LINE Cameraスタンプ「ベルサイユのばら」

    『ベルサイユのばら』がLINE Cameraスタンプになりました。

    http://sonydes.jp/newblog/?s=%E3%83%99%E3%83%AB%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%A6%E3%81%AE%E3%81%B0%E3%82%89

    写真を「ベルサイユのばら」の世界で飾ることができます。
    とっても素敵ですね。工夫次第でいろいろ楽しめそうです。

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    約束していた言葉 <55>

    オスカルは雪の降るフランス東部で 34歳の誕生日をむかえようとしていた。
    教会では今年もいつも通りミサが行われていた。
    ローマ教皇と革命との間で フランスの教会は揺れていたが、
    この教会では神の救いを求める人々の為に
    例年と少しも変わらない形でノエルをむかえることにした。
    今年は駐屯している多くの国民衛兵隊員達も 快く受け入れたため 
    教会の外にまで人が溢れてしまった。
    この教会に所属する人々を優先的に中に入れ、
    隊員達は雪の上に跪き 神父の祈りに耳を傾けた。

    ミサの合唱は村中に響き渡った。パンと葡萄酒を授ける列は長く続いたが 
    神父は最後のオスカルとアンドレの番まで笑顔を絶やすことはなかった。

    「この美しい村が戦場にならなくて 本当に良かった。」
    帰り際 神父がそう言って祭壇に跪くのを見た。

    「隊長!これから 村長がみんなで飲みましょうって!」
    ピエールがオスカルを呼びに来た。
    村人は大抵 家族でノエルを過ごすのだが 
    村長と村の有志が遠く故郷を離れ 
    祖国と革命の為に働く隊員の為に労いの宴席を設けてくれたのだ。
    この好意をオスカルはありがたく受け この夜は大いににぎわった。

    「よっと!」
    慣れた感じでアンドレは酔いつぶれたオスカルをべッドに運んで靴を脱がせた。
    軍服も脱がせ クラバットを外した。

    掛布を掛けてやり そっと頬にくちづけすると
    「お誕生日 おめでとう オスカル。」
    そう小声で囁いた。
    「ありがとう アンドレ。」
    寝ているはずのオスカルは 目を開けてアンドレを見つめた。
    「やっぱり 起きていたのか。ならちゃんと着替えろよ。」
    「おまえが着替えさせてくれ。」
    「ばか言うな。じゃあな。」

    あっさり出て行ってしまう夫を オスカルは少し恨めしく思った。
    しかたがない事ではあるのだが。やはり少し寂しい。
    さっき教会で いっそ式を挙げて皆に夫婦であることを宣言したい衝動に駆られたが、
    後ろに並ぶアンドレはそんなそぶりを少しも見せてはくれない。

    分かってはいる。皆、家族や恋人と離れて戦地に来ているのだ。
    それを思えば アンドレとのことを 公にするのは憚られる。

    また、今この隊には 志願してきている女性が少なからずいる。
    隊長である自分が 色恋の素振りを見せれば 間違いが起きないとも限らない。

    「けれど… 寒い アンドレ…」
    彼に抱かれたのはあの夜ただ一度きり。
    なのに、体はそれを求めて 甘く疼く。

    おまえは平気なのか。
    おまえは忘れられるのか。
    あの 甘美な喜びを…

    分かっていても 堪えるのはやはり 辛い。

    年が明けて やがて 雪解けを向かえたが 
    各国は攻めてくる気配が全くなかった。

    要因はいくつかある。
    もっとも大きなものは 革命包囲網の中心であったヨーゼフ2世の死である。
    この思いがけない死は各国の結束を一気に崩した。
    もともと信頼などで結びついていたわけではない国々は 
    野心の薄いレオポルド2世が後継となったと知るや フランスから手を引く決断をしたのだ。
    オーストリア軍を全面に押し出し、その陰でうま味を吸おうという計画が崩れたばかりか、
    簡単に落とせると高をくくっていたフランスが
    意外にも強敵で厄介だったため 落とすには相応の覚悟がいると判断したのだ。

    また、近年の強引な勢力拡大のやり方に 多くの民衆が不満を持っていることも理由のひとつだ。
    下手に革命をつぶしにかければ 自国内で反乱分子を立ち上がらせる結果になりかねない。

    それよりも 発展しつつあるフランスと外交をする方が国益に叶っていた。
    港湾を整備し自由港を増やしたフランスは多くの人口を抱える魅力的な市場になりつつあった。

    ルイはこれらの事を 分析して 臨戦態勢から 国防へと軍の体制を切り替えることにした。

    その調整の為に ラ・ファイエット候とオスカルに パリへの帰還を命じた。

    オスカルはすでに王より内々に事の次第を指示されていたので 
    国境警備と治安維持に重点を置いた配置に切り替え、そのための訓練も十分すませていた。

    (つづく)

