袖すり合うも多生の縁<16>

    「ロザリー おれはビートルズが好きなんだけどね。テイラー・スウィフトも好きなんだ。」
    何の話?ロザリーはアンドレの肩に頭を預けて静かに聞いた。

    「『ラブストーリー』のPVを見た時は もう感情移入しちゃって わんわん泣いちゃったよ」
    ロザリーはクスッと笑った。アンドレならいかにもありそう。その光景は簡単に想像できた。
    「わたしもそれ知ってる。 ロミオとジュリエットをなぞらえたのでしょう。
    そう言えばどことなく雰囲気があなたとオスカルさまみたいね。」

    「ロザリー おれは君が好きだよ。酷い女なんて思えない。」
    ピクリ・・・とロザリーが何か言いかけたが言わせず 彼女の肩を強く抱いて言葉を続けた。

    「ベルナールも アランも 好きだ。みんな みんな 好きだ。」
    そして 静かに囁くように言った。

    「そして オスカルに対する想いは その好きとは違う。」

    ロザリーが目を閉じる。
    「わたしもそう オスカルさまは特別…」

    「違うよ。ロザリー それは本当の恋じゃない」
    それまで凭れ掛かっていたロザリーが 勢いよく体を起こして抗議した。
    「あなたに 何が分かるのよ!わたしの想いは本物よ!」
    「いや、違う。じゃあ 何故 おれに『オスカルさまは無事なの?』って聞かないんだい?」

    はっとロザリーの目が大きくなる。
    「それは…」
    「それは ただの好きだからさ。王宮で まして王族を狙ったテロなら 
    オスカルの安否が真っ先に気になるはずじゃないか」
    アンドレの声は静かで優しい。
    「けれど それどころじゃなかったんだろ。
    君の 君の特別なベルナールが大けがをしていたんだから」

    ロザリーは何も言えないでいる。確かに今の今まで そのことに思い当らなかった。
    「好きなものは沢山あったっていいんだよ。むしろその方が人生が楽しいじゃないか。」

    ロザリーの頭をよしよし 撫でて
    「いい加減 気づけよ。本当の恋に。
    そんなに沢山泣いて 一晩中寝ないで付き添う相手が 特別じゃないのかい?」
    「でも わたし いまさら どんな顔して…
    今まで散々 オスカルさま オスカルさまって 追いかけて そんな急に心変わりなんて…」
    「心変わりじゃないさ 沢山の好きの一番がオスカルなんだよ。
    けれど ベルナールと 一緒にいるうちに 
    だんだん 彼のことは"誰とも比べることが出来ない好き"になったんだ。」
    「誰とも比べることが出来ない好き?」
    「そう 本当の恋だよ。」

    ロザリーは不思議な既視感を感じた。
    前にも こんな優しい人が 自分に言ってくれたことがあるような気がする。

    "そして いつか だれかほかの男と ほんとうの恋をして…"

    その人もアンドレみたいに 大きくて温かい人だった気がする。

    「ロザリー 病院に戻ろう。ベルナールが起きた時 真っ先に会いたいのは君だからね。」
    「うーん でも気まずいわ」
    「簡単だよ。彼にキスして 
    『心が張り裂けるくらい 心配したんだから!』って言ってやればいい。
    それから ずっと彼が欲しかった言葉をかけてやってほしい」
    ロザリーの顔がみるみる赤くなる。

    それを笑ってはいけないと思うのだが つい口の端があがってしまう。
    「行くよ ロザリー シートベルトを締めて」
    エンジンを回して ギアを入れる。車が静かに動き出す。
    カーステレオのスイッチを入れると 
    テイラー・スウィフトの『シェイク・イット・オフ』が流れた。

    (つづく)
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