金の糸 -7-

    「せっかくだから 色々試してみるか」
    「そうですわ。」
    ロザリーが歓喜の声を上げた。ばあやもあれこれ勧める。
    着せ替え人形のようにオスカルはつぎつぎドレスを試着した。

    アンドレは壁にもたれて 女達の様子を眺めていた。

    "こんな 可愛いオスカルを眺める日が来るなんてな"

    アンドレには退屈な時間ではあったが オスカルが幸せならと・・・

    ・・・?

    アンドレは幸せなはずのオスカルの顔が時々曇るのに気付いた。
    ドレス選びに夢中の女達は気がつかない。
    注意してみるとクルンと鏡の前で回った時にその顔をすることがある。
    さらに注意してみると それは肩が大きく開いた服の時が多い。
    やはり傷痕が気になるのだろう。
    けれどオスカルが本当に着たいのはそういうドレスなのだ。

    アンドレはオスカルがそうしたドレスを試着した時を見計らって 
    後ろからオスカルの肩を抱いた。
    「アンドレ?」
    今まで黙って見ていたアンドレが 急に自分を押さえたのでオスカルは驚いた。
    アンドレは微笑んでオスカルを鏡の方に向かせた。

    「素敵だ。こういうドレスも良く似合う。」
    「しかし これでは・・・」
    「鏡を見てごらん。傷なんか見えはしない。
    一枚こういうのを作って画家のアルマンに肖像画を描いてもらったら。」
    「結婚式とはまた別のドレスをつくるのか!?」
    「いいじゃないか。」
    アンドレは優しく耳元で囁いた。
    「美しい・・・」
    オスカルの顔にさっと赤みがさす。
    「本当に・・・アンドレ・・こんな可愛いドレス わたしには似合わないんじゃないのか?」
    アンドレにはもうオスカルの言葉の真意が分かっていた。
    「似合う。とても・・・」
    そして こっそり耳元でもう一度囁く。
    「美しいよ・・・オスカル!」
    その言葉に後押しされて オスカルはもう一枚ドレスを作ることにした。
    今度はしっかり肩が出ていて背中も大きく開いている。

    「ああ 今度のドレスはその青い生地がいいな。刺繍は・・・」
    頬を染めて恥ずかしそうにオスカルは自分の希望を伝えていく。
    それを聞きながら ベルタン嬢は式用のドレスも
    オスカルのより好みのものにデザインし直してくれた。
    結果としてオスカルは自分の本当に着たいドレスを2枚作ることが出来た。

    やれやれ そろそろ終わりかなとアンドレが思い始めた頃
    「・・・で新郎さまはどのような衣装をお召しに?」
    「え!?」
    「結婚式ですもの衣裳だってペアで コーディネートなさらなければ。」
    今度はアンドレが女達の着せ替え人形になる番だった。
    オスカルの衣裳作りにあれほど時間をかけたにも関わらず 
    女達は元気でアンドレの意見など聞きもせず 式用と肖像画用二枚の衣裳をオーダーした。
    「おれも2枚つくるのか・・・」
    「当たり前だ。肖像画は"夫婦"揃って描いてもらう。」
    にっこり笑うオスカルにアンドレが逆らえるはずもなかった。

    (つづく)
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     金の糸 -6-

    いつも後ろに靡かせていたブロンドは結い上げられ 
    代わりにふんわり透けるベールが広がっている。
    いつも隠されていた肩は美しい曲線を見せている。幅広の襟がその下にある傷痕をそっと隠す。
    おれは思わずその肩を抱いた。美しいデコルテの見える肩の出るドレスは
    いつも首元の詰まった軍服を着ていたオスカルにとって女らしさの象徴。
    けれどあの襲撃事件以来 肩の出るドレスは作れなくなっていた。