    LINE着せかえ「ベルサイユのばら」

    ジグノシステムジャパン株式会社から
    LINE着せかえ『ベルサイユのばら ~アントワネット編~』
    『ベルサイユのばら ~オスカル編~』が発売になりました。

    http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000655.000000730.html

    「アントワネット編」「オスカル編」
    どちらも素敵ですね。

    と言っても わたしは ガラケーなので使えないのです。トホホ…

    約束していた言葉 <54>

    こうして フランス軍が戦い、増強を進める一方、
    法整備と経済活動も活発に行われていた。
    新しい卸売市場が建設され 街路はより清潔になり
    大通りは整備され街路樹が植えられた。
    こうした動きは自然と商人を呼び寄せ 新しい店舗が立ち並び始めた。
    これはパリに限った事ではない各地方都市でも同じようなことが起こっていたのだ。

    休耕地は牧草地に代わり 農業組合が作られ その牧草地に家畜が貸し出された。
    これらの家畜から生まれた仔はそのまま 貰い受けることが出来た。

    炭坑や化学製品をつくる工場なども計画され
    数年後にはおおきな利益をあげることになった。

    法整備も2年後には普通選挙を行えるまでになり
    本格的な民主主義へと移行していく。

    ルイとカロンヌ氏とネッケル氏の三人の協力体制は結局12年に及んだ。
    その間にフランスはしっかりと基礎を固めることが出来た。

    ネッケル氏が体の不調を理由に フランスを去りスイスに帰ることになったのをきっかけに
    カロンヌ氏もこの仕事から解放されることを望んだ。

    ネッケル氏にはフランス政府から多額の終身年金が送られることになったが 
    本当の功労者であるカロンヌ氏には
    王の近侍としてのわずかな年金しか与えることができなかった。
    ルイはなんとか 彼の労に報いたいと 自分の所有地に彼のための屋敷を作り与えた。
    「すまない あなたは本当はネッケルよりも多くをもらってしかるべきであるのに。」
    「いいえ、陛下わたくしには十分でございます。
    残りの半生、静かに暮らせることが私の望みでございます。
    それには十分過ぎるものを頂きました。」
    「何か ないだろうか?わたしに出来ることは。」
    カロンヌ氏は 王を慈愛を込めた目で見つめた。
    本当に欲しいものはもう無いのだ。
    王と共に自分は自分の夢をこのフランスに実現できたのだ。望みはもう叶っている。
    けれど 王の気はそれではすまないのだろう。

    ふと、カロンヌ氏は思いついた。
    「陛下ならば お願いがございます。一度気球に乗せていただけませんか。」
    「気球か…」
    ルイは嬉しそうな顔をした。それは革命前カロンヌが財務総監だった頃のことだ。
    ベルサイユ宮殿から気球が飛び立ったことがあった。
    空高く舞い上がるそれをあの時二人は見つめ、
    迷信に囚われた時代が終わり、科学の世紀がやってくることを予感したのだった。

    さっそくリヨンからジョゼフ・ド・モンゴルフィエが呼ばれた。
    「陛下。あの時は陛下を空にお連れすることが出来ませんでしたが、
    あれから改良を重ね 此度は自信を持ってご乗船いただくことができます。」

    三色旗をもとにデザインされた気球には大きく「エティエンヌ」と書かれていた。
    かつて ともに気球の研究をしたモンゴルフィエの今は亡き弟の名である。

    火がたかれ 大きなバルーンの中に熱が溜められる。
    籠の中には数人が座れる回廊席が設けられていた。

    ルイとカロンヌ、それにルイ・ジョゼフとルイ・シャルルが乗り込んだ。
    「本当に大丈夫なのですか?」
    アントワネットは今にも卒倒しそうな顔をして尋ねた。
    「心配にはおよびません。もう幾度も人を乗せておりますから。」
    そうモンゴルフィエは請け合ってくれたが なおも心配していた。

    「行ってきます。母上、姉上。」
    すっかり成長し逞しい青年になったルイ・シャルルは 
    体の不自由な兄ジョゼフをしっかり支え女性達に笑顔を見せた。

    モンゴルフィエがロープとバルブを操り 上昇を始めた。
    地面から離れ始めると 二人の青年は
    「わぁ!」
    と歓声を上げた。

    ぐんぐん高度は上がっていき パリを上空から見下ろすという
    かつてない体験に一同はしばし言葉を忘れた。
    ただモンゴルフィエだけが あちらこちらを指差し説明をしていた。

