約束していた言葉 <25>

    ラ・ファイエット候が オスカルに事の次第を話してくれたのは 翌日の早朝であった。
    「オスカル オスカル」
    傷に触らないように 優しく揺り動かしながらオスカルを起こした。
    「こんな時間にすまない。
    けれどわたしはこれからしばらく この別邸には来られなくなるから。」
    オスカルが目を覚ますと 愛おしそうに顔を撫でようと
    ラ・ファイエット候が伸ばした手をオスカルは反射的に払った。

    「あ…これは失礼したね。」
    「いえ…」
    オスカルは寝間着の襟元を締め直した。
    「昨日の事 きっと君が知りたがっていると思ってね。」
    「もちろんです!お聞かせください。」
    オスカルは一気に目覚めた。
    その様子にラ・ファイエット候は気を取り直し自慢げに話し始めた。
    だいぶ、虚飾の多い話ではあったが 当事者だけあって詳しい。
    興味深く聞いていたオスカルに 最後に彼はジャルジェ将軍の話をした。

    「将軍は陛下に『このジャルジェ。少々老いてはおりますが、
    命ある限り忠誠をお誓い致します。』とおっしゃっておられた。」

    「そうか…」
    オスカルの顔は暗い。あの父が 母が ばあや やジャルジェ家の者達が
    どれほど苦しんだか考えると胸が痛む。
    「陛下はわたしを許して下さったのか。
    わたしは2度までも陛下を裏切った大罪人だ。罰せられて当然なのに。」
    「おいおい、わたしの前でそれを言うかね。そんなこというなら、わたしはもっと罪深いぞ。」
    ラ・ファイエット候はおどけてみせた。
    この2歳年下のやんちゃ坊主は確かにオスカルを上回る暴れん坊だ。

    アメリカ独立戦争に始めルイ16世は乗り気ではなかった。リスクも費用も大きすぎたのだ。
    それゆえ 全ての将校にアメリカ軍への救援を禁止した。
    ところがこのやんちゃ坊主はそんなこと無視して ちゃっちゃっと財力に物を言わせ
    200トンの船「ヴィクトワール号」をチャーターし アメリカに行ってしまった。

    そして、アメリカでも始めこそたいして歓迎はされていなかったが、
    若く熱意溢れる彼は勇敢さを示し、
    やがて、ジョージ・ワシントンに我が子のように愛されるまでになった。

    パリ帰還の折にはフランス国民からも英雄のように扱われた。
    ところがこの彼個人の栄光とは裏腹に
    この戦争は疲弊していたフランス財政に決定的なダメージを与えてしまった。
    さらに彼は三部会に参加し、平民議員と手を組み
    王命を無視して議場に居座り戦おうとしたのだ。

    「それでも 陛下は昨日 わたしを国民軍司令官として認めてくださった。陛下は凄いお方だ。
    ご自身の損得や対面よりも 物事の真実に目を向けようとなさるのだ。
    だからわたしの事も君のことも許して下さったのだとは思わないか。」
    このラ・ファイエット候の問いかけにオスカルは頷いた。
    確かにそうなのだろう。対面を重んじれば昨日一日の事はとても出来ることではない。
    王の軍隊はまだまだ巨大であった。王は命令ひとつで民衆を蹴散らし 
    威厳を保つことはたやすかったはずだ。

    「ところで わたしはもう反逆者ではなくなったのだろう?
    父上に連絡を取って家に帰りたいのだが。」
    「それは…」
    ラ・ファイエット候はオスカルの言葉に顔を曇らせて リオネルを見た。
    リオネルは歩みより一礼するとはっきりと答えた。
    「恐れながら ジャルジェ将軍」
    「オスカルで良い。そんな言い方をされると父上みたいだ。」
    「ではシトワイヤン・オスカル。あなたをまだ公の場に曝すことは危険だと思われます。」
    「何故だ?」
    リオネルは一枚のビラを差し出した。
    「これは部下が今朝見つけたものです。街中に張られていたようです。
    おそらく日がのぼれば 大量に配られるでしょう。」
    そのビラは王がバスティーユの英雄を将軍と認めたこと。
    すなわち王が負けを認めたのだと 事実を歪曲し、大げさに書き立てていた。
    「『…そして われらがオルレアン公はこの英雄を讃え 支援するために行方を捜している。
    見つけた者には200リーブルの謝礼を出そう。』なんだこれは!まるで懸賞首ではないか!」
    「その通りですよ。シトワイヤン・オスカル。だからあなたを出すわけにはいかない。
    オルレアン公だけではない。
    プロバンス伯もミラボー伯もその他大勢の勢力があなたを探している。
    あなたの存在はいまや大変大きな影響力を持っているのですから。」

