか」
    「ええ こいつがアブラムシを食べてくれるんです。」
    そう言うとアブラムシの傍に放した。するとむしゃむしゃ食べ始めた。

    「おお これは凄いな。」
    「でしょ。」
    ロミは嬉しそうだ。
    「なるべく おれは農薬は使いたくないんです。これをくれた人のご主人さまは
    ばらを食べる人なんだそうで やはり薬を使わずばらを育てているんだとか。
    ばらはお茶やジャムにもできますからね。なんでもプロヴァンスの出身だそうです。」
    「ふーん。」
    まだ ヴィクトールはアブラムシとテントウムシを見ていた。
    テントウムシはアブラムシをしっかとくわえ せわしなく口を動かしている。
    時々前足でアブラムシの体を抑えたりもするが 
    意外なほどアブラムシはテントウムシに大人しく食われてしまった。

    "可愛いがまだ弱い新芽や蕾に 大勢でかかるとは何てやつらだ。アブラムシめ。
    そのくせよわっちく抵抗もできず 仲間が食べられても 知らんぷりか。
    その点テントウムシはいいな。白ばらを害虫から守る強い騎士だな。"

    そう思ってみると 何やらテントウムシの背中の甲羅が甲冑のようにも感じられ頼もしい。
    その姿は自分に重ねられ アブラムシはあのいやらしい従僕に思えてきた。

    "そうだ あいつ。可愛くて無害で大人しそうな顔をして 実はとんでもない害虫だ。"

    いつか わたしが白ばらについた害虫を退治してやろう。そう思った。
    「ヴィクトールさま。テントウムシは幼虫でもアブラムシを食べてくれるんですよ。」
    ロミがまた 手をまあるく合わせてやってきた。
    「どれ。」
    テントウムシの子供ならさぞ 愛らしかろう。

    「こいつです。」
    「うっ・・・」
    それは親とは似ても似つかぬ長い体で 全体的に黒く脇に入った赤いラインが毒々しい。
    自分をテントウムシに例えたことをヴィクトールは少し後悔した。

    「そうだ。ヴィクトールさま。今度ベルサイユ宮殿の植物園に連れて行ってくださいよ。
    珍しい植物があるんでしょう。でっかい温室も」
    「そうなのか」
    「テントウムシをくれた人が言ってました。」
    「まだ わたしも宮殿には慣れてないんだ。そのうち連れて行ってやるよ。」
    「楽しみにしています。」
    ロミはアブラムシを潰しながら言った。

    「そう言えば ロミ いつの間に酒場になんか行ったんだ。」
    「本館の使用人の方達に誘ってもらったんです。おかげで仲良くなれました。」
    「そうか。良かったな」
    言葉とは裏腹にちょっと面白くないヴィクトールだった。
    ロミはそんな様子の気付かず せっせとアブラムシを潰していた。

    さて 近衛のアブラムシ君だが いろいろ分かってきた。
    オスカルさまとは幼友達のように育ったこと 長じてそのまま従者になったこと。
    ジャルジェ将軍の計らいでオスカルさまと一緒に剣の稽古を 
    近衛の隊士につけてもらっていたことなど。

    そして何故か 王太子殿下と仲が良い事。

    「ジェローデル少尉。王太子殿下を探してきてくれ。
    もうすぐお茶会の時間なのにいらっしゃらない。」
    隊長に言われジェローデルは駆けだした。
    お付きの者を遠ざけて 王太子殿下が一人で散歩なさるのは珍しいことではない。
    大抵は律儀に時間には戻られるので 皆はあまり心配もしていない。
    それにいくらおひとりとはいえ 宮殿内はあちらこちらに衛兵がおり 
    主だった扉には扉番が付いている。
    そこかしこに従僕も立っている。なにかあっても誰かがすぐに駆けつけてくるはずだ。
    そんな中で近習が行先をつかめないとすると・・・
    「今日は天気もいいし あそこだな。」
    ジェローデルは宮殿の屋上を目指した。

