天使のくれた七日間ー13-

    ジャルジェ家の墓地に行ってみるとはたして ジャルジェ将軍とおくさまがいた。
    (父上・・・母上・・・)
    オスカルは呼びかけたが 二人には聞こえない。
    二人の前にはまだ掘り起こして間もない土の山が三つあった。

    「オスカル おまえの墓碑名を決めたぞ。」
    父上の声。たった数日の事なのにずいぶん懐かしい気がした。
    「"わが 誇り高き娘オスカル・フランソワ・グランディエ"」
    オスカルとアンドレは顔を見合わせた。
    父上は確かに"オスカル・フランソワ・グランディエ"とおっしゃった。
    「ルイ16世陛下はパリに行かれた帰り 我が家にお立ち寄りになられこうおっしゃられた。

    "ジャルジェ准将のおかげで王家は手遅れにならずにすみました。ありがとう。
    今日の日の市民との和解のきっかけを 命をかけて作ってくれた 
    オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ准将に感謝します"

    とな。もったいないお言葉だ。
    わたしはおまえが謀反を起こしたのだからどんな処分も覚悟していた。
    この思いがけない陛下のご恩情につい感涙してしまったよ。
    一度ならず二度までも助けていただいた両陛下に 今後も忠義をつくすつもりだ。
    陛下のお言葉を受け すぐにパリにおまえ達を迎えに行った。
    もうすでに埋葬されてしまっていたが 連れて帰ってきた。
    怒っているか。オスカル。またおまえに勝手なことをしたと。」
    ふふっと父上は微笑まれた。母上は父上に寄り添って泣いておられる。

    「だが オスカル。陛下にあのように言っていただいたおまえを 捨て置いてはおけまい。
    教会の神父殿に聞いた。それはみごとなご夫婦でしたと。
    亡くなった夫にあれほど尊敬と愛情を込めた妻を見たことがないとな。
    今にして思えばわたしが進めた結婚話をことごとく蹴ったのは アンドレゆえだったのだろう。
    うかつにもわたしはアンドレがわたしに逆らうまで気がつかなかった。
    いったいいつから夫婦だったのだ。おまえ達は。」
    だんなさまはおくさまをぎゅっと 抱きしめられた。

    「アンドレ おまえの墓碑銘は"わが 勇敢なる息子 アンドレ・グランディエ"」
    (だんなさま!)
    アンドレは心底驚いた。自分は御恩に背き大事な跡取り娘を奪った男なのだ。
    「アンドレ。おまえはオスカルと結婚したのだから 正真正銘わたしの息子だ。
    実をいうとな。ばあやからおまえの話を聞いたとき 
    心が躍ったのだ。男の子がくると。まだ8歳だ。
    さておまえは素直で明るくおおらかな子だった。オスカルと一緒に剣を教えたがやはり男の子。
    返す力の強さは男のものだった。やがて明らかにオスカルと違う筋骨を持つ
    おまえは優しい子に育ってくれた。そしていつもオスカルを気遣い守ってくれた。
    それこそ命を投げ出してまで。聞いたぞ。オスカルの盾となって銃弾をあびて逝ったと。
    軍にいるとそれこそ沢山の男達を見るが おまえほど男らしい男は稀だ。
    乱暴で荒々しいのを男らしさと勘違いしている者 無鉄砲なのを勇敢だと思い込んでいる者 
    大半はそんなものだ。普段おまえはあまりに穏やかで優しいので 皆気がつかないが
    大樹のように強い日差しや吹きすさぶ風から 
    包み込むような優しさでオスカルを守るおまえを わたしはいつも頼もしく見ていた。
    そしてそんなおまえを夫に選んだわが娘を誇りに思う。」
    (だんなさま・・・もったいのうございます。)
    今度はばあやが泣き出した。

    「それから ばあや。長いことご苦労だったね。感謝するぞ。
    おまえはもうジャルジェ家の一員だ。ぜひとも ここで皆と共に眠ってほしい。
    墓碑銘は"ジャルジェ家のあたたかき母ここに眠る。マロン・グラッセ"
    わたしを始め わたしの娘達を皆慈しんで育ててくれた。
    屋敷の使用人達の厳しくも優しい母だった。
    ばあやに仕込まれた者は 皆よそへいっても喜んでもらえたそうだ。
    本当にありがとう。ばあやは我が家の太陽だった。」
    (あーん あーん)
    ばあやは当分泣き止みそうにない。アンドレもだ。やはりこの二人は血が繋がっているのだなと
    オスカルは思った。そう思う自分も泣いていたのだが。

    「オスカル アンドレ ばあや 気にいってもらえたか。」
    ジャルジェ将軍の問いかけに 三人は将軍とおくさまを
    包み込むように 抱きしめるかっこうをした。
    つむじ風が起こり ジャルジェ将軍はオスカルが笑ったように感じた。

    ふいにアンドレの上に金色の光が射した。
    (時間だよ。アンドレ。)
    天使があらわれた。約束の七日間が過ぎたのだ。
    (ありがとうございました。素晴らしい七日間でした。)
    (じゃ 行こうか。)
    (待ってください。わたしも逝きます。アンドレと離れ離れになるのは嫌だ。)
    (わたしもお嬢さまとご一緒しとうございます。)
    ばあやは
    (天使さ~ま。)
    と呼びかけた。黄金の滝のような髪の天使があらわれた。
    二人の天使に導かれオスカルとアンドレ ばあやは天国へ昇っていった。
    フランソワとジャンはもうついているだろうか。
    明日には バスティーユで戦死した隊員も来るだろう。天国はしばらく賑やかになりそうだ。

    FIN

    天使のくれた七日間はこれで終了です。お読み頂きありがとうございました。
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