    「大丈夫ですよ オスカルさま。傷は肩のだいぶ下側ですし、
    傷痕も今は薄いピンクでございます。」
    デザイナーのベルタン嬢はドレスのオーダーに行った際 
    オスカルの気持ちをいち早く察してくれた。
    そして傷痕を隠しながらも 肩の出る美しいドレスをデザインしてくれた。
    まるでショールを羽織っているかのような幅広の襟は
    背中を大きく隠しながら 前は深く開いている。
    合わせ鏡で背中を本人に見せながら
    「ほら全然見えませんことよ。」
    にこやかに勧めた。確かに見えないがオスカルはまだ不安だった。
    「しかし ドレスがずれてしまわないか?」
    「まぁ なにをおっしゃいます?わたくしのドレスがずれるなど!」
    ベルタン嬢はわざと怒った風に言った。
    「あ・・すまない そんなつもりでは・・・」
    謝るオスカルにベルタン嬢は
    「大丈夫でございますよ。後ろはベールで隠れますし 
    ご心配なら皆の視線が下にずれるよう スカートの後ろがわにボリュームをもたせましょう」
    にっこり微笑んでそう提案してくれた。

    "さすがは ベルタン嬢"

    オスカルが何も言わずとも その女心を見抜いてしまうとは。
    「どうして わかったんです?」
    アンドレが尋ねると
    「それこそ わたくしの仕事ですもの といつもならお答えするのですが 
    あなたには特別に教えて差し上げますわ。でも秘密にしてくださいましね。」
    そして小声で教えてくれた。
    「オスカルさまが試着をご希望になるのは 首元の詰まった服ばかりですけど 
    目線は肩の出る胸元の開いたドレスにいっていましたわ。
    着替えを手伝う時傷に気づきましたから これを気になさって 
    本当にお召しになりたいドレスをお選びになれないのだと分かりましたの」

    結局 尻込みするオスカルを周りの女性陣が押し切る形で胸の開いたドレスに決まった。
    アンドレは"そんな 強引な"と思ったが よく見ればオスカルは頬を染めて嬉しそうだ。
    女性のこうした細やかな心理はやはり男の自分では分からない。
    思えばおれは何もかも分かってやっているつもりだったが 本当は違っていたのかもしれない。
    女性の言葉は言葉通りでないこともあるのだから。
    始めは興味なさげな風を装っていたオスカルだが しだいに心が解れてきた。

    (つづく)

    BSフジ『発掘!歴史に秘めた恋物語~李香蘭』

    『発掘!歴史に秘めた恋物語~李香蘭』に池田理代子先生がご出演されます。

    http://www.bsfuji.tv/top/pub/koimonogatari.html

    放送日時:【前編】2月 2日(月) 22:00~22:55
         【後編】2月 9日(月) 22:00~22:55  

    放送局 :BSフジ

    前編後編ともにご出演の予定です。

    えっ?!もしかしてオスカルさま?妖怪ウォッチ

    今、大人気の妖怪ウォッチのアニメが各局で放送中です。

    http://www.tv-tokyo.co.jp/anime/youkai-watch/onair/

    これの次回予告になんとオスカルさまっぽいコスのジバニャンが!

    http://www.tv-tokyo.co.jp/anime/youkai-watch/trailer/

    これはいったい・・・?

    オスカルコスの出る回は第54話【妖怪むかし話 ~かぐや姫~】
    【妖怪ガシャどくろ】【妖怪ふさふさん】です。

    わたしは実は妖怪ウォッチをよく知らないのですが 
    いい機会なので見てみようかなと思います。

     金の糸 -5-

    盛装をしたアンドレは一度深呼吸をして ジャルジェ家のエントランスのドアをたたいた。
    扉は開かれた。さあ、これからアンドレは自分の花嫁を探し出さなければいけない。

    "いったい どこに隠れているんだ?"

    通常 この"隠れた許嫁"の儀式の際には花嫁は穀物倉庫などに隠れて新郎を待つものだが 
    オスカルがそんなに素直なわけがない。きっと何か意味のある場所。二人にとって特別な。

    それはどこだろう。二人で遊んだ裏庭か、よく逃げ込んだレモンの小屋か、おれの部屋 
    いいや違うな。あいつはきっと・・・

    あれはおれがお屋敷に来て最初の冬だった。
    雪で閉ざされたおれ達は屋敷の中でかくれんぼをしていた。
    ところがいくら探してもオスカルは見つからない。もしかしたら屋敷の外にいるんじゃないか?
    そうだとしたらこんな長い時間、もし薄着で雪の中にいたら・・・
    そう考えたら 急に怖くなりおれは外に飛び出そうとした。

