兄上<2>

    その後もアンドレはベルサイユ宮殿に通った。
    オスカルの後ろに付き従い アントワネットさまにもお目通りした。
    アントワネットさまは気さくな方で
    アンドレにも何のためらいもなく普通にお話してくださった。

    彼女は王太子の弟のアルトワ伯やプロヴァンス伯ときゃっきゃっと走り回って 
    しょっちゅう ノアイユ伯夫人に叱られていた。

    その日もアントワネットさまは おつきの目を盗んで宮殿内を駆け回っていた。
    その後ろをオスカルと追いかけながら アンドレは誰かの視線を感じた。

    見れば王太子がこちらを見ている。アンドレは礼を取るべきか迷った。
    距離がありすぎるからだ。

    そうこうしているうち もうアントワネットさまは走り出していた。
    アンドレも急いで追いかけたが 彼は扉番のいる扉の前で立ち止まった。
    扉番はじろりとアンドレを見つめる。
    アンドレが止まったのを見てオスカルは振り返った。そして頷いた。

    ベルサイユ宮殿は誰でも入れる場所と 許可を得た特別な人間だけが入れる場所がある。
    平民のアンドレでは入れない場所も多いのだ。
    こういうとき アンドレは先を行くオスカルの背中を寂しく見送って
    行先を予測し 別の道から合流する方法を考える。

    「来たまえ。アンドレ」
    ふいに 声がした。王太子がいつのまにか傍にいらしていた。
    慌てて平身する彼を王太子は起こし その手を取った。
    一瞬王太子の顔が綻んだように見えた。アンドレの手を引いて王太子は走りだした。

    「オスカルのところへいきたいのだろう。」
    アンドレは何がなんだかわからなかった。
    アントワネットさまは走ってくる王太子を見ると嬉しそうに笑った。
    「まあ 王太子さま。一緒に遊んでくださるの。」
    そう言われて 王太子は”えっ”という顔をしたが
    「そうだね。そうしようか。」
    はにかみながら答えた。

    オスカルは王太子の横に立つアンドレに
    「おいっだめだろ。」
    と小声でたしなめたが 王太子がそれを制した。
    「オスカル。わたしが許可した。これからはわたしの友として宮廷への出入りを許そう。」
    居合わせた人々は皆驚いたが 一番驚いたのは当のアンドレだ。

    「アンドレ。王太子さまにお礼を。」
    オスカルにたされるまで アンドレはボウッとしてしまったくらいだ。
    「ありがたき 幸せにございます。」
    うわずりながら やっとアンドレは返事をした。
    「きゃあ 素敵ね。これからはどこへも一緒にいけるわね。アンドレ。」
    無邪気なアントワネットさまのはしゃいだ声が場の空気を和ませる。
    王太子はそんなアントワネットさまをまぶしそうに見ていた。

    "どうして おれを・・・"

    アンドレは聞きたかったが 王太子に質問するのはためらわれた。
    そのまま王太子は珍しくアントワネットさまと楽しく遊ばれた。
    アンドレは王太子と話す機会にめぐまれないまま帰宅した。

    (つづく)
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