羽と剣 <5>

    翌朝 ヴィクトールは鳥の声と剣の素振りの音で目が覚めた。
    窓から下を覗くと兄が剣の稽古をしていた。
    兄はすぐに弟に気づき声をかけた。

    「起きたのか 気持ちの良い朝だ。一緒にテラスで朝食を食べよう。」
    「はい 兄上」
    手早く返事をするとヴィクトールは慌てて中に引っ込んだ。
    正直ちょっと気まずい。昨日あんなに泣いてしまったのが。

    "困ったな どんな顔していけばいいんだ。"

    夕べは散々泣いて 泣き疲れていつの間にか 兄の胸の中で寝てしまったらしい。
    起きたらベッドの中だった。

    "でも なんだか すっきりしたな"

    腕をう~んと伸ばした。背筋がピンとする。そのままその腕を下してぶんぶん廻した。
    それから頬をペシペシ叩いて気合をいれた。

    ドアをノックする音がした。
    「はいれ」
    「失礼します。ヴィクトールさま。」
    じいやが着替えを持って入って来た。ここは本館の客間でヴィクトールの部屋ではない。
    別館の彼の部屋まで取りに行ってくれたのだろう。
    衣類を置いてまずは洗面器に水を注ぎ ヴィクトールの洗顔を手伝う。

    「じい その夕べなんだが・・・」
    「はい ヴィクトールさま」
    「わたしをここへ運んだのは?」
    「アルベールさまでございます。」
    「兄上が?」
    「はい ご自分でなさるとおっしゃられて」
    「そうか・・・」

    「よろしゅうございましたね。」
    じいやはにっこり微笑んだ。
    「な・・・なにがだ。」
    ヴィクトールは顔が赤くなりそうになった。

    "ばか 落ち着くんだ。冷静になれ!"

    そんな彼の心の叫びがじいやには聞こえたのか じいやは澄ましてこう言った。
    「わたくしが呼ばれました時には ヴィクトールさまはすっかりおやすみでございました。
    アルベールさまはご満足そうに"いい男に育ててくれたね"とわたくしを労ってくださいました。」
    「そうか」
    じいやはそっけない彼の返事と裏腹に まだ少年ぽさの残る頬が赤く染まるのを見て

    "わんわん泣いていたことは 内緒にしてあげますよ。"

    そう心の中で呟いた。

    (つづく)
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    Re: [天上の夫拝読いたしました。

    コメントありがとうございます。
    「羽と剣3」の記事のコメント欄に
    お返事をさせていただきました。
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