羽と剣 <6>

    テラスで朝食を取っていると 早朝にもかかわらず大股で無遠慮に近づいてくる男がいる。
    男はヴィクトールの皿からパンをひょいっと掴むと ちぎりもせず齧りついた。

    「ジルベール まずは帽子を脱いで着替えてからにしたらどうだ。」
    言いながらもアルベールは笑っている。
    「ヴィクトールが呆れているぞ。」
    「はい はい 兄上 その可愛いヴィクトール君の為に昼夜馬を乗り継いできたんです。
    大目にみてください。」
    言うや 今度はビンごとワインを飲んだ。

    アルベールは給仕係に朝食の追加を頼むと ジルベールのマントと上着を取って従者に渡した。
    「部屋の用意も頼む。どうせ これから昼まで寝込むだろうから」
    そう言い添えた。

    「ところで兄上 状況は?」
    「片付いた。でもおまえが来てくれて助かった。
    わたしは今日中に出発して艦に戻らなければならない。
    頼みたいこともある。いつまでいられる?」
    「上官に無理を言って 艦をおりたんです。三日が限界です。」
    「三日か・・・まあいい。出来るだけ頼む。詳しい事はおまえが寝て起きてからだ。」
    ヴィクトールはただただ 大人しくしていた。
    この次兄も自分のために遠い任地からきてくれたのだ。
    以前なら

    "フンッ頼んだ 憶えなんかないぞ"

    と反発するところだが 夕べ素直に泣いたせいか ジルベールがにっこり自分に微笑むと
    ちょっと恥ずかしくて下を向いた。

    朝食後、アルベールはいくつかの手紙の束と本を持ってきた。
    ヴィクトールが本のタイトルを眺めながら
    「ギリシャ神話・・・ホメロスか。こちらは古代ローマ・・・」
    そう呟くと
    「ほお・・・どのくらい知っている?」
    アルベールが訊いてきた。
    「はい 一通りは」
    パラパラめくりながらヴィクトールは答えた。
    他にも戯曲やら詩集やらあったが大抵は知っているものだった。
    「田舎にいても勉強だけでなく こういったものも学んでいたとは大したものだ。
    これなら話が早い。」
    そう言うとアルベールは手紙の束を開けて
    「ではこれから ベルサイユにおける 手紙の読み方と書き方を教えるよ。
    もちろん実践的で本音の部分のね。」
    アルベールは片目を瞑った。

    (つづく)
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