わたしの気持ちー5-

    衛兵隊での勤務は苦難の連続だった。しかしわたし達は隊員達の信頼を勝ち取れた。
    アンドレのサポートのおかげだ。衛兵隊の職場の改善もずいぶん進んだ。
    アンドレの能力の高さは驚くべきものだった。
    実際わたしより彼の方が隊員達のいやがらせは多かったのだろうが 
    彼はしっかり隊員達と打ち解けていった。
    そして彼と二人で困難を乗り越える度 わたしの心は充実感に満たされ 
    アンドレがいれば何でも出来るそう感じていた。

    やがて衛兵隊の勤務も軌道に乗り始め 仕事に対するやりがいと自信も付いてきた。
    何よりアンドレと同じ職場で仕事をこなせるのが楽しかった。
    近衛の時よりずっと仕事が面白かった。

    ただ精神的な信頼関係は深まった気がしたが アンドレは"キス"も"ハグ"もしなかった。

    ”別にいいのにやせ我慢しなくても”。

    アンドレがわたしを愛してくれているのは以前から知っていた。それはさして問題ではなかった。
    アンドレはいずれジャルジェ家の執事になるのだ。それは本人も周りも認めていること。
    そしてわたしは次代ジャルジェ家当主だ。執事が主人を大切に思うのは当然のこと。
    たまたま私が女だったから その気持ちに恋愛感情が混ざったとしても仕方ない。
    一生を私に捧げてくれているアンドレに 
    こっそり少しくらいキスを許してやっても良いと思っている。
    (もちろん これは公けには許されない事だが)
    "アノトキ"みたいのはさすがに困るが 以前の時くらいのなら大丈夫だ。
    わたしは手が出しやすいように 肩に凭れ掛かったり 胸にそっと寄り掛かったりした。
    彼は振り払ったりはしなかった。時間が経てば また前に戻れると思っていた。

    その日 帰宅すると玄関で ばあやが泣いていた。
    「だ…だんなさまが…だんなさまが…オスカルさまに結婚を…結婚を…あ…」
    何を言われたのか 一瞬理解に苦しんだ。後ろで大きな音がした。
    振り返るとアンドレが青い顔をしてわたしを見ている。彼は走り去ってしまった。

    その日からまた何かがが狂ってしまった。アンドレはわたしを避けるようになった。
    そしておよそ彼らしくない行動に出るようになった。
    せっかく積み上げてきた 衛兵隊の仕事もぎくしゃくし始めた。

    屋敷でも彼の荒れようは目にあまった。
    一度などジェローデルにショコラをぶっかけた事もあった。
    詫びるわたしにジェローデルは
    「良いのですよ。マドモアゼル 」
    と笑っていたが
    「借りは つくらん!!」
    と怒鳴ってやって 全部無理やり弁償してやった。内心は"よくやったアンドレ"と思っていたのだ。
    ジェローデルにはわたしも心底迷惑していた。ジェローデルのせいで何もかめちゃくちゃだ。
    父上が求婚者などと認めるものだから 図にのって毎日のようにやってくる。
    夜のミーティングもなくなってしまった。せっかくアンドレと上手くいきかけていたのに。
    ジェローデルは何をやってもあきらめてくれない。

    そんな時アンドレの背中を見つけたら切なくなった。

    "どうしてたすけてくれないのだ?"

    いつもどんな時もわたしを助けてくれたのに アンドレはこの件については何にもしてくれない。

    "わたしがジェローデルのものになってもいいのか"

    気が付いたらわたしは彼の背中にすがり付いていた。
    彼は少し首を回してわたしをちらっと見てすぐにまた前を向いて そして歌を歌ってくれた。
    以前なら抱きしめてくれたのにとうらめしくなった。懐かしいその歌の調べにわたしは目を閉じた。
    彼の歌声が背中から直接わたしの体に中に流れ込んでくるようだ。
    そして彼はわたしが眠ってしまうまで歌ってくれた。
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