    広々とした屋上に出るとはたして 王太子の丸い背中が見えた。
    そして隣に黒い髪のアブラムシがちょこんと座っていた。
    ヴィクトールは少々イライラした気分だったが 押さえて
    「殿下。お茶のお時間にございます。お戻りください。」
    そう声をかけた。
    「おお もうそんな時間か。こんな所まで呼びに来てもらってすまなかったね。ジェローデル。」
    「とんでもございません。殿下」
    にこやかに王太子に応え 後ろから付いてくる アブラムシに小声で
    「君がちゃんと時間を見てなきゃだめじゃないか」
    と睨みつけた。彼は肩を少しすぼめただけだった。
    王太子が時間を忘れる時 アンドレが一緒の事が多い。

    隊に戻ると隊長に
    「よく 見つけたな。助かるよ。年が近いせいかな。」
    そう言われた。いつのまにかヴィクトールは"王太子殿下捜索係"みたく思われているらしい。

    "別に年のせいではない。考えて探しているだけだ。"

    そう言いたかったが黙って礼をして下がった。

    しかし あのアブラムシ。何だってあんなに誰も彼もと 仲が良いんだ。
    近衛や王太子だけではない。
    あちこちで楽しそうにしゃべったり つるんだりしている。

    (つづく)
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    白ばらとアブラムシとテントウムシ-5-

    オスカルに出会ってからヴィクトールの生活は一変した。
    気の進まなかったベルサイユでの暮らしが生き生きし始めた。
    近衛に出仕するのが楽しくて仕方なかった。

    もちろん 近衛の重鎮ジャルジェ家の跡取りオスカルは
    自分とひとつしか年が違わないとはいえ 連隊長付きの大尉。 
    新兵で海軍派のジェローデル家のヴィクトールとは接点はあまりなかった。
    それでも時折 垣間見る純白の軍服を着たオスカルは 
    さながら天使のようでヴィクトールを幸せにした。

    一つ見方が変われば他も良く見えるもの。
    ヴィクトールにとってオスカル以外にも楽しみが見つかった。
    剣の稽古である。今までは田舎で 剣は教師と二人きりで学んでいた。
    ここでは実に沢山の相手がいる。しかも強い。さらに実際戦場で戦った者もかなりいた。
    彼らから実践的な剣術を学ぶのも 戦場の武勇伝を聴くのも楽しかった。

    銃にしても最新式の物を存分に試すことが出来た。
    知識を得ることも田舎ではお目にかかれないような 最新の書物を簡単に手に入れる事が可能だ。

    ただ それでも 嫌というより煩わしいことはあった。
    ベルサイユの臭気には慣れたが ベルサイユの習慣には馴染め無いものもあった。

    遠くからねっとりした 視線を感じる。

    "ああ またか・・・"

    ヴィクトールは肩でため息をついた。一人前に鬘を被った可愛らしい子供の小姓が 
    薔薇の花を一輪携えて近づいてくる。
    「ムッシュ 主人がこれをお渡しするようにと」
    「ありがとう」
    ヴィクトールは柔らかく優雅に微笑んだ。

    薔薇にはメッセージが付いている。一瞥して彼は薔薇の花びらを一枚そっと抜き取り 
    形を確かめると少しだけ切れ目を入れた。それを小姓に渡して小声で何やら囁いた。
    もちろん小姓のお仕着せのポケットに コインを入れるのを忘れたりはしない。
    小姓はその感触に嬉しそうな顔をした。
    「わかりました。ムッシュ主人に伝えます。」

    小姓は自分の主人である伯爵夫人にこう伝えた。
    「奥様。ムッシュはこうお伝えするようにと。
    "今宵 わたくしの現身は王に仕えなければなりませんが 
    心はこの花びらのように傷つきながら ひらひらとあなたを想って漂うでしょう。"」
    小姓から渡されたハートの形の花びらを伯爵夫人は眺め 
    その目線を意味あり気にヴィクトールの方に向けた。

    ヴィクトールは一瞬ゾゾッと鳥肌が立ったが 耐えて優雅に真紅の薔薇の花の香を嗅ぐ振りをし 
    切なげで泣きそうな顔をした。何度も鏡の前で練習をした顔だ。
    それを見ると 伯爵夫人は満足気に立ち去ってくれた。

    ヴィクトールはやれやれと歩き出し 角を曲がると花を放り捨てた。

    "まったく もって ばかばかしい"

    これほど恵まれた環境でありながら ここの連中の頭の中は下品な欲望でいっぱいなのか。
    どこもかしこも そんなやつらばかりだ。
    始めはよく分からず 馬鹿正直に丁寧な断りを述べてしまった。
    それで兄に迷惑をかけたこともあった。

