袖すり合うも多生の縁<15>

    フランスで大変大きなテロ事件が発生しました。
    当ブログで連載中の作品には テロ行為が出ていますが
    内容がテロを美化するものではないということと
    過剰に反応しないということが テロに屈しないという事につながると考えますので 
    このまま連載を続けさせていただきます。

    犠牲者の方々のご冥福をお祈りするとともに
    人類が互いを傷つけあうような 愚かな行為を止める時が
    一秒でも早くおとずれるよう願っています。




    病院は満床状態であった。
    ベルナールの部屋を探しながら歩いていると 向こうから見慣れた人影が走ってきた。
    下を向いているので アンドレに気付いていないようだ。
    アンドレは小声でも届くくらいに近づいてから 声をかけた。
    「ロザリー」
    けれどロザリーは彼の横を通りぬけようとした。

    そのただならぬ様子にアンドレは彼女の腕を掴んだ。
    「どうした?ベルナールになにかあったのか?」
    ロザリーは溢れだした涙で波立つ大きな目をアンドレに向けた。

    そしてその目を閉じて 床に座り込んでしまった。アンドレの胸に恐ろしい予感が走る。
    「おいで ロザリーここではジャマになるから」
    アンドレは彼女を担ぐように 元来た道を引き返した。

    とりあえず 車に乗せ 薄手のタオルをロザリーに手渡した。
    「鼻かんでいいからね…」
    「ありがとう」
    そういうと ロザリーは本当に チーンと鼻をかんだ。

    車を発進させ川べりの人気のない場所まで走った。
    車を止めると 後部座席のクーラーボックスから 
    冷たいジュースとアイスコーヒーの缶を取り出し、
    ジュースを彼女に渡して、自分はコーヒーを開けた。

    暫くロザリーは泣きじゃくっていた。
    アンドレは何も言わず 組んだ腕をハンドルに預け 秋の虫の声に耳を傾けていた。

    「ごめんなさい アンドレ」
    ぽつり ぽつり ロザリーが話し始めた。
    「別にね ベルナールが死んじゃったわけじゃないのよ」
    この言葉に アンドレはほっと息を付いた。

    「あ…あのね… わたし…」
    アンドレがロザリーを見る。
    「わたし ベルナールが怪我をしたって聞いて 急いで駆け付けたの。
    怖かった 本当に怖かった。運ばれてくる人の中には
    もう死んじゃってるんじゃないかってくらい 血まみれの人もいたし」

    アンドレはロザリーの手からジュース缶を取ると フタを開けて彼女に返した。
    「ありがとう」
    それを一口飲んで ロザリーは続けた。
    「やっとの想いでベルナールを見つけると 彼は全身包帯にまかれて 意識がなかった。
    顔にも大きな絆創膏が貼られていたわ。
    わたしは 彼の横でどうすることも出来なくて 
    ただ ただ 一晩中、座り込んでいるしかなかった。

    ずっと気を失ったかのように眠っていたベルナールが『うっ』と苦しそうな声を出したから、
    目が覚めたのかと彼の顔を覗き込んで 彼の手を握ったの。
    そしたら うっすら目が開いて…」
    ロザリーは片手を上げて 口元を押さえた。 呼吸を整えるように手を胸に当てる。

    「その時ね、ベルナールがとっても優しい顔で微笑んで
    『母さん、迎えにきてくれたの?でも おれまだ逝きたくないんだ。好きな子がいるんだ。
    その子はおれじゃない 別なやつが好きなんだけどね。
    それでもいろいろ世話をしてくれるんだ。
    その子におれの気持ちとお礼を言ってからでないと…』
    そう言ってわたしの手を握りながら また、眠ってしまったわ。」

    ロザリーの涙は止まって かわりにいつも年より幼く見えるその顔に 
    深い懺悔の表情が表れた。

    それは とても 美しかった。

    「わたしは 酷い女だわ。ずっとベルナールをいい様に利用したのよ。
    彼がわたしに好意を持ってくれているのをわかっていて 答えをはぐらかして じらして 
    自分が都合のいい様に甘えられる状況をつくろうとしていた。」

    彼女の止まっていた涙が またツーっと一筋 頬を伝った。
    「あんなに 優しい彼を いつまでも利用し続けるために 
    自分に夢中になるように振る舞っていたのよ。
    いつわりの優しさで 彼の世話をして 彼の好物を作り続けて…」

    ロザリーの顔に怒りの表情が浮かぶ。
    「お礼なんか 言ってもらえるような人間じゃないのよ。彼の傍にいて良いわけない。
    わたしなんか わたしなんか 最低だわ!!!」

    両手で持ったタオルの中に顔を隠すと ロザリーは声を上げて泣き出した。
    アンドレはその肩を引き寄せ 自分にもたれ掛けさせた。

    (つづく)
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