    なるほど、美貌の女革命家。自由の女神の広告塔に仕立てるには打ってつけだ。
    着飾らせて横に侍らせておくだけでも 民衆の人気を高めることができるだろう。

    「だから、今はここで傷を治すのに専念なさってください。」
    「そうだ。オスカル。遠慮はいらない。ほとぼりが冷めるまでずっといてくれてかまわない。」
    「すまない ジルベール。」
    「わたしはしばらく 忙しくてここには来られなくなると思うが、
    このリオネルは使える男だ。彼に何でも言ってくれればいい。
    それから とってもいい医者を呼んでおいた。アメリカで知り合って 
    あまりの腕前に無理を言ってフランスに来てもらった医者だ。
    あなたの胸の病を治せるかもしれない。」
    「ありがとう 感謝する。」
    「よし、朝早く起こしてすまなかったね。わたしはもう行くよ。休んでくれたまえ。」
    ラ・ファイエット候は三色の帽章の付いた三角帽をかぶるとサーベルを手に部屋を出て行った。
    あとをリオネルが付いて行く。
    「リオネル よろしく頼む。出来るだけのことをして差し上げてくれ。」
    「お任せください。候。」
    「それから あの男、アンドレ 彼にも気を付けてやってくれ。彼は王のお気に入りだ。」
    「そうなのですか?!何者なのです?」
    「一介の従者だよ。だがどういうわけか陛下に気に入られているんだ。」
    「シトワイヤン・オスカルにもですね。」
    それには答えず ラ・ファイエット候は馬車に乗り込んだ。

    (つづく)

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    オリジナルフレグランス ~オスカルフランソワ~

    京成バラ園のオリジナルフレグランス ~オスカルフランソワ~の詳細が発表されました。

    http://www.keiseirose.co.jp/garden/roseshop/product/product01.html#of2016

    発売されるのは「オードトワレ」と「ハンドクリーム」のようですね。

    オスカルフランソワ 《オードトワレ》50ml \5,400
    オスカルフランソワ 《ハンドクリーム》50g \1,782  

    パッケージもおしゃれで さりげなくオスカルさまらしさを出しています。
    これなら 日常どこにおいても大丈夫ですね。職場などにも持って行けそうです。

    発売は5月7日から。
    嬉しいことにネット通販があります。もう受付は始まっているようですね。

    気になる香りですが HPによると

    『クリアなティーやシトラスの爽やかな香りを芯として、
    ダマスクの甘さ、グリーンノートの清々しい香りが取り巻き、
    全体をふわっとウッディ―ハニーの香りが包み込みます。

    トップノートの爽やかさは、オスカルの凛とした姿を、
    ラストノートの甘さは、女性らしさを表現しています。』

    とのこと。さらに

    『今回は、ベルばらの「世界観の表現」をテーマに香りを作りました。
    全く違うアプローチのフレグランスなので、
    今までできなかったチャレンジもしています。
    それは男性でも違和感なく使えるユニセックスな表情。
    そしてラストノートが長く香ることです。』

    とあります。男性も使えるなんて これはアンドレ君なら即買いですねwww

    あ~あ おまえの香りに包まれて おれの体のおくのほうから 熱っぽいものがこみ上げてくるよ

    わたしのマーガレット展 間もなく終了

    全国を巡回していた「わたしのマーガレット展」ですが
    明日から開催の名古屋展が最終巡回地になるそうです。

    http://my-margaret.jp/

    まだ、ご覧になっていない方、もう一度ご覧になりたい方はこれが最期のチャンスになります。

    尚、5月8日まで地下鉄東山線名古屋駅のホーム内に
    わたしのマーガレット展のビックウォールボードが設置されているそうです。

    https://twitter.com/info_mymargaret/status/725169159609307136

    <名古屋展>

    会   場:松坂屋名古屋店 南館7階 松坂屋美術館
          名古屋市中区栄三丁目16番1号

    会   期:2016年4月29日(金・祝)〜2016年5月28日(土)