    "オスカルさまは 違う。"

    彼女だけは 穢れなく輝いている。純白の近衛服に輝くブロンドの髪。神話そのものの世界。
    そこに存在するだけでいい。それだけでいい。

    誰も穢してはならない。

    彼女にはいつも 真っ白でいてほしい。

    気高くあってほしい。

    手に入れようなんて思ってもいけない。

    ただ ただ 

    透き通ったその双の瞳に
    わたくしを映して下さったら

    その美しい声で
    わたくしを呼んでくださったら

    それだけで いいのに!!

    だから あの従僕が許せない。あんな汚らわしい目をして 彼女の傍にいるのが

    許せない!!!

    (つづく)

    白ばらとアブラムシとテントウムシ-4-

    近衛の閲兵が終わると従僕達がそれぞれの主人のもとに付き従った。
    今日の軍務はこれが最後だった。
    あの従僕も連隊長のもとにいた。そのそばにはオスカルもいる。
    ヴィクトールは気が気ではない。何か楽しそうに談笑しているのを見ぬふりして見ていた。
    やがてオスカルが一礼をして連隊長のもとを辞した。

    なっ?

    こともあろうにあの黒髪の従僕は連隊長ではなく オスカルに付いて行くではないか?!

    「どういうことだ・・・」
    思わず口に出してしまった。それを横にいた同僚に聞かれた。
    「何かあったか?」
    「いや・・・別にただ あの従者が・・・」
    動揺して言わなくていい事を言ってしまった。同僚は ははんと笑った。
    「あの男 確かにいい男だが 手は出さないほうがいいぜ。
    ジャルジェ将軍が娘の護衛につけているんだ。それで近衛のお偉いさんとも仲がいい。
    最近は王太子殿下にも気にいられているらしい。」

    "ジャルジェ将軍の娘。やはり女性なのか。
    それにしても護衛だって!あいつが一番危険なんじゃないのか!
    さっきのあいつの目は明らかに 女を見る男の目 だった。"

    同僚の言う言葉の意味に気づかず ヴィクトールは夢中でオスカルを見ていた。
    その熱い視線が見つめる先がオスカルではなく 
    黒髪の従者の方だと同僚が勘違いしているとも知らずに。

    「なんだ おまえ知らなかったのか。」
    夕食替わりの鳥手羽を暖炉の前で ワイン片手に頬張りながら 
    一番上の兄アルベールが教えてくれた。
    「ジャルジェ将軍には 男の子が産まれなかったんだよ。それで 末娘が生まれた時 
    ジャルジェ夫人のお産が重くて もう子供は望めないと言われて 
    その娘を男にしちゃったって話さ。」
    「そんな・・・」
    「可笑しいだろ。何もそんなことしなくても いくらでも養子のきてはあるだろうし 
    どうしても自分の血を引いた子がいいなら 適当にどこかで産ませて養子にすりゃいいのさ。
    女を男にするなんて 教会に睨まれるだけだ。」
    兄がそう言って笑うのが ヴィクトールは何かもやもや嫌だった。
    嫌だが確かに間違ってはいない気がする。
    手にした焼き鳥に わざと乱暴にヴィクトールは齧りついて喰いちぎった。
    そんな様子の彼を兄は意外そうに眺め 目を細めた。

    「ヴィクトール。しかし よくオスカルが女だと分かったな。」
    「分かります。分からない方がどうかしている。あんな綺麗な男がいますか」
    ヴィクトールは手の甲で口に付いた肉汁を拭いた。
    兄は嬉しそうにヴィクトールの口や手をハンカチで拭いてやった。
    「いるさ。いくらでも綺麗な男なんて。」
    「でも 分かったんだ!わたしには!」
    ムキになって自分を拭く兄の手を払った。 あはは・・兄は笑って手を引いた。
    「わかった わかった 確かに彼女は美人だ。」
    そう素直に出られると今度はムキになった自分が恥ずかしくなって 
    また乱暴に肉を歯で引きちぎった。

    「さて そろそろ わたしは行くよ。愛しの伯爵夫人が待っているからね。」
    立ち上がった兄はもう一度腰をかがめて 弟の頬を包むように撫ぜた。
    「そんな風に気持ちを出してくれて嬉しいよ。わたしはいつでもおまえを歓迎している。」
    「何です?気持ち悪い」
    言いながらも本当はさほどいやではなかった。

    男として育てられている?

