キスー3-

    時間が経つにつれて わたしはだんだん腹が立ってきた。
    なんだか アンドレにしてやられた気がする。アンドレだけが急に大人ぶってすまして

    そして ”オイテイカレタ” 気がした。

    わたしと一つしか違わないのに。なんだ。わたしだってあれくらいできるさ。

    そんな気持ちの時だった。
    「オスカル様 今までありがとうございました。」
    ソフィーが別れのあいさつをしにきた。
    ソフィーはわたし付きの侍女だったが 結婚が決まって家に帰るのだ。
    相手の顔は知らないという。よくある政略結婚だ。
    「しあわせになるんだよ」
    「はい・・・」
    わたしの前で頭を軽く下げて ソフィーはそう言ったきり動かなくなって 
    だんだん 小さく震え出した。
    「どうしたのだ。」
    わたしは驚いてその小さな肩に手を置いた。
    「オスカル様・・・」
    あげたソフィーの大きな目からは涙があふれていた。
    「あたし オスカル様をおしたいしておりました。」
    そういうと小さな体をぶつけるように抱きついてきた。
    「わかっています。オスカル様が女の方なのは。
    でもでもおしたいしております。 こんなに・・・」
    自分に縋りついて 泣いている小さなソフィー。どうしてあげる事もできないのか。
    わたしにつくしてくれた 可愛いソフィーに何かしてあげられる事はないのか・・・

    そうだ。

    わたしは そっとソフィーの顎を持ち上げた
    確かこうしてもう一つの手で 後頭部の下あたりをおさえてっと・・・
    わたしがこうしたしぐさをすると 驚いた事にソフィーは目を閉じて 
    わたしの方に唇をよせてきた。少しためらったが 
    これはソフィーも望んでいるのだと思い意を決した。
    頭の中であの時の事を反芻する。唇を重ねて するとソフィーはすこし口元を開いた。
    ぎょっとしたが舌先を入れてみると ソフィーは自分のそれをからめてきた。
    頭が大混乱したがここでうろたえたら 負けだ。
    アンドレの勝ち誇ったような 高笑いが聞こえてきそうではないか。
    なんとか平静をよそおって ソフィーの体を グイッと引き寄せ抱きしめた。

    「ああ・・・」

    なんだ なんだ今の声は。もう限界だ。これは本当にソフィーの声だったのか。
    ふと体を離すと今度はソフィーの方から背のびをして 
    わたしの首に腕をまきつけ  キスをうばっていった。 
    「ありがとうございました。オスカル様。一生忘れません。」
    ソフィーははれやかな顔でほほえんだ。
    「うん わたしも忘れないよ。」
    わたしは名残おしそうに去っていくソフィーに手を振りながら 心から幸せを祈った。

    「どうだ。アンドレ。」
    わたしは胸をはってアンドレの前に立った。
    「わたしのキスは一人の少女を救ったぞ。」
    さあ負けを認めろ。アンドレ。
    「うん。見ていたよ。ソフィー すごく喜んでいたね。よかったじゃないか。」
    アンドレは低い声でこちらに背を向けて言った。

    なんだよ その態度は

    わたしはひどく不安になった。いつもみたいに 軽口の一つも言ってくれよ。
    怒ってくれたっていい。頼むからこっちをむけよ。
    そのままアンドレはわたしを見る事なく 部屋から出て行ってしまった。

    部屋を出てからアンドレは知らず知らず 大股に乱暴にイライラ歩いていたが
    しだいに小走りになり 屋敷の外に出てからは全速力になった。
    なににいらついているのか どこへ行こうというのか。
    気がついたら初めてキスをしたあの場所にきていた。
    地面に転がって腕を頭の後ろに組んで 空を見上げた。
    穏やかな空にいくつか雲が浮かんでいて 爽やかな風が吹いている。
    何も考えたくないのに 考えないようにしているのに勝手に言葉をつくっていた。
    なぜ いつも いつまでも あいつはけんかごしなんだ。
    そして どうしておれはこんなにガキなんだ。
    あの日おれはありったけの勇気をふりしぼって あいつにくちづけしたのに。
    震えているのを気づかれないだろうか。
    拒絶されたりしないだろうかと 不安でいっぱいだった。
    あいつは目もつむってくれなかった。でも言い出した以上 後には引けない。
    青いサファイヤの瞳がおれのよこしまな心を見透かしているようだった。
    おれの方が目を閉じて唇を重ねると後は夢中だった。
    夢中すぎてあいつをあやうく 窒息死させてしまいそうだった。
    それでもあいつはおれの腕の中でうっとりとしている。



    ”これで おれの気持ちに気づいてくれた?”

    あいつはみるみる 泣き出してしまった。
    後から後から涙があふれて おれのシャツにしみ込んだ。
    ひんやりしたその感触は罪のシミのように おれには感じられた。苦し紛れに 
    「ほら、これが大人のキスだ。」
    と強がってみた。
    けれどやっぱりいけないことをしてしまったと思った。
    「こわかったのか。ごめん。」
    泣きそうになってしまった。
    「こわくなんかあるもんか」
    次の瞬間 おれは思い切りつきとばされた。
    あいつの力強い声におれは救われた。
    負けん気な顔をしておれを睨んでいる。
    ああ きっと なんにもわかってないんだ。こいつは。
    そう思うと自分の必死さがまぬけすぎて おかしかった 
    おれが笑うとあいつも微笑んだ。
    そして 二人同時に声をあげて笑った。胸の涙のシミは乾き始めていた。
    スポンサーサイト
    sidetitle最新記事sidetitle
    sidetitleプロフィールsidetitle

    青林

    Author:青林
    ”ベルサイユのばら”の二次創作サイトを作っています。ぜひ遊びに来て下さいね。

    青林サイトへ

    ただいま、コメントへのお返事は基本的にはしておりませんが、頂いたコメントは大切に読ませていただいています。ありがとうございます。

    sidetitleカレンダーsidetitle
    10 | 2017/11 | 12
    - - - 1 2 3 4
    5 6 7 8 9 10 11
    12 13 14 15 16 17 18
    19 20 21 22 23 24 25
    26 27 28 29 30 - -
    sidetitleカテゴリsidetitle
    sidetitleリンクsidetitle
    sidetitle月別アーカイブsidetitle
    sidetitle検索フォームsidetitle
    sidetitleQRコードsidetitle
    QR