    開館時間:10時〜19時30分(入館は閉館の30分前まで)
          ※最終日5月28日(土)は18時閉館
          ※会期中無休

    料金等くわしくはこちらをご覧ください。

    http://tokai-tv.com/events/margaretten/

    終ってしまうのは残念ですが、『今後も特別企画を順次発表するので』とありましたので
    また、素晴らしい企画があるのではと 楽しみにしています。

    薔薇に隠されしヴェリテ

    フェルゼン伯爵や ルイ16世と 恋人になれちゃう乙女ゲーム
    「薔薇に隠されしヴェリテ」がいよいよ発売になります。

    http://www.otomate.jp/verite/

    発売日は8月4日(木)なのですが、のんびりもしていられません。
    何故なら、早期予約特典や限定盤特典、さらには店舗ごとに異なる特典があるからです。

    http://www.otomate.jp/verite/info/shop.php

    これがけっこう 色々なうえに「数量がなくなり次第終了」なのだそうです。
    価格もそれぞれ違ってきますので ゲームの購入をご検討の方は気を付けてくださいね。

    さて、発売日が近づき、いよいよゲームの内容が明らかになってきました。

    ストーリーはアントワネットさまの召使い「リーゼ」になって
    高熱を出して倒れたマリー・アントワネットの身代わりになるというものです。
    身代わり役を終えた彼女つまりあなたはどんな物語を体験するでしょうか。

    気になるお相手は 王道「フェルゼン伯爵」 スリムなイケメン化した「ルイ16世」
    何と革命派の「ロベスピエール」「ダントン」まで素敵な面々がそろっています。

    そして一番気になるのが「ラファイエット侯爵」

    彼の紹介文が

    『フランス貴族であり、軍人。 曲がった事が嫌いで、
    身分の低い人にも屈託無く接する正義感の強い人。
    仕事関係の事には人並み以上に勘が鋭く洞察力もあるが、それ以外が鈍感である。
    フェルゼン伯爵と親しく、彼がフランスに来た時は剣の稽古を付けている。』

    って、なんとなく オスカルさまみたいではありませんか o(≧▽≦)o

    さぁあなたは だれと恋をしますか?

    約束していた言葉 <24>

    オスカルはまだ、王のこの勝利を知らなかった。リオネルに頼んでも
    「いずれわたくしの主人が詳しくお話なさるでしょう。」
    としか言わない。

    そんなイライラしているオスカルを隣のベッドのアンドレが宥めた。
    「オスカル 落ち着けよ。大丈夫だ。
    陛下は国民に愛されている。めったなことは起こらないさ。」
    アランもまた 
    「隊長がここでいらついても どうしょうもないでしょう。傷に触りますよ。」
    とオスカルを寝かそうとした。

    確かにそうなのだが 落ち着かないのだ。
    だがこれ以上周りに気を使わせるのも本意ではない。
    オスカルは目を閉じた。

    確かにこの体ではどうにもならない。早く体を治さなくてはと思う。
    けれど静かにしていると今度は隣で寝ているアンドレが気になる。
    天蓋のカーテンで顔は見えないが 確かにそこに彼がいることが
    盛り上がった掛布のラインでわかる。

    すぐに駆け寄りたいが ここでは囚われの身。耐えるしかない。

    ふと、アントワネットさまのことを思った。
    フェルゼンと愛し合いながら いつも公式の場では 
    否、打ち解けた場であっても人目があるところでは 
    きっと今の自分のように切なく耐えていらしたのかと考えた。

    今はどうしていらっしゃるのだろうか?

    パリに向かった王をどんな気持ちで見送り 
    どれほどその帰りを待ち望んでいらっしゃるのだろうか?

