キスー4-

    どこからか 風にのって花の香りがした。
    さっきのあいつの 勝ち誇ったような顔が浮かんできた。
    あいつ 何のつもりだ。
    まさか キスまでおれと争うつもりなのか。
    ばかげている。まさかそのうち 女の子を連れてきてキスさせられて
    どっちがよかったか 判定してもらうなんてことしないよな。
    はは まさかな。
    いや やりかねないなあいつなら。

    どうしたいんだろう。おれは。
    さっき ソフィーにキスしているあいつにむしょうに腹がたった。
    こばかにされている気がした。
    あいつにそんな気がないのはわかっている。
    無邪気で負けず嫌いなだけなんだ。
    それにおれの気もちが伝わってもどうなるというんだ。
    伯爵家の跡取り娘と使用人。所詮どうなるものでもないさ。

    むしろ 伝わらなくて良かったんだ。 なんだかこれで良かったそう素直に思えた。

    弾みをつけて起き上がると 思い切り伸びをした。
    息を思い切り吸い込んで吐き出した 心のもやもやを全て出し切るように。
    苦しくなってもまだ吐いた 吐いて 吐いて 吐き切ったら
    新緑の爽やか空気が胸に自然に吸い込まれた。

    屋敷に戻るととオスカルを探した。
    なにやら重そうなバスケットを抱えて 廊下をうろうろしていた。
    すぐに声をかけるのがもったいなくて しばらく見ていた。
    おリボンアンドレ

    可愛いと思った。だれを探しているのか バスケットが何のためかわかっていたから。
    こんなに想われているのに おれは何をすねているのだろう。

    おれに気づいてオスカルが声をかける。
    「ほら おまえの好物ばかりだぞ。一緒に食べよう。」
    昔と変わらぬ得意顔でおれを呼ぶ。
    「早く 来ないとやらないぞ。」
    おいおいおれをいくつだと思ってんだ。まだまだ食べ物でつられるとでも。
    それでもおれは駆けて行った。こんな時のおれの顔も昔のままかもしれないな

    空は満天の星。
    おれの腕の中でオスカルはそしらぬ顔して 寝たふりしている。
    初めてのキスから20年近い時が流れていた。
    あれからおれ達は時々キスをするようになった。
    おれはもちろん 恋愛感情ばりばりなのだが過去の苦い経験から
    素知らぬ顔して あまり熱くならないように気をつけている。

    オスカルにはおれとのキスは ロザリーやソフィーにしてあげるのと変わらない感覚なのだろう。
    犬や花にくちづけするのとも変わらないくらいかもしれない。
    彼女らとおれの違いはオスカルが彼女達にしてあげるのに対して おれにはおねだりしてくるのだ。
    もちろん オスカルはキスしてなんて言わない。
    体を少し摺り寄せて上目使いをしたら まず間違いない。
    首に手をかけたら濃厚にしてのサイン。体を少し押し返して来たらもうやめろのサイン。
    特に忙しく働いているおれの背中に抱きついてきた時は 
    なにがなんでも最優先でお相手してあげないといけない。
    そして 寝たふりしている時はおれの好きにしていいサイン。ただし 起きたら終わり。

    フェルゼンに恋しているのは 知っている。それが叶わないことも。
    だから、オスカルはおれのくちづけにフェルゼンを重ねているかもしれない。
    おれの腕の中で 今もフェルゼンに抱かれているつもりかも。
    それでもいいさ しょせんおれは叶わぬ恋。
    いつか本当の恋人が現れるまでの疑似恋愛

    フェルゼンはオスカルには靡かない。
    オスカルがフェルゼンを 好きでいる間はまだ大丈夫。
    おれはオスカルの要求を受け入れ癒す。
    けれど おれの気持ちはいったいどうしたらいいんだ。
    日に日に大きくなる この想い  キスだけじゃなく もっと先に進みたい。
    まだ見ぬだれかの 代わりではなく  おれ自身を 見てほしい。
    過ぎた望みなのだ。
    いつかは疑似恋愛は終わる。その日がきたらどうなってしまうのか。
    おれは段々自信がなくなってきている。

    腕に冷たいものが流れてきた。 泣いているのか オスカル。
    そうだな おれはやっぱりいい年になっても子供みたいだ。
    自分のために おまえが片思いのままがいいなんて思うなんて。
    おまえはこんなに苦しんでいるのに。 いくつになっても 情けない。

    情けないついでに腕がしびれてきた。
    一度どこかにオスカルを下ろして休むか。
    「おい 本当に朝まで歩くつもりなのか。おまえは」
    オスカルがいたずらな目でおれを見上げている。
    「サイフがなくても屋敷に着いてから払えばいいだろう」
      ・・・そうですよね。
    ますます情けない気がしてきた辻馬車をひろって乗り込む。
    オスカルが肩に頭をのせた。まだ大丈夫。

    きっとまだ 大丈夫。
    おれは気のいい幼馴染をつづけられるさ。

    FIN

    キスは今回で終了です。お読み頂きありがとうございました。
    次回は ”わたしの気持ち” をお送りします。
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    青林

    Author:青林
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