    「父上凄いです!いつもは見上げるばかりだったノートルダム寺院が
    あんなに下に小さく見えます。」
    「あっ 兄上、あれは鳥ですよ。我々と同じ高さにいます。」
    きゃっきゃっとはしゃぐ若者達をルイとカロンヌは微笑んで眺めた。

    やがて 気球はパリ上空を離れ ベルサイユ方面に向かって南下していった。

    途中緑の牧草地が広がっていて 牛がポツンポツンと草をはむのが見えた。
    青々とした麦畑では 作業中の農夫が国王一行に気付くと 
    帽子を脱いで 胸に手を当てて深々とお辞儀をした。
    「おーい 親父さん!調子はどうかね!」
    ルイが呼びかけると 農夫は
    「万事順調でごぜぇます!王様!」
    と手を振りながら答えた。

    「万事順調か いい言葉だ。」
    ルイは満足そうに言った。
    「ええ 本当に。」
    「そなたのおかげだ。カロンヌ。」
    カロンヌ氏は王の言葉に微笑んだ。
    「わたしのしたことなど、たいしたことではないのでしょう。
    いいえ、人ひとりの力など所詮は微々たるもの。
    この王国に広がる 一本の草と変わりますまい。
    なれど ご覧ください。
    その一本一本が集まって こんなにも美しく豊かな国を形作っております。」

    風が牧草地を渡っていく。
    かつて見た海の波のようにうねりながら。
    「かつて そなたはわたしを宮殿から解放してくれたことがあった。
    シェルブールへの旅のことだ。」
    それはカロンヌ氏が提案した海軍視察の旅の事である。
    革命前なかなか宮殿を離れることがでなかったルイが
    戴冠式の時、ランスに旅して以来の地方行幸であった。

    この旅でルイは素朴な地元の人々と行く先々で
    ふれあい人民の王たる喜びをかみしめたのだ。
    ルイのために花がまかれ 恥ずかしげにひとびとがルイに握手や接吻をもとめ 
    ルイはそれに気軽に応じた。
    人々の訴える窮状に耳を傾け 多額の寄付や恩赦を与えた。

    ある町では遠くからルイを涙を浮かべて見つめる娘に出会った。
    ルイは彼女をそばに呼び優しく声をかけたのだ。
    「どうしたのかね?」
    「お情け深い おうたいしでんか。あたしはどうしたらいいのか、分からないのです。」
    泣き出してしまった娘の涙をルイは拭いてやった。
    「あたし 結婚していないのに 子どもができてしまいました。
    母さんはそれを許してくれません。
    どうか おうたいしでんか この子をお救いください。」
    ルイは娘が呼称を間違えたことなど少しも気にせず 答えてやった。
    「そなたのしたことは 確かに悪い。けれど子を思う気持ちは当然だろう。
    だからわたしが帰りにここを通る時までに 結婚式を挙げておきなさい。
    そうすれば、そなたの持参金はわたしが出してあげるから。」
    娘は涙いっぱいの目で王に感謝の意をあらわした。
    はたして娘は夫婦の誓いを教会で立て王が通るのを待った。
    ルイは約束を果たし 娘の前途を祝した。
    こうして娘は安心して子供を産むことができたのだ。
    これに感動した旅籠の主人は旅籠の名前を「幸運亭」と改め、
    ルイのこのエピソードを 人々に話して聞かせるようになったのだ。

    「あの旅でわたしはこの国を形作る名もない草一本一本が 
    わたしと同じ命であり 愛おしいものだと実感したのだ。
    あの日わたしはこの草たちとともに生きようと決めた。」
    「はい、わたくしもそう承知いたしました。
    だからそのための国作りをいたしました。」
    「見えるか。カロンヌ。この眺めがその答えだ。」
    「ええ、陛下。わたしはこれが見たかった。
    この豊かによみがえったフランスが見たかったのです。」

    それは本当に素晴らしい眺めだった。
    生い茂る台地の恵の向こうに 人々の営みの証の煙突の煙が上がっている町が見える。
    餓えた人々はもういない。明日を信じて笑い合う人々がここにはいた。

    気球がゆっくりパリへの気流を掴んだ。
    帰り始めた気球の中でカロンヌ氏は風に白髪を靡かせていた。
    「忘れません。陛下。この眺めを。名誉などこれに比べればなんの価値がございましょう。
    わたくしの名など残らなくていいのです。
    それよりわたしはこの眺めを手に入れたことの方が嬉しいのです。
    わたくしも名もなき一本の草として 生き死んで逝きましょう。」

