天使のくれた七日間ー11-

    初めてみた異国にオスカルの好奇心はかきたてられた。
    (アンドレ わたしは知らない事が沢山あったんだな。もっと色々見てみたい。
    そうだ。前に絵本に出ていた氷ばかりの世界に行ってみたい。
    本当に飛ばない鳥がいるのか確かめるぞ。)
    (よし 行くか。)
    少し元気を取り戻したオスカルにアンドレは明るく答えた。

    アンドレ達は様々な国へ行ってみた。ピラミッドやガンジス川 エルサレム 
    果てはジャポンまでも行ってみた。また本場イタリアのオペラを観たり 絵画を鑑賞したり 
    バイオリン職人の工房なんかも見学した。なにせ瞬間移動できるのだから。
    人々の暮らしも文化も想像をはるかに超えていて
    自分達はなんとちっぽけな世界にいたのかと思った。

    (ばあやは行きたいところはないのか。)
    ばあやは今まで何も希望は言ってなかった。
    (では アンドレの故郷に)
    (よし 行こう。わたしも見てみたい。)
    オスカルは目を輝かした。

    アンドレが生まれたのは地中海に面した港町 マルセイユだ。
    湾に向かって傾斜した街を見守るように 丘の上に教会が立っていた。
    (あの教会には 銀のマリア様が祭られていて 
    父さんのような船乗り達を守ってくださっているんだ)
    (アンドレはあの教会の聖歌隊だったのか)
    (違うよ。おれがいたのはもっと 下の方にあるんだ)
    アンドレはオスカルの手を取って飛んだ。何もかもが懐かしかった。
    街はだいぶ変わり知らない人ばかりだったが 溢れる熱気と喧騒は昔のままだった。
    (そうだ おれは この空気の中で育ったんだ)
    ベルサイユに行ってから ついに一度も里帰りしなかった。
    それでもこうして戻ってみればここが自分の原点だったとわかる。
    生き生きと陽気に働く人々 飾らず逞しい生命力。

    アンドレ達はやがて 小さな教会に着いた 
    (ここだよ。家族の墓もここにある)
    裏手の墓地に行くと人影があった。

    (マルタン!)

    マルタンはアンドレの両親の墓の前にいた。
    「おばさん アンドレにまた 会って来たよ。それで今日は良い知らせがあるんだ。
    アンドレ 遂に願いを叶えたみたいだ。」
    (マルタン・・・)
    アンドレは友に呼びかけたが 聞こえはしなかった。
    マルタンは目を細め 嬉しそうに墓に向かって話しかける。
    「アンドレ オスカルさまと思いを通じ合えたようだ。
    パリでは今自由に向かって人々が立ち上がろうとしていた。
    今は公けに出来ない恋でも 近いうちに結ばれることが出来ると思う。」
    彼は立ち上がり
    「今度 アンドレに会ったら 花嫁を見せに来るように言っておくよ」
    まるでそこに人が居るかのように挨拶をして立ち去った。

    (マルタン)
    アンドレは友を追いかけ抱きしめた。
    マルタンは少し驚いたような顔をしたが
    「風か・・・」
    そう言って空を見上げた。

    彼の息子達が"ラ・マルセイエーズ"を歌いながらパリに進軍するのはもう少し先の未来。

    (友達とは良いものだな。)
    オスカルは独り言のように呟いた。
    (スウェーデンにも 行ってみるかい。)
    アンドレはオスカルが言い出しにくそうなのでかわりに言った。
    (いいのか)
    (もちろん なに遠慮しているんだ。おれがやきもちやくとでも)
    アンドレは返事を待たずに瞬間移動した。

    スウェーデンのフェルゼンの屋敷は重い空気に包まれていた。
    オスカルの知っているソフィア嬢の他に 
    フェルゼンによく似た青年がいた。ファビアンと呼ばれていた。
    (フェルゼンには弟がいると聞いている。彼がそうだろうな。)
    オスカルが複雑な顔をして言った。フェルゼンはどうやらフランスへ向かっているらしい。
    それはオスカルにとって嬉しくもあるが 残されたフェルゼンの家族と
    今後フランスで待ち受けているであろう フェルゼンの運命を思うと胸が痛い。

    (帰ろう。フランスへわたしたちの祖国へ)
    オスカルは毅然と言った。おれの大好きなオスカルの顔だとアンドレは思った。
    どんな苦難にも真正面から向き合い怯むことのない 
    オスカルの心の気高さをアンドレは愛していた。
    フランスはどうなっているのか。自分たちのしたことの結果はどうなったのか。
    どんな意味を歴史に 残された人々に与えたのか。それを知るのは正直怖かった。
    けれど確かめないわけにいかない。真実から目を逸らさないとオスカルが言うのなら 
    アンドレはそれに従うのみだ。  フランスへ彼らは飛んだ。
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