    そして、この事態を招いた自分をさぞかし 恨みに思っていらっしゃることだろう。

    "せめて フェルゼンが帰ってきてくれるといいのだが"

    そのフェルゼンもまた自分をどう思うのだろうか?オスカルは胸がチクンと痛い。

    今日も医者の往診があった。始めにオスカルが診察を受ける。
    「順調に回復していらっしゃいますな。銃創はふさがりつつあります。
    ただ、肺の音はあまりよくありません。」
    この言葉にアンドレは思わず起き上がろうとして 痛みに身を捩らせた。
    「ああ、無理をしてはいけない。次は君を看てあげるから待っていなさい。」
    「オスカル いったい何の病なのだ?」
    「わたしは どうやら結核らしい。」
    オスカルがそう答えるとアンドレはただ
    「そうか…」
    とだけ 呟くように言った。

    実は予想していたのだ。
    屋敷を出る数日前から オスカルが変な咳をしていたのは気づいていた。
    キスした時血の味がしたこともあった。

    だが、あの時オスカルを止めることはできなかった。
    もはや運命は決められていたのだから。

    「それより、アンドレの方はどうなのです?」
    オスカルは包帯を巻かれながら医師に尋ねた。
    「彼の方も銃創は時間と共に治るでしょうが 視力は回復できるかどうか…」
    まき終えると医師は今度はアンドレの方を向いて
    「ともかく治療を続けましょう。」
    そう言って診察を始めた。

    最後にアランも看てもらったが 3人の中では軽傷とあって 
    数日のうちに三角巾が取れそうだと言われた。

    医師が帰ると壁際で 三人の様子を観察していたリオネルがオスカルに声をかけた。
    「失礼ですが あなたとアンドレさんはどういう関係なのです?
    主従にしてはずいぶん親しげですが。」
    この質問にオスカルは慌てることなく答えた。
    「乳兄弟のようなものだ。彼は幼い頃わたしの遊び相手として 屋敷に引き取られた。」
    「平民の子をですか?」
    「そうだ。彼はわたしの乳母の孫にあたる。」
    まだ、怪しむリオネルにオスカルは言い添えた。
    「何を心配しているのだ。アンドレのことは宮廷でも有名だった。
    宮廷に出入りしていた者なら知っていることだ。」
    「わかりました。その方面に詳しい者に尋ねてみましょう。」
    オスカルを探るように見つめて言った。
    「そうすればいい。」
    オスカルはそれににやりと笑って答えた。

    (つづく)

    「ららら♪クラシック」に池田理代子先生がご出演されます。

    NHKで放送中の「ららら♪クラシック」に池田理代子先生がご出演されます。

    http://www4.nhk.or.jp/lalala/x/2016-05-07/31/29420/2133178/

    「ハイドンの弦楽四重奏曲“皇帝”」

    5月7日(土)午後9時30分~ 午後10時00分  Eテレ
    再放送 5月12日(木)午前10時25分~ 午前10時55分  Eテレ

    ちなみに「ららら♪クラシック」では4月30日(土)は「ベートーベンの”月光”」
    5月14日(土)は「ロッシーニの”セビリアの理髪師序曲”」を放送予定です。

    http://www4.nhk.or.jp/lalala/

    約束していた言葉 <23>

    パリを出るとルイはラ・ファイエット候に控えめに頼んだ。
    「帰りに寄り道しても構わないだろうか?」
    「どちらにでしょうか?」
    「ジャルジェ将軍の屋敷へ。」
    それを聞くとこの伊達男は大げさに喜びを表し大声で
    「おお あのバスティーユの英雄の御父君のところへですね。もちろんです。」
    と言って上機嫌で承知してくれた。

    ジャルジェ将軍はオスカルの謀反の後 自主的に謹慎していた。
    国王訪問の前触れがくると 静まり返っていた屋敷が俄かに騒々しくなり、
    厨房の火は激しく起こされ、女中たちは新しいクロスをテーブルにかけ 庭師は花を摘んだ。

    ジャルジェ将軍は外に出て王を出迎えた。
    膝をつき頭を垂れる将軍をルイはそっと助け起こした。
    「ジャルジェ将軍 今日は感謝をしにきたのだよ。」
    そう微笑むルイにジャルジェ将軍は言葉もなく驚いている。
    「ともかく中に入れてくれたまえ。」
    ラ・ファイエット候の声にやっと将軍はルイを中に案内した。

    突然の訪問ではあったが、テーブルには極上のワインととりどりのつまみが並べられた。
    ルイはにこにことそれらを眺めた。
    「急なことなのにありがとう。」
    「とんでもございません。陛下に差し上げるにはまだまだ足らないことは承知しております。
    お恥ずかしいことです。」
    「いや 恥ずかしいのはわたしの方だ。」
    ルイは静かに話し始めた。