    気球は無事テュイルリー宮殿に帰還した。
    カロンヌ氏は翌日ルイが用意した屋敷に引っ越しそこで余生を送った。
    名もなき一本の草でも良いと思っていたカロンヌ氏であったが 
    のちの歴史家はカロンヌ氏と同時代人の回想録や歴史書の中から 彼を見つけ出した。
    散りばめられていたパーツを丹念に拾い集め 
    カロンヌという人間の姿を浮かび上がらせたのだ。
    ルイ16世と共に フランスの危機を救い 今日のフランスの基礎を作った男として。

    けれどこれらはまだまだ先のこと。話を1789年12月に戻そう。

    (つづく)

    約束していた言葉 <53>

    オスカル軍の相手はフランス東部に陣をはる
    プロイセン軍とオ-ストリア軍である。
    オスカルが王とラ・ファイエット将軍と立てた作戦はこうである。

    東部をオスカルが、西武をラ・ファイエット将軍が受け持ち 
    中央作戦室はルイと老獪な2大将軍、ブイエ将軍とジャルジェ将軍が受け持つのだ。
    本来であれば 総司令官であるラ・ファイエット将軍はパリにいるべきであるのだが、
    士気を鼓舞するために あえて人気のある彼が前線にむかったのである。
    ラ・ファイエット候の敵はイギリスである。自然、海戦になるだろう。

    オスカルは戦地に到着すると あえて 敵軍の主力ではなく つまらない小隊を狙った。
    これも作戦である。まずは何が何でも勝ち戦をしなければならなかったのだ。
    そのためには戦略上の利よりも勝てる敵を探したのだ。

    第一戦はもちろん 圧勝であった。
    まさか 敵に襲われると思っていなかったプロイセン軍は驚き敗退した。
    オスカルは深追いせず すぐに軍をまとめ 次の目標に向かった。
    ぐずぐずしていたら プロイセン軍の主力がきてしまうからだ。

    こうしてオスカルは 自軍を分散させることなく 小規模な転戦を繰り返した。
    同じことを ラ・ファイエット候の軍も西部で行っていた。

    東西から連日もたらされる勝利の報を ベルナールたちの出版社だけでなく、
    各社一斉にこぞって書き立てた。
    それは実際にはあまり好転していない戦局を
    あたかも圧倒的にフランス軍が押しているかのような印象を フランス全土に与えたのである。

    フランス国民は沸き立ち みなこぞって祖国の為に立ち上がった。
    連日志願兵が溢れ、その対応に苦慮するほどであった。
    また、オスカルの存在が女達にも火を点け 多くの女性達が戦うと言い出した。
    さすがに国民衛兵隊では 女性の正規入隊を認めはしなかったが 
    それでも女達は男装して 軍に紛れ込んだのだ。

    各地の衛兵隊では こうした女性を歓迎した。
    中央が認めなくとも 現場では受け入れられていたということだ。
    しかも彼女たちは常に前線に立ちたがった。
    これは味方の兵士にすれば 女に後れを取ってたまるかと鼓舞することになり、
    敵にすれば戦い難い相手と言うことになる。

    戦っていたのは兵士ばかりではない。
    フランスに侵入した敵軍を見つけると 農民たちは敵軍が休憩を取り 
    馬に水を与えたり 食事を作るために使っている川の上流に回り込み 
    家畜の糞を川に流したのだ。

    これでは敵の兵士達はたまったものではない。
    水が使えないとなると 命に係わる。
    もちろん、農民たちも困るのだが上流まで水を汲みに行く苦労より 
    はるかにフランスと革命を守ろうと言う気概の方が上回っていたのだ。

    オスカルの軍もしだいに戦慣れし、後から入隊した兵士で人数も膨らんだので 
    いよいよオスカルは本格的な戦闘を始めた。

    正規の訓練を受けた軍隊と戦うため 
    正面からの衝突は避け 側面からはさみ内にする作戦を立てた。

    2隊に分けた 一方の隊長はアランが務めた。
    オスカルとアランは 息を合わせ敵を拡散させた。
    敵の殲滅が目的ではない。士気を下げて敗走させるのが狙いなのだ。

    フランス軍が本格的に 軍の主力部隊にまで攻撃を始めたとなると 
    増々敵軍はやる気を失くしていった。
    ただでさえ、雇われ軍人と高い思想を掲げて
    みずから喜んで戦闘に参加しているフランス軍では気概が違う。

    ここに 雪が降り始めた。

    このままフランスを攻めて占領しても 
    農民たちの激しい抵抗に遭うことを懸念し始めていた各国は
    この雪を機に撤退を開始した。
    フランスは危機を脱したのである。

