エピソード6 考察ー9-オキザリス<5>

    大貴族ジャルジェ伯爵の葬儀は思った以上に大変であった。
    弔問に訪れる人々は列をなし、軍閥 財産管理 領地の統治 
    当主となる重責はレニエに重く圧し掛かった。
    急な訃報であったことも拍車をかけた。

    ロレーヌ公国のことも 放っておくわけにはいかない。
    腹心の者を派遣し、 自分の代わりに
    ロレーヌ公国のフランス寄りの貴族達と連絡を取らせていた。

    あれからすぐ ロレーヌ公が亡くなり
    第2王子のフランソワ王子が公国を継ぐことになった。
    今度の交渉はこの王子と行うことになるだろう。

    フランス側でも交渉に差し出す地の選定
    穏便に事を運ぶための大義など 王やその腹心らとレニエは詰めの協議にかかっていた。

    “ジョルジェットはどうしているだろう・・・”

    レニエは始終、彼女を思い出しては深い後悔をしていた。
    せめて 彼女の住所だけでも突き止めておくのだった。

    彼女は今も あの花咲き乱れる地で 自分を待っていてくれるだろうか?
    それとも、もう自分のことなど忘れてしまったのだろうか?

    もちろん、レニエは彼女のことを調べるよう命じていたが、依然何も報告はなかった。
    無理もない。ジョルジェットは貴族とはいえ 宮廷に出入りしているわけではない。
    レニエと付き合いのあるような貴族達が知るわけもないのだ。
    街の社交界にすらデビューしていない娘をファーストネームだけで探せというのが無茶だ。

    いっそあの花畑を探させるか・・・

    しかしそれはためらわれた。あそこはジョルジェットにとって
    彼女だけの特別な場所なのだろうから。
    それに教えただけで分かるようなところでもない。

    まさにその花畑でジョルジェットは毎日レニエを待っていた。

    昼と夜の狭間。世界が黄金に輝く時。あれは逢魔が時が見せた幻であったのか?
    あの黄金の髪を持つ青年は夢だったのか。

    宿を尋ね歩いても彼の痕跡は見つからなかった。
    それもそのはず レニエは目立たぬようわざと町はずれの宿を取っていたのだから。
    彼の行動もほとんどが宮廷内。街中で彼を見知った者などいないだろう。
    ましてガルティエは偽名なのだから。

    “外国の方のようだった。わたしとのことは行きずりの遊びにすぎなかったのか・・・”

    深い闇に心が引きずりこまれそうだった。
    彼を信じたくても 思い当るのは逆のことばかり。
    上質な上着に高価な刺繍。自分などとは明らかに違う世界の方なのだろう。
    名前以外何も教えてはくれなかった。知り合って間もないのに唇を奪われてしまった。
    恋の駆け引きなど知らぬわたしはいい様に遊ばれていたのだろうか。

    運命などという言葉に浮かれ 舞い上がっていた自分がおろかだったのだろうか。

    それでも、神様。もう一度、もう一度、彼に会わせて下さい
    もう一度彼に会うことが出来るなら 絵筆を捨ててもかまいません!!

    レニエと出会った教会で祈りを捧げ その足であの花畑に向かう。

    もはや 期待はしてはいなかった。毎日これを繰り返すのは自分を納得させるため。

    もうすぐ 結婚するのだ。優しいウリアスさんはきっと自分と母を幸せにしてくださるだろう。

    そう思っても 一度知ってしまったこの胸の甘い苦しみは忘れることが出来ない。
    彼を忘れることが出来ない。
    ジョルジェットは人知れず彼を思って彼が座っていた場所に突っ伏して泣いていたのだ。

    (つづく)
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