    「わたしは王でありながら このような事態を招いてしまった。」
    ジャルジェ将軍は返す言葉がない。今日王がパリに行かれたことは知っている。
    自分もその護衛に加わりたかったが 謀反人の父がでしゃばるのはためらわれた。
    将軍は一日 神に王の無事を祈り続けていたのだ。

    「しかし、今日わたしはパリで国民に受け入れられた。」
    目を伏せ 指を祈りの型に組む。
    「もし、軍隊が国民を虐殺していたならば 
    もうわたしは国民の愛を受けることはなかったであろう。
    それを防いでくれたのは他でもない。」
    ルイは手を伸ばして将軍の手を取った。
    「そちの娘 オスカル・フランソワであった。」
    ジャルジェ将軍の目にみるみる涙が溜まり溢れた。
    「聞けば 彼女は行方不明だとか さぞ心配であろう。」
    ルイの言葉にラ・ファイエット候はピクリとしたが 幸い誰にも気づかれなかった。
    「わたしも探させる。そしていずれわたしの口から直接礼がしたい。
    しかし今は彼女の父であるそなたにまずは伝えよう。ありがとう。」
    「も…もったいないお言葉でございます。」
    ジャルジェ将軍はやっとの思いでそう答えると、肩を震わせて泣いた。
    その肩をルイは優しくポンポン叩き
    「明日からは また出仕してくれるな。
    オスカルを将軍に昇格させる任命を代わりに受けて欲しい。」
    「はい…!」
    ラ・ファイエット候は拍手を送った。
    それを皮切りに皆が拍手を送り それが静まると軽食を食べ 
    小一時間ほど滞在してルイはジャルジェ邸を後にした。

    ベルサイユ宮殿はもうすぐである。ルイは心が躍った。

    生きて帰れた。

    妻が 子供達が待つベルサイユに。

    夜の10時を回ってはいたが ルイの家族は皆起きていて彼を出迎えた。
    泣きじゃくる彼ら愛しい人々をルイは次々に抱きしめ、キスを贈った。

    (つづく)

    京成バラ園「ローズフェスティバル」

    以前もお伝えした京成バラ園で行われる「ローズフェスティバル」の詳細が公開されました。

    http://www.keiseirose.co.jp/garden/rosegarden/event/season_event/2016/rosefesta.html

    ベルばらファンとしては気になるのはやはりこちらですね。

    『「ベルサイユのばら」スペシャルトークショー
        ~池田理代子さん・真飛聖さんをお迎えして~ 』

    開催日時:5月23日(月)13:30~14:00
    会  場: ローズガーデン ガゼボ前(雨天時:ローズガーデン大温室)

    こちらのイベントでは整理券の配布がおこなわれます。
    公式サイトによると

    『整理券をお持ちの方は会場に近い席の用意がございます。
    なお、お持ちでない方も立ち見でご覧いただけます。

    配布時間: 8:30~
    配布場所 : ローズショップ前
    配布枚数 : 100枚(お1人様1枚)※整理券番号順に座席指定となります。
            1~50番:座席をご用意します。
            51~100番:座席の後ろの立ち席となります。 』

    とのこと。

    それにしてもオリジナルフレグランス「オスカルフランソワ」とはどんな香りなのでしょうね。

    約束していた言葉 <22>

    パリへ向かうルイの護衛は近衛隊ではなく 
    ボーヴォー元師、ヴィルロワ公爵、ヴィルキエ公爵、ネール侯爵 
    そしてベルサイユ国民軍司令官デスタン少将と彼の率いるベルサイユの市民軍である。

    途中市民軍はパリの市民軍と交代し、バイイも一行に加わった。
    だがこの時のバイイの態度が以前といささか違っていた。
    ルイを案じてくれた前回と違い、よそよそしく敵意が含まれていた。

    "パリの情勢はかなり悪いらしい"

    ルイには彼の行動が理解できた。彼個人がルイに好感を持ってくれていても、
    そのことを今やパリ市長となる立場では示すことができないのだ。
    そんなことをすれば 革命の敵とみなされ彼自身の身が危なくなるということなのだろう。

