金の糸 -6-

    いつも後ろに靡かせていたブロンドは結い上げられ 
    代わりにふんわり透けるベールが広がっている。
    いつも隠されていた肩は美しい曲線を見せている。幅広の襟がその下にある傷痕をそっと隠す。
    おれは思わずその肩を抱いた。美しいデコルテの見える肩の出るドレスは
    いつも首元の詰まった軍服を着ていたオスカルにとって女らしさの象徴。
    けれどあの襲撃事件以来 肩の出るドレスは作れなくなっていた。

    「大丈夫ですよ オスカルさま。傷は肩のだいぶ下側ですし、
    傷痕も今は薄いピンクでございます。」
    デザイナーのベルタン嬢はドレスのオーダーに行った際 
    オスカルの気持ちをいち早く察してくれた。
    そして傷痕を隠しながらも 肩の出る美しいドレスをデザインしてくれた。
    まるでショールを羽織っているかのような幅広の襟は
    背中を大きく隠しながら 前は深く開いている。
    合わせ鏡で背中を本人に見せながら
    「ほら全然見えませんことよ。」
    にこやかに勧めた。確かに見えないがオスカルはまだ不安だった。
    「しかし ドレスがずれてしまわないか?」
    「まぁ なにをおっしゃいます?わたくしのドレスがずれるなど!」
    ベルタン嬢はわざと怒った風に言った。
    「あ・・すまない そんなつもりでは・・・」
    謝るオスカルにベルタン嬢は
    「大丈夫でございますよ。後ろはベールで隠れますし 
    ご心配なら皆の視線が下にずれるよう スカートの後ろがわにボリュームをもたせましょう」
    にっこり微笑んでそう提案してくれた。

    "さすがは ベルタン嬢"

    オスカルが何も言わずとも その女心を見抜いてしまうとは。
    「どうして わかったんです?」
    アンドレが尋ねると
    「それこそ わたくしの仕事ですもの といつもならお答えするのですが 
    あなたには特別に教えて差し上げますわ。でも秘密にしてくださいましね。」
    そして小声で教えてくれた。
    「オスカルさまが試着をご希望になるのは 首元の詰まった服ばかりですけど 
    目線は肩の出る胸元の開いたドレスにいっていましたわ。
    着替えを手伝う時傷に気づきましたから これを気になさって 
    本当にお召しになりたいドレスをお選びになれないのだと分かりましたの」

    結局 尻込みするオスカルを周りの女性陣が押し切る形で胸の開いたドレスに決まった。
    アンドレは"そんな 強引な"と思ったが よく見ればオスカルは頬を染めて嬉しそうだ。
    女性のこうした細やかな心理はやはり男の自分では分からない。
    思えばおれは何もかも分かってやっているつもりだったが 本当は違っていたのかもしれない。
    女性の言葉は言葉通りでないこともあるのだから。
    始めは興味なさげな風を装っていたオスカルだが しだいに心が解れてきた。

    (つづく)
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