羽と剣 <9>

    走る馬車の窓からアルベールはジェローデル村を眺めていた。

    初めは一人だったはず いつの間にか隣にジルベールがいた。
    そしてある日赤ちゃんが来て三人になった。

    その赤ちゃんだったヴィクトールも最近おしゃべりして 自分達の後を追うようになった。
    ジルベールはめんどうくさそうにしていたが、アルベールは小さな手を精一杯伸ばして
    トコトコ付いてくるヴィクトールを可愛いと思った。

    "すぐにヴィクは大きくなる ぼくらと遊べるくらい。"

    村には子供が沢山いた。アルベールも時々村の子達と遊んだ。
    けれど大事な跡取り息子のアルベールはやはり特別扱いだった。
    アルベールはヴィクトールの成長を楽しみにしていた。
    二人で出来る遊びは限られている。三人ならきっといろんな事が出来ると。

    車窓のアルベールに気づいた村の子達が追いかけて来て声をかけた。
    「アルベールさま!」
    「止めてくれ」
    アルベールは馬車を止めさせた。

    息を整えながら一番年長の子が訊いた。
    「アルベールさま この大荷物 もしかして ベルサイユにお帰りですか?」
    「うん・・・」
    「こんなに急に」
    「父上の使いが来て 急に決まったんだ。お別れを言えなくてごめんね。」
    「そんな アルベールさま 謝られることはありません。」
    「これ みんなで食べて」
    アルベールは馬車の中にあった自分達のおやつを渡した。

    「屋敷にはヴィクトールがまだ残ってるんだ。仲良くしてあげてほしい。」
    「もちろんです。アルベールさま」
    お菓子を受け取りながら 少年は答えた。

    馬車はまた走り出した。
    手を振るアルベールに いつの間にか増えた大勢の子供達が両手を上げて応えてくれた。
    一緒の馬車に乗っていたジルベールも 何だか人気者になった気分で大きく手を振った。

    「あれ 兄上何で泣いてるの?」
    村が見えなくなって 馬車の車内に落ち着くとジルベールが尋ねた。
    「泣いてなんか いない。」
    「うそだ 泣いてるじゃないか」
    「ふんっ!」
    もう何も答えずアルベールは外を眺めた。

    ベルサイユに行けば自分はもう子供じゃいられない。そんな気がした。
    自分はジルベールやヴィクトールとは違う。跡取りなのだと。
    だから父上に呼ばれたのだ。これから立派な跡取りになるための勉強が始まる。

    "頑張らなければ・・・"

    自分には さっき手を振ってくれた子達を守る義務がある。領民を守る義務が。

    "泣いてなんかいられない。"

    そう思うけれど それがどういうことなのかよく分からない。不安だった。

    (つづく)
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