    40人の代議員に先導された王の後ろに、100人の代議員が続く行列は
    パリの街をゆっくりみせしめるように行進していく。それを一万を超える民衆が迎えた。
    けれどその手には王に捧げる花の代わりに銃やサーベルなどが握られ
    「国王万歳!」の声はほとんど聞かれる事無く 
    代わりに「国民万歳!バイイ氏万歳!ラ・ファイエット将軍万歳!
    国民議会万歳!祖国万歳!」などの言葉が叫ばれていた。

    その中でもルイは怯えることなく むしろ微かな微笑みさえ浮かべていた。

    パリの市庁舎に到着すると バイイはルイに三色の帽章を差し出した。
    それはパリ市の色である赤と青、そして王家の白を組み合わせたものである。
    ルイは甘んじてそれを受け帽子につけ サーベルの白刃のアーチをくぐった。

    "なんと姑息な…"

    ルイはあまりの低俗なやり口に屈辱を感じるよりも 苦笑が込み上げてしまった。
    三色の帽章は和解と見せかけて 市民の間に王家を捉えたと表現したいのだろう。
    さらにこの両側に兵士が並び サーベルを掲げて交差させアーチをつくり 
    その下をくぐるというのは フリーメーソンメンバーであるルイには
    侮辱と非難することはできない。

    けれど見ている者の中にこれがフリーメーソン式歓待であると知っている者がいるだろうか。
    多くの者の目には民衆の刃の下に組み敷かれた王と映るのではないだろうか。
    多少知識のあるものならさらにこれは槍門。
    かつてサマニウム軍に負けたローマ軍兵士がサマニウム兵士の交差させた槍の下を
    敗者として歩かされた故事の方を思い出すに違いない。

    それでもルイは悠然とその白刃の下を進んだ。
    その姿は見る者の胸に畏敬の念を抱かせた。
    彼に対する嫌がらせは彼を卑しめるどころか 彼の偉大さを強調してしまったのだ。
    周りが暗くなればなるほど 光がより眩しく感じられるようなもの。
    彼の敵が汚いやり方をすればするほど 
    ルイの寛大さ 気高さ ゆるぎない意志をより際立たせるのだ。

    この後、ルイはバイイをパリ市長に、ラ・ファイエット候を国民軍司令官に
    それぞれ就任することに同意した。この時もルイは屈辱的な扱いを受けたが彼は動じなかった。

    業を煮やした バイイは窓からルイに帽章が見えるようにして 
    民衆に手を振ってほしいと恭しく頼んだ。
    バイイとしては今回のパリ訪問で王家に対して民衆の完全勝利を演出する義務があったのだ。
    それが彼の立場なのだ。

    ルイは抵抗することなく 堂々と窓辺に立った。
    ここで 王は民衆からヤジられることだろう。
    少なくとも、屈辱的な姿を示せるだろうと考えたのだが、結果は逆であった。

    グレーヴ広場を埋め尽くした民衆からは
    「国王万歳!王は第三身分の味方だ!」
    の声が惜しげもなく上がったのである。
    その光景に 今まで王に好意を示すことを我慢していた、
    室内に居合わせたサン・メリーはついにこう言わずにはいられなかった。
    「陛下 あなたは王になる星のもとにお生まれになり王となられました。
    けれど今日、陛下はあなたの美徳ゆえに民衆の愛と忠誠を受けられ我らの王となられました。」
    ルイはそれに静かに答えた。
    「わたしはわたしの国民を常に愛している。」

    その会話が口火となり 人々は口々に王を賞賛し、
    ついにはバスティーユを取り壊した後地を広場にして 
    そこにルイ16世の像を建てることになったのだ。

    ベルサイユへの帰還は行きとは違い沿道に並ぶ市民からは「国王万歳!」の歓声が上がり、
    ラ・ファイエット候は嬉々としてルイの護衛を務めたのだ。

    だが、この歓声の中でもルイの心は少しも和みはしなかった。
    むしろ行く前より沈んでいたと言っていいだろう。
    行く前は興奮した市民に虐殺される覚悟であった。
    けれど 今回そのようなことはなかった代わりに もっと執念深い恐怖を感じたのだ。
    いや、うすうす気づいてはいたが はっきりしたというべきか。

    今回、ルイに対して行われた数々の嫌がらせは 
    とても市民たちが思いつくようなものではない。
    いや、市民が本気で自分を亡き者にしたいのなら、
    ド・ローネ公にしたように自分を襲い殺すことが出来たはずだ。
    ルイは自分に忠誠を誓う軍隊を連れてはこなかったのだから。
    市民軍はその名の通り市民である。
    いざとなれば職務を放棄、あるいは自分達もルイ殺害に加わっても おかしくはないのだ。
    そもそもルイを守るというより 監視に近い存在であった。

