金の糸 -19-

    アンドレの悲痛な叫びは庭にまで届いていた。

    「どうやら アラン達はうまくやったようだな。」
    美味しい料理をつまみながら ベルナールはロザリーに話しかけた。
    「そのようね。わたしのオスカルさまと結婚するというんですもの。あれくらい当然よ。」
    澄ました顔でロザリーはワインを飲んでいる。
    「あれくらいって・・・中身を知っているのか?」
    「うふっわたしもちょっと お手伝いしちゃった。」
    手を口元に添えて微笑む妻に ベルナールはちょっと怯えた。
    いったいどんなものを作ったのだろう。
    もしかしたら 今後喧嘩でもしたら 同じものが食卓にならぶのだろうか?
    アンドレの叫びはまだ聞こえていた。

    「隊長これ」
    ようやく壺の中身をアンドレが完食すると アランは別の小さな壺をオスカルに渡した。
    「蜂蜜です。アンドレに飲ませてやってください。」
    「ああ ありがとう」
    「礼なんて 言うことないぞ。オスカル」
    ひりひりする 咽喉を押さえてアンドレは続けた。
    「憶えてろよ。おまえらが結婚する時は もっと凄いのを用意してやる!」
    「はは そんな日が来りゃいいがな。」
    笑いながら明るい日の光の中 男達は出て行った。

    もう夜が明け始めていた。庭に下りるとジャルジェ家の使用人に交じって
    ベルナールとロザリーが働いていた。
    「おーい 皆の分も取って置いたぞ。」
    ベルナールが大きく手を振って呼んだ。
    料理の残りを小分けにして ほしい者に分けているのだ。

    「おい アラン いったい何をアンドレに食わせたんだ?」
    ロザリーに聞こえないように小声で訊いた。
    「なに ただのネズミのスープさ。」
    「ネズミ!?」
    「それに ちょっと辛口の味付けをしたんだが・・・」
    アランもやっぱり小声でしゃべりながら
    「女はやっぱり 怖えぇ・・・」
    ロザリーを盗み見ながらつぶやいた。その様子にベルナールの恐怖は一段と増すのであった。

    こうして "新郎新婦の逃走の儀式" は無事(?)終了したのであった。

    「アンドレ・・・大丈夫か・・・」
    心配そうにオスカルはアンドレに水やら蜂蜜やらを飲ませている。
    「あの "これはフィクションであります券" とやらを使って治したらどうだ?」
    「ダメだよ。こんなことには使えない。数に限りがあるんだ。」
    アンドレは咽喉を押さえながら答えた。
    「日本がどんなところか 詳しいことは分からないんだ。大事に使わないと。」
    「日本か 本当に行けるとは思わなかった。
    日本の剣を見たことがあるが 片刃で滑らかに反っていた。
    刃が明るく冴えるようで 輝くオーラを放っていた。
    あのような剣を "サムライ" はどのように扱うのだろうか?」
    オスカルの頭の中は 未知の剣術への興味でいっぱいになった。
    こんな時のオスカルの真剣な それでいてわくわくしている表情もアンドレは好きだった。

    「よし。おれもだいぶ楽になった。時間が惜しい。着替えて出発しよう。」
    「ああ 行こう。」
    二人は立ち上がった。

    こうして二人は結婚式を終え "サムライ" の国に旅立ったのでした。

    FIN

    ”金の糸”はこれで終了です。お読みいただきありがとうございました。
    3月11日から”遅咲きのばら達”をおおくりします。
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