    「どこへ 行くの」
    ふいに誰かに腕を掴まれた。
    「放して ナタリー!オスカルが オスカルが・・・」
    おれは思わずワンワン泣き出してしまった。泣きじゃくるおれから何とか話を聞いたナタリーは
    「あのね オスカルさまのお部屋には衣裳をしまう小部屋があるんだけど 
    周りの壁と同じ模様のドアが付いていて 
    ちょっと見ただけでは部屋があるなんてわからないの。
    でもね よ~く見ると切れ目があるからきっとわかるわ」
    「ありがとう ナタリー 探してみる!」
    おれは一目散に駆けて行った。オスカルの部屋に入ると張り付くように壁を探った。

    そして 見つけた。綺麗な色とりどりのドレスに囲まれたオスカルを。

    「絶対 見つけてくれると信じていたよ。」
    サファイヤの瞳をきらきらさせて
    「アンドレなら ぼくがどこにいても 絶対見つけてくれると信じている!」
    そう言っておれに抱き付いてきた。
    「遅くなってごめんね。」
    ぎゅっとオスカルを抱きしめた。
    「でも おれは必ずオスカルを見つけるからね。」
    オスカルはおれの肩に乗せた頭を揺らして応えてくれた。
    もし オスカルが"どうしてここが分かった"と聞いてくれたら 
    おれは"ナタリーに聞いたんだ"とあっさり言えただろう。
    でもオスカルがあんまり嬉しそうだったので言えなくなってしまった。

    オスカルの部屋に続く階段を上る。大人になった今なら分かる。
    あそこは唯一オスカルが女であることを肯定してくれる場所だったんだ。
    おくさまとおばあちゃんはちゃんとオスカルに"逃げ道"を用意してくれていた。
    懲りもせずドレスを作り続けるのを 何を無駄なことをと思っていたが"無駄ではなかったのだ"

    あれは"いつでもあなたが女に戻りたかったら わたし達は応援しますよ"というメッセージ。
    時折きっとオスカルはあそこでしばし考えたに違いない。
    そしてその度、自問自答してまた歩き始めたのだ。

    "いつでも 女に還れる けれどわたしはやはり 今の生き方を選びたい!"

    オスカルはこの部屋のドレス達のおかげで追い詰められずにすんだのだろう。

    そして 一度だけ このドレスの力を借りて 女に戻った。

    そして 辛い初恋を乗り越えたのだ

    オスカルの部屋の扉を開けて 奥の寝室の壁の切れ目にそっと手をかける。

    「絶対 見つけてくれると信じていたよ。」
    サファイヤの瞳をきらきらさせて
    「おまえはいつもわたしを見つけてくれる。
    黒い騎士に捕まった時も アラン達に拉致された時も。」
    窓の無い小部屋の中でさえ オスカルは輝くように美しい。
    色とりどりのドレスに祝福されるように包まれて。

    「けれど もうわたしを見つけてくれなくていい」
    手を取り小部屋から導き出す。
    「もうおまえから 離れはしないから」
    そう言うとオスカルは朝日の中で微笑んだ。

    (つづく)

    非公開拍手コメントへのお返事です。

    1月21日に 「ベルサイユのばら 密着マスク」の記事に
    非公開拍手コメントを下さった方へのお返事です。続きからどうぞ
    (公開でくださった方には頂いたコメントのところにお返事させて頂きました。)

    続きを読む

    ベルばら パロ とっとこハム太郎

    ディズニー・チャンネルで 放送中のとっとこハム太郎ですが
    1月30日(金)AM6:00 放送の71話 『とっとこはじめて!動物病院 』は
    ベルサイユのばらとコラボ回となっています。

    http://www.disney.co.jp/tv/dc/program/anime/hamut.html

    オスカルさまとおリボンアンドレが登場します。
    なにげに 動物病院の看板なんかも面白くて楽しいアニメになっています。

    パロディに抵抗のない方はぜひどうぞ

     金の糸 -4-

    「なんだって ル・ルーがまだ来てない?」
    アンドレは渋い顔をした。実はル・ルーは今日の結婚式には出席できないことになっていた。
    オスカルの姉のオルタンスさまが革命の心労から倒れてしまわれたからだ。
    夫であるローランシー殿も傍を離れることができない。
    また、革命は解決したとはいえ 各地にはまだまだ不穏な動きがある。
    ローランシーも例外ではない。
    そんな中、いかにル・ルーといえど 一人でベルサイユまで旅をさせるわけにはいかない。