    では、こんな回りくどいやり方を誰が何故したのか。
    今回だけではない。
    ベルサイユに一夜にしてあれほど大量の「改革のために 
    打ち落とさなければならない 286人の首」のビラが配られた。
    この286人の名前、その選定だけでも時間がかかりそうなものなのに…

    カロンヌ氏の時もそうだ。
    あっという間に悪意のこもったビラやパンフレットが大量に出回り 
    改革は断念せざるをえなくなり カロンヌ氏はイギリスに亡命同然で退いたのだ。

    敵は民衆ではない。宮中にこそいるのだ。

    この騒ぎで 小悪党は逃げ出した。
    だが、もっとも厄介な巨大な魔物がまだ宮殿には巣くっているのだ。
    ルイが真実戦うべき敵は彼らなのだ。民衆ではない。

    (つづく)

    約束していた言葉 <21>

    ルイがベルサイユを出発したのは 午前10時ごろであった。
    アントワネットはもうすでに夫は無事に帰ってこないのだろうと 覚悟をしていた。
    「どうして 死ぬと分かっているのに 行かれるのです?」
    最後の最後までアントワネットは夫を止めようとした。
    「わたしは王であるのだから 行かないわけにはいかない。」
    「まだ、間に合います。ここは一度メスまで引いて 軍隊を呼び戻しましょう。」
    必死に言いつのるアントワネットにルイは
    「国民は我が子同然なのだ。
    あなたはルイ・シャルルが聞き訳がないからと 殺してしまえるのか?」
    そう言った。

    "ああ ダメなのだわ この人は何も分かってはいない 何も…"

    アントワネットはただ 涙を流して 夫を抱きしめた。もはや、何を言っても無駄だと悟った。

    ルイが出発すると アントワネットは自室で 演説の原稿を書き始めた。
    王にもしものとき、自ら国民議会に出向き議員に訴えるためである。

    「わたし達家族は 天が一つにされたものです。それを引き離すなど許されないことです。
    パリがわたくし達の 夫であり 父である 王を返さないことがあってはならないのです!」

    書きながらもアントワネットは 涙を流さずにはいられなかった。

    "ああ どうして こんなことになってしまったのだろう"

    まだ 十分戦えるはずであったのに 王は軍を引いてしまった。

    ふと、こんなことなら ポリニャック夫人と逃げてしまえば良かったのかと考えた。

    "けれど、王の無い 王妃など 何になるのだろう…"

    アントワネットは後ろ向きになる心を奮い立たせ 原稿を書きあげた。
    静かである。誰もアントワネットの私室を訪ねては来なかった。
    皆、遠慮してくれていたのだ。けれど アントワネットはそう感じなかった。

    "見捨てられてしまったのだわ。"
    あれほど 自分を取り巻いていた人々はもういない。

    オスカル…

    彼女はどうして わたしを裏切ったのだろう。
    自分は最大限の友情を示したはずなのに。

    『フェルゼンはかならず アントワネットさまのおそばにまいります。』

    最後に会った時そう言ってくれた。その胸で泣かせてくれた。
    けれど 彼女は裏切り 結果 今日、王は死地に赴くことになってしまったのだ。

    「どうして…?オスカル…」

    アントワネットには彼女の行動が理解できなかった。
    今だけではない これまでもオスカルの言動には分からないことが沢山あったのだ。
    他の取り巻き達が喜んでくれることも 彼女だけは眉をひそめることがあった。

    それでも 彼女はいつも 自分を守ってくれた。フェルゼンの事も 首飾り事件の時も 
    三部会の行進の時、冷ややかな視線のなか 
    警護をしてくれていたオスカルだけが 好意を向けてくれたのだ。

    『フェルゼンはかならず アントワネットさまのおそばにまいります。』

    オスカルの言葉が甦る。

    本当にフェルゼンはきてくれるのだろうか…
    自分を裏切ったオスカルの言葉であるはずなのに 
    それだけが 自分を支える 唯一の希望になっているなんて 
    なんて 皮肉なことなのだろう。

    (つづく)

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