    それを彼女自身はどう感じているのだろう?

    今日見る限り 嫌々やっている感じには見えなかった。

    誇らしげにさえ 見えた。

    ならば 彼女はそれを受け入れている?

    分からない。分からない。

    分かっているのは オスカルが美しいということ。

    分かっているのは もっと知りたいということ。

    兄のいなくなった暖炉の前で 残りの肉を平らげて 
    兄がくれたハンカチで口の周りを拭いてワインを流し込んだ。

    じいやがやって来て暖炉の日をかき混ぜた。
    「いかがでしたか?ヴィクトールさま。お兄様とは楽しく過ごされましたか?」
    「別に それよりじい。もしジャルジェ家のオスカルについて 何か知っていたら教えてよ。」
    じいやは意外と物知りだった。
    いや オスカルはベルサイユでは有名人だったということかもしれない。
    まだ この地に住み始めて日の浅い彼でも色々知りうるぐらいに。

    (つづく)

    白ばらとアブラムシとテントウムシ-3-

    その日は近衛連隊長の閲兵がある日だった。緊張の面持ちで新兵達は整列していた。
    ヴィクトールは連隊長に会ったことがあるので 
    他の隊士ほどは緊張していないし 興味もなかった。
    あれから特に連隊長にはお会いしていない。
    自分のことなど気にはされていないのだとほっとしていた。

    だからこの日もいつもの訓練と変わらない気持ちで退屈していた。
    彼にとって王の傍近く仕える精鋭近衛といえど 
    所詮 つまらぬ貴族の子弟の集まりでしかなかった。

    だが 連隊長に付き従い馬を進める 一人の隊士を見た瞬間 全ては変わった

    それは 全く穢れなく 純粋で 強い光のようだった。

    輝くその人は 軍服を着ていても紛れもなく 女神だった。

    黄金の髪。サファイヤの瞳。淡い薔薇色の唇からは凛として澄んだ声が放たれ 
    まだあどけなさを残しながらも すっと背を伸ばして馬上にある姿は周りを圧倒した。

    しばらくヴィクトールは呼吸すら忘れそうだった。

    「おい 動くぞ」
    小声で隣に言われて慌てて行進を始めた。けれどその後もつい彼女の姿を目で追ってしまった。

    「きゃー! オスカルさまぁ」

    突然、黄色い声援が響き渡る。

    "なんだ?"

    見れば 沢山のご婦人や令嬢がまるで南国の花か鳥のように連なっている。
    そしてピーチク甲高い声でさえずり始めた。
    「ねぇご存じ オスカルさまはショコラがお好きなんですって」
    「まぁ ぜひともご一緒に飲みたいわ。」
    「でも いくらお誘いしても はぐらかされてしまうのよね。」
    「ああそれでは せめてショコラに合う お菓子でもお届けしようかしら」
    「あら 抜け駆けはよくなくてよ。」
    「ちょっと ちょっと 行進がこちらに来るわよ。」
    「きゃー!オスカルさま!」
    皆 一斉に手を振り始める。

    "やれやれ 騒々しい。軍務のじゃまだ。"

    ヴィクトールはイライラ思った。しかし・・・

    "オスカルさま?男の名前だよな。でも女性に見えるんだけどな。"

    ふと ヴィクトールは遠くの木陰に見たことのある顔を見つけた。
    以前ミントのブーケをくれたあの従僕だ。
    彼とはあの数日後、近衛の兵舎の入口で偶然 再会した。
    鞍を付けた馬を2頭連れて 誰かを待っているようだった。
    ヴィクトールはすぐに気づいて 先日の礼を言おうと近づいた。
    けれど彼は端に寄って道を譲ろうとする。

    "わたしの事。気づいていないのかな。"

    「やあ 君。この間はありがとう。助かったよ。」
    声をかけると彼は驚いた顔をしたが すぐに微笑み
    「さようでございますか。お役に立てたのなら よろしゅうございました。」
    そう言ってお辞儀をした。
    「あれから あれと同じハーブを庭に植えたんだ。」
    彼はニコニコしながら聞いている。