    しかし、オスカル達フランス軍は緊張を解くことはなかった。
    いつまた各国が反革命に乗り出すか分からないのだ。
    オスカルは東部に留まり 新兵達の訓練を冬中続けた。

    なにせ 銃を触った事すら無い者も多い。
    しかも一度に多くの志願兵が生まれたので 教練の時間はいくらあっても足らなかった。

    「オスカル たまには休まないと 再発するぞ。」
    アンドレはリ先生から送ってもらっている薬草を煎じながら オスカルに小言を言っていた。
    アンドレの目はかなり回復していて ほとんど生活に支障のないところまできていた。
    オスカルもまた、結核の症状はこのところ出てはいない。
    「この薬のおかげで 症状が収まっているだけなんだからな。」
    そう言いながら 苦い薬を残さず飲んでいるか見張っている。
    「ふん、ちゃんと飲むさ。」
    鍋を抱えて オスカルの行く先々で 薬を煎じてくれるアンドレに感謝しつつも 
    やはりこの味には慣れないオスカルであった。

    「アンドレ またその薬か。」
    アランが書類を片手に司令官室に入ると顔をしかめた。
    アランはもう全快していて薬は必要なかった。
    「少し前なら 魔女扱いされそうな匂いだ。」
    「おいおい せめて 錬金術師といってほしいな。」
    今度は自分の薬を煎じながらアンドレが笑う。
    外は雪が積もっている。春になればまた各国が攻めて来るやもしれない。
    それまでに少しでも 軍を強くしなければと オスカルは思った。

    (つづく)

    『haco![ハコ!]』とトワル・ド・ジュイ美術館がコラボ

    フェリシモのファッションブランド『haco![ハコ!]』と
    フランスにあるトワル・ド・ジュイ美術館がコラボしました。

    https://www.haco.jp/feature/detail/F00329

    トワル・ド・ジュイ(ジュイの布)とは、フランスのヴェルサイユ近郊の村、
    ジュイ=アン=ジョザスの工場で産み出された西洋更紗です。

    人物が田園に遊ぶ、単色の田園風景のモティーフに代表される優雅で楽しい
    コットンプリントの数々は、マリー・アントワネットさまも愛されました。

    以前にもお伝えしましたが この「トワル・ド・ジュイ」を紹介する展覧会が
    Bunkamuraザ・ミュージアムで7月31日まで開かれています。

    この後、2016年8月6日(土)-9月11日(日)まで
    郡山市立美術館で開催される予定です。

    「西洋更紗 トワル・ド・ジュイ展」

    http://toiledejouy.jp/

    ショウワノート『ベルサイユのばら』グッズ新作

    種類も豊富で お手頃な商品の多いショウワノートから
    新作が発売になります。

    8月にはクリアファイル

    http://blogs.yahoo.co.jp/powerhisa/37029749.html

    9月には同デザインのノート

    http://blogs.yahoo.co.jp/powerhisa/37029752.html

    それぞれ発売になります。

    こちらはショウワノートの公式サイトです。新作はまだ載っていませんが
    今、発売中のグッズと販売店がわかります。

    http://www.showa-note.co.jp/press/pommop/versailles/

    お手頃価格の使えるアイテムが増えるのはうれしいですね。

    約束していた言葉 <52>

    プロバンス伯はまず アルトワ伯に連絡を取り 国王ルイの現状を歪曲して伝えた。
    王がもはや法的な決定権を有していないこと、テュイルリー宮に軟禁状態であることなどを 
    言葉巧みに同情を引くように話したのである。
    単純で気のいいアルトワ伯はすぐに フランスへの軍事介入をするよう各方面に働きかけた。
    革命をつぶし兄王を助けようと躍起になったのだ。

    すっかりアルトワ伯を取り込めたとみるや 
    今度は皇帝ヨーゼフ2世に働きかけるべく オーストリアに向かった。
    実はルイ16世とヨーゼフ2世は外交問題をめぐって険悪な仲だったのである。
    女帝マリア・テレジアの死後、野望をあらわにし始めたヨーゼフ2世は
    積極的に支配勢力拡大に乗り出した。

    彼だけではない当時ヨーロッパではプロイセンやロシア などが 
    かってにヨーロッパ中をとりあっていたのである。
    その戦いを有利に進めるため ヨーゼフ2世自ら、協力をもとめベルサイユに出向いた。
    けれどルイは協力を拒んだ。
    ルイはこうした列強の身勝手な武力による
    いわば略奪行為を受け入れることができなかったのである。

    この野心家の皇帝にプロバンス伯は物わかりの良い振りをして近づいた。
    自分は兄のような堅物ではない、強いものが領土を獲得するのは当然ではないかと。
    ルイに一泡吹かせ、あわよくば領土を獲得できるかもしれないと感じたヨーゼフ2世は 
    プロバンス伯に協力を約束した。

