羽と剣 <3>

    その日とても美しい公爵夫人が扇で口元を隠しながらこちらを見ていた。
    その視線だけで ヴィクトールは体の芯が熱くなってしまった。

    その視線から逃げるように 足早に通り過ぎようとしたヴィクトールの目の前に
    白い物が横切った。

    ひらひら彼の足もとに落ちたそれは 見事な金糸の刺繍の入ったハンカチであった。
    拾い上げると甘くクラクラするような それでいて思わず口づけてしまいたくなる 
    そんな香りがした。

    クックッと公爵夫人は笑って 扇の陰から言った。
    「あらあら 汚れてしまったわ。もちろん 洗って届けてくださいますわよね。
    それともこれから お詫びにお茶に付き合って下さる?」

    ヴィクトールにも意味が分かった。
    「申し訳ない。マダム。ハンカチは洗ってお届け致します。」
    深々とお辞儀をして逃げ出した。

    "自分には白ばらの君がいるのだから"

    ハンカチは綺麗に洗って花束と馬鹿丁寧な詫び状も添えて 公爵夫人に届けさせた。
    これで大丈夫だろうとヴィクトールは思っていた。彼はベルサイユをまだ知らなかった。

    この公爵夫人 その道では有名人だったのだ。
    公爵夫人は"初心な初物好き"で知られヴィクトールはまさにその好みにドンピシャだった。

    夫人の誘いをたいていの者は喜んで受ける。
    この公爵夫人の権力はかなりのものだからだ。
    それに夫人はかなりの美貌の持ち主で しかも床上手と噂されていた。
    男にとってこんな美味しい話はない。

    けれどヴィクトールはベルサイユに来たばかりで 夫人の権勢を知らなかった。
    ベルサイユのこうした"事情"も知らなかった。

    田舎で厳粛な修道士と女気のない独身のじいやに育てられたのだから。
    田舎の村では神の教えに従い 村人はお互いの伴侶を大切にしていた。
    そんな中でヴィクトールは 男女が想い合う美しい行為として性を捉えていたのだ。

    事態は思いがけず大きくなってしまった。
    侮辱されたと怒った公爵夫人がジェローデル家を潰しにかかるとまことしやかに囁かれ 
    長兄で跡取りのアルベールが任地から急きょ駆け付ける騒ぎになってしまったのだ。

    (つづく)
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    Re: 「天上の夫」拝読いたしました。

    初めてコメントを確認させていただいた時、

    茶の間でせんべい食べながら 
    「すごく 綺麗な女優さんだなぁ」
    と思ってTV見ていたら 
    玄関チャイムがなって 出てみると 
    なんとその女優さんが 立っていらしたくらいに 驚きました。

    慌ててそちらへ確認に行き、間違いじゃないことにさらに驚いたのです。
    と言いますのも 実は少し前からちょくちょくおじゃまして 
    作品を読ませていただいていたからなのです。

    まだ短編をいくつかと 長編を読み始めたくらいなのですが
    その文章から溢れる優しさや品の良さにただただ 感動しておりました。
    コメントを書くのは二次創作しているくせに苦手という変な奴なので
    拍手のみ 送らせていただいていました。
    これからも コメントは入れられないかもしれませんが 
    少しずつ作品を拝読させていただき
    拍手をお送りさせていただきたいと思っております。

    こちらの作品もと 言いたいところなのですが 
    なにせ やおいだ、3Pだ、
    あげく 世間で批判のあったジャルジェ夫妻の“お外で…”を
    池田理代子先生より先にやらかしているようなサイトなので…。 

    後味の悪い作品もあるかと思われますので
    お読みになる際はお気を付け下さい。
    少しでも嫌な感じがしましたら、お止めくださいね。

    過分なお褒めの言葉に 恐縮しております。
    例えていただいた 名作 タイトルこそ知っていたものの
    内容は知らず 検索しました。

    とても軽々しく 今度読んでみますね。
    なんて言えるようなものではなかったので
    さらに恐縮いたしました。

    こんな教養も品もないわたしですが
    書けるところまで書いてみようと思っています。

    コメントはこちらで大丈夫です。どの記事からでも
    内容にかかわらずお送りくださって構いません。

    そちらのサイトにお返事をとも考えましたが
    長文になってしまったため こちらでお返事させていただきました。

    コメント ありがとうございました。
    こちらをご紹介くださった方にも感謝しております。

    長文、失礼いたしました。
         
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    青林

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