    「誰かを待っているのかい?」
    「はい 主人を」
    「では じゃましてはいけないね。」
    ヴィクトールは片手を上げて挨拶をした。彼は胸に片手を当てて腰をかがめ礼をした。

    "男色 連隊長がくるのか。こりゃ 退散だ"

    急ぎ足でその場を離れた。

    その彼が今 恋人であるはずの連隊長ではなく。オスカルを見つめている。
    木陰に身を潜め 控えめな様子で立ってはいるが その目は間違いなくオスカルの姿を追っている。
    時に目を細め 口角をわずかに上げてクスッと微笑んだりさえした。
    それが何故か ヴィクトールの感に触った。

    "いやらしい奴だ。男色だけでなく両刀なのか。"

    それは嫌悪すべき種類の視線に感じられた。控えめに影に潜んでいても 
    ヴィクトールの目には下劣な彼の視線がはっきり解った。

    (つづく)

    マーガレットボーイ カレシにしたいのは誰? 途中経過

    マーガレット展東京会場 終わってしまいましたね。皆さんは行かれましたか?
    公式サイトでは今後 地方での開催も考えていると書かれてました。
    わたしの住んでいる地域は この手のイベントが来ないことも多いので
    あまり期待しないで 今後の発表を待つことにします。

    マーガレット展とauのコラボ企画カレシにしたいのは誰?のランキング
     https://qrank.jp/r/LNcOsVao?utm_source=kddi&utm_medium=web&utm_campaign=20140912_margaret
    途中ではありますが 東京会場でのマーガレット展が終了したので 
    一度区切りとして10月24日12時35分の順位をお知らせします。

    第4位 アンドレ 36pt
       
    左上はジェロさまです。パタリロではありません(汗)



    第11位 オスカル 13pt

    複雑な乙女心



    第15位 フェルゼン 8pt

    頑張れ!フェルゼン


    ちなみに 1位は73ptで「アオハライド」の馬渕 洸でした。
    それにしても凄いですねアンドレ まさか 4位になるとは! 一時は3位にもなっていました。
    やはり ベルサイユのばらは時代を超えた名作 なのですね。

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    10月23日にBon anniversaire! ルイ・ジョゼフ殿下の記事に
    非公開拍手コメントをくださった方へのお返事です。
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    白ばらとアブラムシとテントウムシ-2-

    屋敷に戻るとすぐ庭師を呼んで ミントのブーケを渡し
    「これと同じものを 植えられるか」
    そう訊いた。
    「ええ どれも一般的な種類のものですから大丈夫です。すでに庭にあるのも入っていますね。」
    「このリンゴの香りのするのは?」
    「アップルミントです。これは無いので取り寄せます。」
    「そうしてくれ。」

    庭師が下がるとヴィクトールはため息をついた。

    "あんな汚い所で 男色の隊長のもとで 働くのか。"

    気が重い。今まで三男坊の彼は忘れ去られていたかのように田舎に置かれた。
    厳格な修道士を家庭教師につけられラテン語や 歴史など一通りの教養を身につけた。
    いずれ軍人になるので 剣と乗馬 銃なども別の家庭教師がついて学んだ。
    その生活に不満はなかった。
    生活の面倒をみてくれていたじいやは優しくて たまに来る家族よりずっと好きだった。

    空気が綺麗で穏やかな村には 裸足で駆けまわる子供達がいっぱいいた。
    ヴィクトールは彼らと 自分も裸足になって遊んだ。
    御領主さまのご子息とはいえ 三男坊の彼はさほど 
    村人に気にされる事無く 可愛がってもらえた。
    それでも一緒に遊んでいた子供達が だんだん大人の仕事に付き始めると 
    将来に不安を感じ始めた。
    父の「そろそろベルサイユに戻って軍人に」という言葉に素直に従ったのはそのせいかもしれない。

    田舎からはじいやとロミが付いてきた。ロミは村の子供で 一緒に遊んだ幼馴染だ。
    大きくなったとき丁度 田舎の屋敷の人手が足りなかったので下働きに雇った。
    ベルサイユに行く事になった時 思いつきで誘ってみたら 目を輝かせて付いてきた。