    オーストリアに遅れまいとプロイセンのヴィルヘルム2世が参戦。
    さらに啓蒙思想の広がりに危機感を感じた。ロシアのエカテリーナ2世も加わった。
    イギリスもまたアメリカ独立戦争で疲弊はしていたものの、
    アルトワ伯の必死の訴えとヨーロッパ各国の動きに軍をフランスに送り込む算段を固めていた。

    この事態に 国民議会も宮廷も浮足立った。
    バスティーユ以来 軍の統率は乱れ 士官が相次いで亡命していたのである。
    国民衛兵隊は徐々に組織されつつはあったが 
    そのほとんどが軍隊経験のない未熟な兵士である。

    ラ・ファイエット候はすぐに全国の国民衛兵隊に指令を出し 
    武装を呼びかけ 檄文を飛ばした。

    『今こそ 我らが 祖国と革命を守る時だ!』

    最初の衝突はベルギー国境付近でオーストリア軍との間で起きた。
    この戦闘に弱腰になったフランス軍の司令官はすぐに退却を命じた。
    この命令を不服に思った兵士たちはなんとこの司令官を私刑にかけ 虐殺してしまった。
    指揮官を欠いたフランス軍はあっけなく敗退した。
    次にプロイセン軍も国境を超えロンウィの砦を陥落させた。
    これにイギリスの海からの攻撃が加わり フランスはまさに危機的状況であった。

    各地から送られる報はどれも敗戦を伝えるものばかりである。
    始め愛国心に燃えていたフランス軍も次第に士気を落としていった。

    「アンドレ、わたしはもう一度 軍服を着ようと思う。」
    この突然のオスカルの言葉にアンドレは驚かなかった。
    「うん。おれはどこへでも付いて行くよ。」
    力強く頷いた。祖国の危機にオスカルもアンドレも覚悟を決めていたのだ。

    オスカルの怪我は完全には治っていない。胸の病もある。
    理由はどうあれ アントワネットを裏切ったことに 多少負い目を感じていたこともあり 
    オスカルはもう表舞台に立つことなく、
    裏からフランスと王室の為に尽力するつもりであった。

    だが、今祖国は軍人を欲している。
    指揮が取れる将校がどうしても必要なのだ。

    オスカルの存在は 特にフランス軍の士気を高めるのに役立つだろう。
    それを最大限利用するために ベルナールたちは宣伝計画を立てた。

    「おい、おまえも行けよ。」
    ベルナールはアランの肩を叩いた。
    「行きたいんだろ。軍に戻れ。おまえは士官の勉強を修めているのだから。」
    「しかし…」
    「ここの守りなら心配はいらない。おれはもと黒い騎士なんだぞ。」
    「わたしもこう見えて 剣も銃も扱えるのよ。」
    ロザリーも言い添える。

    アランは目を輝かせた。
    「ありがとう ベルナール、ロザリー」
    彼はその日のうちに 国民衛兵隊に入隊した。

    涼やかなその日、オスカルは青い国民衛兵隊の軍装で 三色の帽章を着け 
    剣を帯びて テュイルリー宮に堂々と正面から伺候した。

    誰もが この流れるような金髪の麗人を忘れてはいなかった。
    彼女の姿を認めた人々は駆け出し

    「バスティーユの英雄が生きていた!」

    そう触れ回った。その中にはもちろんベルナールの手の者が多数交じっている。

    オスカルはまず ルイ16世に正式に謁見し 並み居る宮廷人の前で 王に口上を述べた。
    「陛下 お許しいただけますならば 再び この身をフランスの為に捧げとうございます。」
    「オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ伯爵。
    あなたにはすでに将軍の地位を与えています。存分に戦われよ。」
    「はっ!」

    オスカルは王に敬意を表し その足で 軍総司令官ラ・ファイエット候のもとに向かった。
    候はすぐに フランス東部の国民衛兵軍の指揮権をオスカルに与えた。
    これらの事はすでに打ち合わせ済みなのだ。

    オスカルはすぐに出陣の準備を開始する。
    翌早朝、朝日の中 煌めく金髪を靡かせながら オスカルはパリの市街を行進する。
    三色の大旗を従え 幾多の兵士達の先頭に立つ。

    その傍らに アンドレとアランがいた。
    そしてその後ろには あの日オスカルと共に戦った
    かつてのフランス衛兵隊のメンバーがジャンとフランソワを除き勢ぞろいしていた。
    ラ・ファイエット候からの贈り物である。
    各地に散っていたメンバーをみな呼び戻したのだ。
    これによりオスカル軍は
    はじめから中核が整い、士気の高い状態でスタート出来た。