    けれど ル・ルー本人はどうしても出席したいらしく アンドレに密かに手紙をよこした。
    オスカルに知れれば必ず止められたうえに 見張りを立てられかねないからだ。

    "もし、行けないなら 自分で行くわ"

    この手紙の文言がただの脅しでないことを アンドレはよくよ~く知っている。
    すぐに向かえを出すと手紙に書き、元フランス衛兵隊で
    今は国民衛兵隊のフランソワとジャンが休暇を返上してローランシーに向かった。
    予定では2日前にはベルサイユに到着しているはずであった。

    「大丈夫だろうか・・・」
    アンドレは心配ではあったが 今は仲間を信じるしかない。当面の問題は式の進行の変更だ。
    「モーリス 実はル・ルーがまだきていないんだ。」
    アンドレはれいのリングベアラーをモーリスに フラワーガールをル・ルーに頼んでいた。
    モーリスは以前ジャルジェ将軍を父親と間違えて訪ねてきて 
    しばらくジャルジェ家で暮らしたことがある。
    ル・ルーとも仲良く アンドレのことも慕ってくれた。
    実の父親に引き取られてからも 時々遊びに来ていた。

    「モーリス ル・ルーがいないけど一人でできるかい?」
    アンドレはモーリスの前にしゃがんできいた。
    始めの予定ではル・ルーと二人で並んで歩くはずだった。
    「大丈夫だよ。ぼくできる!それよりル・ルーは大丈夫なの?」
    「心配いらないよ。おれの友達の軍人が護衛についてるから。」
    「そうか アンドレの友達なら きっと強いんだよね。」
    モーリスは安心して笑った。
    「ああ 強いとも。」
    返事をしながら 本当はちょっと人選をあやまったかと不安なアンドレであった。

    "しかし せっかくのサプライズが ダメになってしまったな"

    自分達と同じ衣裳を着た二人を見せて オスカルをびっくりさせてやろうと思っていたのに。
    危険だからダメだと言ってはいたが オスカルは凄くル・ルーに会いたがっていたのだ。

    "まっ あいつらも革命を生き抜いた軍人だし 
    ル・ルーはその辺の大人より機転がきくから大丈夫だろう"

    もう式が始まるのだ。自分が落ち着いていなければオスカルが不信がる。今は友を信じよう。

    (つづく)

    ベルサイユのばら 密着マスク

    いまさらですが 評判が良いので買ってみました。

    ロザリー美味しすぎる

    こちらの商品2013年度シートマスク・角質ケア・マッサージ部門の第2位に輝いております。

    http://www.cosme.net/bestcosme/2013/category/sheet-mask

    コスメ大賞第2位おめでとう!

    ちなみにベルサイユのばら レディオスカル リキッドアイライナー
    2012年に殿堂入りとなっております。

    http://www.cosme.net/html/dnd/2012_08.html


    ベルサイユのばら レディオスカル リキッドアイライナー
    うちの娘も使っていましたが とても良かったと言っていました。

    さて密着マスクですが せっかくなので 他の2種類も買ってみました。

    綺麗になりたいわ♡

    http://www.creerbeaute.co.jp/versailles/

    わたしはさほど美容に興味がない(もうあきらめてる(^_^;)ので 
    いまいちよく分からないため娘達に試してもらいました。

    二人とも絶対評判の良いロザリーがいいと言うに決まっているので
    ロザリー2枚 他1枚ずつの購入。わたしが買った時は一枚380円でした。

    まずはオスカル&ロザリー・ラ・モリエール密着マスク

    守り続けたい乙女の輝きキメを整え弾力のあるお肌に
    香りはクリアピーチ

    娘その1「うわぁ ヤバい 密着度ハンパねぇ プルン♡プルン」かなり満足したようです。

    娘その2「とろりとして 美容液たっぷり 密着感が凄い! 香りもいい」
         翌朝もお肌がピンとしていると言っていました。

    マスクを出した後の袋に沢山美容液が残っていたので 思わず塗ってしまいました。
    顔や手に塗ってもまだ有り余っていて 足まで塗ってしまいました。
    なるほど これだけでも肌がモチモチとしました。