    「ヴィクトールさま。おれ 都会で珍しい植物が見たいんです。出来れば育ててみたいです。」
    聞けば屋敷の庭師と仲良くなって 色々教えてもらううちに興味が出てきたそうだ。
    ベルサイユではジェローデル家の本宅ではなく 別館に住むつもりだったので
    別館周りの手入れを手伝わせることにした。正直嬉しかった。ロミが付いて来てくれたのは。

    バルコニーに出るとそのロミがしゃがみ込んで草むしりをしていた。
    「お~い。ロミ」
    「あれ ヴィクトールさま。お戻りでしたか。」
    彼が眩しそうに 手で日差しを避けながら ヴィクトールを見上げた。
    「今から そっちに行く。」
    そう言うやいなや ヴィクトールはひらりとバルコニーから飛び降りた。
    「相変わらず 無茶しますね。足でも挫かれたらどうなさいます。」
    言いながらもロミは笑っていた。
    フフンとヴィクトールは鼻で笑って ロミが摘んでいた雑草を 籠からつまんで指で擦った。
    白い指に濃い緑色が付いた。嗅いでみると子供の頃転げまわった草原が思い出された。

    「今日 宮殿に行った。つまらん所な上に 臭くて汚かった。」
    「ええ?王様の住んでいる所なんでしょ。」
    「おまけに 上司が男色だ。」
    「そりゃ大変だ」
    「おまえ ひとごとだと思ってるだろう。」
    「ひとごとですから」
    「こいつ」
    ヴィクトールがロミの首に腕を回して締め上げても ロミは笑っている。
    その笑い声がヴィクトールには 何より嬉しい。

    (つづく)

    Bon anniversaire! ルイ・ジョゼフ殿下

    今日はルイ・ジョゼフ殿下のお誕生日です。


    あまりにも短い人生でした。

    美しく 聡明な本物の王子様 ルイ・ジョゼフ殿下
    わずか 7歳で亡くなられてしまいました。

    この王子様脊椎カリエスという病気で亡くなりました。
    どんな病気か ネットで調べていて 気になることがありました。

    脊椎カリエスとは結核菌が脊髄へ感染した病気

    あれ?結核菌といえば・・・

    そう結核の原因になる菌です。

    結核といえば咳して血を吐く病気です。

    アニメでは オスカルさま はっきり結核って言われていました・・・。

    感染の仕方はと見ると空気感染つまり発病した人の咳やくしゃみで
    結核菌が飛び散り 空気中を漂い感染します。

    オスカルさま ジョゼフさまとずいぶん近くにいらっしゃいましたね。
    おまけにキスまでされてました。

    結核菌が体内に入ると 結核に対する免疫ができます。
    これで結核菌は抑え込まれ たいていの人は発病しません。

    けれど 結核菌は死んだわけではなく冬眠状態になっているだけなのです。
    そして 人体が弱るすきを窺っています。

    人の免疫力が下がったり 年をとったり 疲労で体力が落ちたりなどすると 
    目を覚まし暴れ始めます。しぶといことに何十年たってからでも発病することがあります。

    オスカルさまは 軍人として体を鍛えていたし 貴族ですから栄養も取れてました。
    ですから 移ったとしても発病には至らない可能性が高かったと思います。
    けれど 迫りくる革命のさなか 強い酒をあおり 激務をこなした結果 
    体が弱り 発病したのではないでしょうか。

    もちろんネットで調べた程度の知識を基にした仮定に過ぎません。
    架空の人物の話である以上確かめることもできません。

    けれど仮にそうだとしたら オスカルさまやジョゼフ殿下は 
    大切な人に移してしまうとは思わなかったのでしょうか。
    オスカルさまは 血を吐いてすぐアンドレとキスしています。

    わたしは移るとは思っていなかったと思います。

    何故なら結核菌が発見されたのは1882年 93年後のことだからです。

    18世紀フランスでどこまで この病気のことが解っていたのかは分かりませんが
    当時はキスして移るなんて考えもしなかったのではないでしょうか。
    なにせ感染してもたいていの人は発病しないし 
    しても感染したのは何十年も前の事もあるのですから。