    「久しぶり 元気だったか?」
    「また 隊長と戦えるのか…うっうっ…」
    「泣くなよ。ばか!」
    皆久しぶりの再会に 抱き合い無事を喜んだ。

    「諸君!」
    オスカルの声にざわついていた兵士が皆私語を止め オスカルに注目する。

    「さぁ 再び祖国の為に 戦おう!
    あの日勝ち取った三色旗のもと、革命を守る自由な戦士として!」

    「おー!!!」
    鬨の声が上がり進撃が開始される。

    緊張にオスカルの体が震える。けれど それを隠しグッと胸を張る。
    自分の姿が フランスに勇気を与えるのだ。強気を張らなければいけない。
    パリを抜けるまでオスカルは馬上毅然とした態度を崩しはしなかった。

    (つづく)

    約束していた言葉 <51>

    「陛下…」
    プロバンス伯がいなくなると オスカルは声をかけた。
    ルイに会い来たのだが、声をかけそびれていたのだ。

    「オスカルか…」
    驚く風もなく ルイは悲しげな眼を向けた。
    「彼の言ったことは正しい。わたしは王の器ではない。」
    「わたくしはそうは思いません。」
    「ありがとう オスカル。
    あなたの信頼に応えるべく出来る限りのことはするつもりだ。」
    空には月がかかっている。その光を雲が遮り、ルイの顔が見えなくなった。
    その闇の中から 小さな声がする。

    「わたしは王の才覚ではないが 王以外に何になれるというのだろう。
    王だから 愛される。弟の言う通りだ。
    父が死んでからは 王太子だから 王だからとずっと言われ続けてきた。
    それに応えなくてはと思うのに わたしは応えきれなかった。
    皆が求める王にもなれず、かといって他に何者であるかもわからない。」

    沈黙が続く。オスカルには何も言えなかった。
    それは自分も同じ思いをした事があるからだ。
    結局その答えをオスカルは見つけられなかったのだ。

    「母はわたしを愛してはいなかった。
    どんくさい不器用なわたしより 才気あふれるスタニラス(プロバンス伯)や
    明るいシャルル(アルトワ伯)の方がお気に入りだったのだ。
    わたしは家庭教師に見張られ育つしかなかった。
    妻とも王だからと 愛ではなく義務で子をなしたのだ。
    つまり 一人の人間としては もはやわたしを愛するものはいないのだと 言うことだ。」

    雲が晴れて お互いの姿が見えるようになると ルイは驚きに目を見張った。

    「何故 あなたが泣いているのだ オスカル。わたしを憐れんでいるのか?」
    「いえ、いいえ、陛下。申し訳ありません。わたくし事を考えておりました。」
    「あなたの 私的な事?」
    オスカルは 堪えきれず 漏れ出すように話し始めた。

    「わたしは始め自分を男だと思い過ごしておりました。
    父がほかの姉妹より自分を大切にするのは 跡取りの男子だから当然と感じておりました。
    けれど ある時、わたしは自分が実は女であると気付いてしまったのです。
    その時から、自分が分からなくなりました。
    もし、父にこのことが知れればわたしの価値はなくなってしまう。
    わたしは父が期待するような男でなければならないと 強く意識するようになりました。
    いつもビクビクしていました。身近に手本となる男の子がいなかったことが 
    わたしの不安を増々大きくしました。
    何かする時も 強い男の子はどのように振る舞うのだろうと考え 
    行動しようと躍起になるのですが 分からないので いつもイライラしていました。

    そのうち、自分が何をしたいのか 何が好きなのか そんなことさえ 分からなくなりました。
    自分が無くなり 父が期待するであろう男子像を求めて
    得られない苦しみに囚われていったのです。

    それでも表面上は勝気で明るい少年を演じ、
    物わかりのいい子と周りに思われたいと無理をしていたのです。
    あのままいけば いずれわたしは 不安を抱えきれなくなり廃人になったかもしれません。」

    「アンドレだね。あなたを救ったのは。」
    「はい…」
    「分かるよ。わたしも彼には救われた。」
    「アンドレはわたしをまっすぐ そのまま受け入れてくれました。
    わたしが男であっても女であってもそのまんま。
    彼自身も素直に感情を出す子でした。
    わたしは男のくせにビービ―泣いて 逃げ出す彼に初めはとても驚いたものです。」
    ふふふ…二人は顔を見合わせて笑った。