    娘達が気持ち良さそうなので わたしも試してみることにしました。
    もちろん♡アンドレ君とオスカルさまがイラストの

    オスカル密着マスク

    儚くも美しいおまえの真珠肌。白く輝く、真珠の煌めき
    香りはホワイトローズ

    なるほど 吸い付くように肌に張り付きます。トロリとして気持ちいい
    冬枯れのお肌にうるおいのバラの花が咲く そんな感じ
    心なしか肌理が整って ちょとピンとした気がしました。

    最後はアントワネット密着マスク
    気高く愛らしい貴女の女神肌永遠に輝く、白金の麗しさ
    香りはレッドローズ

    娘その2「使った感じはロザリーと同じ。香りはロザリーの方が良いかな。」
          
    パッケージの裏の成分を見るとそれぞれ少しずつ違いはあるようです。 
    香りの違いは分かりましたが 使い心地はあまり変わらないようですね。
          
    試してみて 良いことは分かったのですが
    如何せん一枚380円しょっちゅう使うにはちと痛い金額。

    たまのご褒美というのが良いかもしれません。使っていると癒されます。
    即効性があるので ここ一番に使われるのもいいかもしれませんが 
    肌に合わないといけないので 初めての時はそういう日は避けた方がいいかも。

    お肌が潤うと 気持ちも潤いますね。(*^_^*)

     金の糸 -3-

    あれやこれや ばたばたしているうちに 結婚式の当日がやって来た。
    この日のオスカルとアンドレのブーケとブーケトニアは 白ばらとスマイラックス・アスパラガス。
    白ばらのオスカルを引き立てるように 爽やかなグリーンのスマイラックスが絡んでいる。
    まさにアンドレのように。

    このブーケを作ったのは 花屋ではなく庭師のレモンだ。
    彼もアンドレを子供の頃から良く知っている一人だ。
    一回り程年の違う彼はアンドレの良き兄貴だった。
    よく恋に悩んで庭で落ち込んでいたアンドレに声をかけてくれていた。

    「なあ アンドレ。好きならあきらめることないさ。
    気持ちにウソをついて生きたっていいことないだろ。
    おまえは変わらぬ愛を貫けばいいさ。このアスパラガスのように。
    この植物の花言葉は "普遍" そして "耐える恋" 」
    目の前のニョキニョキ生えた緑の植物をレモンはカマで刈り取った。
    「おいで ゆでてやるよ。」
    皮の固くなった手でレモンはアンドレを助け起こして 自分の庭師小屋に連れて行った。
    途中、香りの良いハーブもいくつか摘んでお茶にした。
    粗末ながらも綺麗に整頓されて居心地のいい この小屋をアンドレは好きだった。
    子供の頃オスカルと喧嘩した時なんかよく逃げ込んだ。でも、すぐオスカルに見つかって 
    二人でレモンのハーブティーをごちそうになったりした。
    青年になってからはアンドレの "心の逃げ場所" になっていた。

    ハーブティーとゆでアスパラ なんだかおかしな組み合わせだが
    不思議と違和感なく美味しく食べられた。レモンお手製のドレッシングのせいかもしれない。
    複数のハーブを混ぜ込んだそれは お屋敷のシェフも一目置くほどの味だ。

    もぐもぐ黙って食べるアンドレにレモンは
    「アスパラガスの花言葉 まだあるんだ。"勝利の確信" 頑張れアンドレ」
    アンドレは一瞬手を止めてレモンを見た。レモンはにこにこアンドレを見ていたが 
    アンドレはまた下を向いてもぐもぐ食べ始めた。
    「そうだ アンドレ これもアスパラガスの仲間なんだが」
    室内にあった つるの伸びた明るいグリーンの植物を手に取り
    「スマイラックス・アスパラガス 花言葉は "勝利"
    いつかおまえがこの恋に勝利したなら これを贈ろう。」
    そう言って笑った。それでもアンドレはまだ下を向いていた。