    苦しい病気で 若くして亡くなってしまった王子様ですが 
    はたして姉君や弟君に比べると どちらが可哀想なのか分かりません。

    今は生まれ変わられて新しい誕生日を 幸せに家族で祝っておられると良いですね。

    白ばらとアブラムシとテントウムシ-1-

    ”白ばらとアブラムシとテントウムシ”連載スタートです。

    奴に初めて会ったのは ベルサイユに来て間も無い頃だった。
    近衛の入隊の挨拶に近衛連隊長を訪ねた時だ。
    普通なら自分ごとき新兵が訪ねる必要はないのだが
    ヴィクトールの父と懇意にしていたので  是非ということだった。

    本来なら代々海軍の家柄のジェローデル家の出の彼は 海軍に行くのが自然なことなのだが
    彼は近衛を希望した。いや妥協したのだ。本当は陸軍に入って地方に行きたかったのだが
    父や兄達の猛反対にあった。何が何でも海軍に入れたがったが 頑として聞かない三男坊に折れて 
    王の傍近く仕える近衛ならと しぶしぶ承知したのだ。

    しかしヴィクトールは早くも 近衛になったことを後悔していた。
    初めて伺候したベルサイユ宮殿は とにかく不衛生で臭かった。
    耐えがたい臭気に顔がしかめそうになる。
    けれど ここで鼻をつまんで歩くのは彼の美学に反する。

    「失礼します。」 執務室の中から了解をえると ヴィクトールはそう返事をして中に入った。

    "うわっ 森の中にいるみたいだ。"

    室内は森林のような香りで満たされていて 思わず息を吸い込んだ。
    ずっと息を堪えていたので 顔の筋肉が一気に緩んでしまった。
    「ようこそ ヴィクトール君」
    言われてヴィクトールは慌てて差し出されて手を握った。
    「初めまして ヴィクトール・クレマン・ド・ジェローデルです。」

    勧められて椅子に座ると 黒髪の従僕が優雅な動作で紅茶を入れてくれた。
    その彼からはシトラスの香りがした。
    「頂きます」
    ヴィクトールは飲むふりをした。連隊長はヴィクトールを微笑んで見ていた。

    「なるほど 可愛い顔をしている。これはぜひ近衛に来てもらわないとな。」
    そう思わないかと 先ほどの従僕に話しかける。彼はヴィクトールを見て
    「はい。大変端整なお方だと思います。」
    そう答えた。

    "なんだ。彼も子供じゃないか。"

    さっきは背丈があるので大人かと思ったが 黒髪の従僕はよく見れば まだ少年の顔をしている。
    けれど整った顔立ちは今でも十分に魅力的で 成長のあかつきにはさぞかし人目を引くことだろうと
    まだ15歳のヴィクトールでも分かった。年は自分より少し上くらいだろうか。

    それにしても従僕の割に連隊長と親しげである。

    "まてよ。ここはベルサイユ。ひょっとして 彼は連隊長の夜のお相手か"

    全身が総毛立った。そう思うと 先ほどの連隊長の言葉も何やら意味あり気に感じられる。

    "冗談じゃない!自分にはそういう趣味はないと分かっていただかないと"

    その後、連隊長は旧友の息子である自分に 
    親しげに言葉を掛けて下さったがついつい構えてしまった。
    それを連隊長は緊張していると感じ彼を和ませようと ヴィクトールの家族の話などを始めた。
    お兄さん達は元気かね。君のお父上とわたしが君くらいの時には・・・

    長い昔話が終わり 熱かった紅茶が程よく醒めて飲み干す頃
    ようやくヴィクトールは解放され 席を立った。

    すると黒髪の従僕がすっと近づいて来て
    何種類かの葉を緑のリボンで束ねた 小さなブーケのような物をくれた。
    「ミントでございます。嗅いでみてください。」
    そう言って ニコッと笑った。鼻を近づけるとスーッと清涼感のある香りがする。
    その中に淡くリンゴの香りがした。

    「こうして 手で叩くと香りがより 強くなります。」
    パンッと彼が葉を挟んで叩くと ますますリンゴの香りが強くなった。
    "ねっ"とでもいうように 彼は首を少し傾けて笑った。
    あまりに屈託のない笑顔なので ヴィクトールは釣られてつい言ってしまった。
    「本当だ。いい香りだね。」
    しかも不覚にも 笑顔付きで。子供っぽい仕草をしてしまったのが少し恥ずかしくて
    ヴィクトールはごまかすように わざと澄まして訊いてみた。
    「先ほど 部屋に入った時 いい香りがしたのだが」
    「本日は 暖炉に香木を少し混ぜて 燃やしております。
    よろしければ少しお分けいたしましょう。」
    そう言って行きかける彼をヴィクトールは止めた。まさかそこまで図々しくはできない。