    「どんな自分もアンドレが受け止めてくれるので わたしはしだいに自分を取り戻しました。
    感情が返ってきたのです。楽しい時に笑い 哀しい時に泣けるようになりました。
    彼が来る前は 今はどう振る舞うべきかが先で 
    自分がどう感じているかなど問題にもなりませんでした。
    ここで泣いてないとおかしいと思われるだろうか?
    それとも涙を堪える仕草の方が父上は好まれるだろうか?
    そんなことにばかりに気を取られていたのです。」
    ルイはコクンと頷く。

    "わたしもそうだ…そして そうすることに諦めと疲れを感じている…"

    「わたしは 自分で解決することが出来ませんでした。
    だから、陛下をお慰めすることもできません。けれど、陛下!」

    オスカルはルイに跪いた。

    「陛下! 陛下は立派な王であらせられます。
    多くの民が陛下を父と慕っております。
    世に啓蒙君主を気取っている輩は沢山おりましょうが 真に啓蒙思想を理解し 
    新しい時代を築こうとなさっている君主は陛下ただおひとりでありましょう。
    そのような君主にお仕え出来ることに このオスカルは誇りを感じております。」
    「ありがとう その言葉は今のわたしにとって何よりの事だ。」
    ルイはオスカルの手を取り 立たせた。
    「夜も更けた。部屋まで送ってくれるか?」
    「はい」

    ルイの半歩後ろを歩きながら オスカルは無力感に囚われていた。
    ルイの孤独と苦悩をおそらく誰よりも理解しながら なんの力にもなれはしないのだ。

    "神よ どうか 陛下にも アンドレのように 
    全てを受け入れ愛して下さる方をお遣わしください"

    冴え冴えと輝く月を見上げながら 祈ることしかできなかった。

    しかし、この時ルイは気づいていないだけで 
    本当は彼を全面的に愛する者はすぐそばにいたのだ。

    その人物は 後年 ルイを看取った後に、このように話している。

    「父王は わたしにとって優しい父親であり 尊敬すべき君主でありました。
    けれどそれ以上に 人間としてとても魅力的でありました。 愛情がとても大きく深く、
    おそらく地球全部を愛せてしまうのではないかと思えるほどでした。
    時に涙し 時に悩み 時に苦しむ人間らしさの中で 
    輝くばかりの慈悲深さと忍耐を持って困難に立ち向かったのです。
    そこにはまさに ルイという一人の人間の姿がありました。
    そんな人間ルイをわたしは愛したのです。」

    そのことはルイにも分かっていたのだろう。
    王太子ルイ・ジョゼフの手を握りながらルイがこの世に残した最後の言葉は
    「ありがとう あなたがいてくれたから わたしはわたしでありえたのです。」
    というものであった。

    だが、ルイが安らかな眠りにつけるのはまだまだ先である。
    神がルイに課した試練はあまりにも多かったのである。

    プロバンス伯はこの夜ひそかにイギリスに逃亡した。
    もちろん プロバンス伯逃亡の知らせはルイにも届いたがルイは
    「黙って行かせてやれ。」
    とだけ言った。

    だが、これがフランスに大きな災厄をもたらすことになった。

    第1次 フランス包囲網の始まりである。

    (つづく)

    マリー・アントワネット展 続報

    以前にもお伝えした「マリー・アントワネット展」の内容が
    少しずつ明らかになってきました。

    アントワネットの浴室や居室を 王妃様が実際に使った家具などで原寸大で再現。
    フェルゼンとの恋文の複製や 二人が使った暗号表の実物などを展示。

    などなど、魅力的な内容となっています。

    詳しくは こちらをどうぞ。

    http://www.ntv.co.jp/marie/

    開催は10月25日からなのですが
    今から気を付けておきたいことがあります。

    今月から月替わりの企画チケットがあるのです

    http://www.ntv.co.jp/marie/ticket/

    7月は 『最速割チケット』 1,200円(税込)
    当日券より600円も安いチケットです。

    8月は 『早割ペアチケット」』2,800円(税込/2枚1組)
    二人で使っても 一人で2回行ってもOKのチケットです。
    ですが、間に合うなら 7月の「最速割チケット」を2枚買う方が安いですね。

    9月は 『リラックマグッズ付チケット』 ※数量限定 ※内容・価格は未定
    「リラックマグッズ」の詳細は8月下旬ごろ公開予定だそうです。

    10月は 『「Sweet Lip」付チケット』 2,200円(税込) ※数量限定
    「Sweet Lip」ってなに?ということで検索してみたら これが出てきました。

    https://www.ameyaeitaro.com/sweetlip

    はっきり 明記はされていないのですが
    たぶんこことのコラボではないかと思います。

    「マリー・アントワネット展」まだまだ 明らかにされていない部分が多いですが
    すっごく面白そうですね。全国巡回でないのが残念です。


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