袖すり合うも多生の縁<13>

    土煙が収まると バルコニーは無残に三分の一程崩れているのが分かった。
    その崩れた部分にいたのは アントワネットと王太子ヨーゼフであったが 
    ヨーゼフは自力で這い上がり なんとか掠り傷で済んだ。

    被害が大きかったのは むしろ下で見ていた人達だった。
    真下でガードに当たっていた兵士の何人かと 
    飛んできたがれきが当たった数人の一般人が亡くなった。
    怪我人は 逃げる際の混乱で転倒したり 
    押されたりして怪我をした者も含め二百数十人に上った。

    後から分かった事だが バルコニーの礎石の中に火薬が埋め込まれていた。
    おそらく式典の為に バルコニーの修繕をした業者の中にテロリストの仲間がいたらしい。
    表からは全く見えないため 警護の者も発見できなかったのだ。

    しかしながら これだけ大掛かりなことを監視の目を盗んで 
    短時間で行うのはやはり無理があったのだろう。実際に爆発したのは十分の一に過ぎなかった。
    もし全部の火薬が爆発していたら王族のみならず 来賓も 警護の者も 
    お祝いに駆け付けた群衆も 何千単位で被害が出ていただろう。

    怪我人や死亡者の中にアントワネットがいなかったことは 
    オスカルをひとまずほっとはさせたが 姫の無事な姿を見るまでは安心は出来ない。
    オスカルはすぐさま 周辺の捜索を指示した。

    「アントワネット様!」
    「アントワネット様! どちらにおいでですか?」

    自分を呼ぶ 大勢の声にアントワネットは はっとした。
    「いけない フェルゼン こんなところを見つかっては」
    フェルゼンの腕を出ようとする アントワネットをフェルゼンは引き戻した。
    「このまま あなたをさらってしまいたい」
    その言葉は アントワネットの心に深く響いた。
    けれど 彼女の心は 凛としていた。
    「いけません。そんなことをしては。
    お約束します。わたくしはもうあなた以外を愛したりしません」
    その王女たる威厳に気押され フェルゼンの腕が緩んだすきに 彼女は走り出した。
    「心配をかけましたね。わたしはここです。」
    大勢の警護に囲まれて遠ざかる 愛しい人をフェルゼンはただ見送った。
    心では先ほどの彼女の言葉がリプレイしていた。

    オスカルとアンドレは この後も事故処理にてんやわんやした。
    その日は王宮に留まり ようやく 体を休めることが許されたのは 翌日の夕方であった。

    屋敷に着くと アンドレはオスカルだけを車から降ろした。
    「おれ ちょっとベルナールの様子をみてくるよ。」
    「なら わたしも」
    「ダメだ。おまえは早く寝ろ。疲れているだろ」
    「おまえだって同じじゃないか」
    「基礎体力が違うんだよ。おれは二晩くらい徹夜してもなんともないんだ」
    でも…と まだ言いたげなオスカルを残して アンドレは車を発進してしまった。

    それを見送り オスカルは確かに自分が疲れていることを感じていた。
    体だけではない。警備担当の一人として 
    死者を出すような大惨事を招いてしまったことに深く傷ついていた。

    こんな状態であの事件の怪我人が沢山いるところに行けばどうなるか
    アンドレは分かっていてオスカルを置いて行った。
    しかも黙って行くと オスカルが隠し事をしていると嫌がるのがわかっているので 
    あえてきちんと行先を告げたのだ。

    (つづく)
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