    「さあ おまえももう外に出ないとな。」
    そう言ってそのスマイラックスの鉢を外に出そうと レモンが小屋の戸を大きく開けた。
    とたん、爽やかな風が吹き込んできた。
    アンドレは思わず顔を上げて戸口の方を見た。日の光がまぶしい。

    「おれもそろそろ 仕事にもどらなきゃ。ごちそうさま レモン」
    鉢と格闘している彼に声をかけると アンドレはお屋敷の方に駆けだした。
    「おういつでも また来い!」
    アンドレは一度振り返り笑顔で手を振った。

    「まさか 本当に結婚しちまうとはね。」
    ふと目を庭に向けると駆け回る幼い二人が見える気がした。

    レモンが見ていたのはアンドレだけではなかった。
    オスカルもまたこの庭を愛して よく足を運んでいた。
    けれどオスカルが成人してしまうとアンドレとは違い 
    下働きのレモンはお嬢さまにおいそれと声をかけて
    自分の庭師小屋に呼ぶわけ訳にはいかなくなった。
    遠くでそっと見守っていると 時折、ひどく哀しい顔をなさっていることもあった。
    泣いているのではと思えるように肩を震わせていることも。
    あまりにおいたわしくて つい身分を忘れて声をかけようとすると 
    決まってアンドレが息せき切って駆けてくるのだ。

    その姿が見えるとオスカルは まるで迷子の子供が保護者を見つけたように安心した顔をする。

    "そうだ オスカルさまにはアンドレが必要なんだ"

    そう思う。愛する相手に必要とされているのなら たとえ結婚という形態はとれなくても 
    一生一緒に生きて行けばいい。いつかオスカルさまが自分の気持ちに気付いた時 
    その時には スマイラックス・アスパラガスを贈ろうと思っていた。

    「レモン いるかい?」

    ナタリーが庭師小屋に顔を出した。
    「あんたが欲しがっていた リボンこれでいいのかい?」
    光沢のある青いリボンを差し出す。
    「おお イメージぴったりだ。さすがはナタリー」
    嬉しそうにレモンはそれを受け取った。
    「はは 当然さ オスカルさまのブーケに使う青いリボンなら 
    オスカルさまの瞳に一番近い青に決まっているからね。」
    笑うナタリーの顔にはしわが出来ていた。
    けれどレモンの目には今もナタリーは初めてあった頃の十四の乙女に見える。
    彼女と二人きりの時は自分も少年に戻った気がする。
    「じゃあ 行くよ。あんたもしっかりやんな。」
    いつものように 手短に要件を済ますと もう戸口を出ていた。

    "やれやれ 禄に話もできやしない。"

    せっかちで 働き者のナタリーはいつも忙しそうだ。
    あれこれ仕事だけでなく 他人の世話まで焼いていて自分の事は後回し。
    だから恋人もいないままおばさんになってしまった。
    そんなナタリーばかり想っていたら 自分もいつの間にかおじさんになっていた。

    テーブルに置かれた包み。いつもナタリーが帰った後に気づくのだ。
    いったい、いつの間に置いたのだろう。中身はレモンの好物ばかり。
    ジンジャークッキーだったり ジャムだったり。今日はシナモンクッキーだった。
    若い頃はおれの事気にかけてくれてるんだと舞い上がったが 
    今は自分が特別なのではないと分かっている。

    アンドレに言った言葉は 自分にも当てはまる言葉。
    スマイラックス・アスパラガスは自分を励ますために いつも目につくところに置いている。

    今、手にした白ばらは オスカルさまが一番気に入っていらした品種。
    それを包み守るように蔓を絡めていく。
    そしてナタリーが用意してくれたリボンを幾重にも重ねバランスを取って広げ下に長く垂らした。
    それから今朝一番美しく誇らしく咲いた一輪を
    今作ったブーケとお揃いのブーケトニアに仕立てていく。 

    出来上がったそれを見てレモンは思った。

    "良かったな アンドレ。おれも腹を決めるか。"

    朝日の中で その白ばらはレモンを励ますように輝いていた。

    (つづく)
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    青林

    Author:青林
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    ただいま、コメントへのお返事は基本的にはしておりませんが、頂いたコメントは大切に読ませていただいています。ありがとうございます。

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