    もう一度 連隊長に作法通りのお辞儀をして 黒髪の彼の開けてくれたドアを出た。

    帰り道は彼のくれた"ミントのブーケ"がおおいに役に立った。
    どんな悪臭の中でも 片手で優雅にそれを嗅ぐと しかめっつらをしなくて済んだ。

    (つづく)

    マーガレット22号 エピソード5前編

    (続きを追加しました。)

    本日発売の マーガレット22号です。


    ベルサイユのばら エピソード5 ジェローデル編 前編 が掲載されています。

    ジェロさま編でもオスカルさまが表紙

    ウォォォォ・・・!!面白かった!
    これがわたしの読後感でした。

    エピソードシリーズは回を重ねる毎に良くなっていますが 今回は特に好きですね。
    お顔が時々崩壊しようが 絵が当時と違おうがそんな細かいことはこの際気にしません!
    むしろ 先生のお年でこれだけの萌えを頂けるなんて生きてて良かった!

    先生どんどん感が戻っていらっしゃるんですね。話の内容も展開も登場人物もよかったです。
    画面的にも コマ割りが凄く良くなってきている気がします。
    先生の作品はコマ枠が単なる枠ではなく 画面の重要な一部分を担っているのがとても素晴らしくページ全体がひとつの絵画のように美しいと思っていましたが それが復活という感じですね。

    正直 エピソード1のアンドレ編では 非常に萎えてしまったのですが 
    エピソード5みたいなら これからもどんどん読みたいです。
    次号がまちきれません。

    途中フランス語(たぶん)が出てくるのですが 訳がありませんでしたので検索してみました。

    fable・・・・寓話(擬人化した動物などを主人公に、教訓や風刺を織りこんだ物語)
    faiblesee・・・・虚弱 弱み 弱点 非力など
    fantaisie・・・・空想 夢幻 ファンタジーなど
    fascinant・・・・艶やか 魅惑的など
    faeal・・・・(意味が見つけられませんでした。)

    フランス語のわからんおばはんには これが限界です。
    これが合っているのかどうかすら疑問です。(だから 信じちゃダメよ)

    それでも 無理やり意訳すると

    おとぎ話のように 
    はかなく
    幻想的で
    魅惑的な

    となるんでしょうか? 

    どうやら 青林のばかをさらしただけのようですね。

    マーガレット編集部さま どうか日本語訳をつけてください

    学校を卒業して何十年もたつおばはんの願いです。

    日本語訳を付けてしまうと 
    原語の持つ意味や味わいなどの ニュアンスが損なわれるとか 
    色々理由はあるのかもしれませんが。 

    簡単な英語ならいいのですが 
    検索しても なかなか分からないような難しい言葉には
    やはり訳をつけていただけると嬉しいです。

    この言葉の出てくるシーンは 通常 縦書きのふきだしのセリフが横書きになっていて 
    少女の溢れるようなジェロさまへの想いを 流れるように表わしていて
    とても美しいです。(ジェロ様のお顔にツッコミはなしよ。)

    それだけに 言葉の意味が解らないと なんとなく モヤモヤ します。

    くどいようですが コミックスになるときは ぜひ日本語訳をお願いします。


    さて 以下ネタバレになります。


    ジェロさまのお兄様が登場!そして若き日のジェロさま
    時は黒い騎士の暗躍時代にうつり
    あのオスカルさまたった一夜のドレス姿
    そして フェルゼンの美貌の妹ソフィアがからんできます。
    これだけでもワクワクしますね。
    他にも意味深なお嬢様やジェロさまの心理をうかがえるようなコマがあったりして
    池田理代子先生らしい 言葉だけで語らない作品になっています。

    さらに次号予告には
    フェルゼンを想うオスカルの真の気持ちを知ったジェローデルは・・・。とありました。
    う~ん どうなっちゃうのかな?ワクワク

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    ただいま、コメントへのお返事は基本的にはしておりませんが、頂いたコメントは大切に読ませていただいています。ありがとうございます。

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