袖すり合うも多生の縁<28>

    こんな調子でオスカルは色々アプローチしてみたが 
    アンドレはちっとも自分に女を感じてくれない。
    いままでの付き合いが二人の間を"兄妹"として固定してしまったようだ。
    オスカルは決心した。このままではいけない。少し離れてみようと。

    それは危険な賭けであった。
    傍を離れているうちに 誰かほかの女の子がアンドレと仲良くなってしまうかもしれないのだ。
    けれど いつまでも妹では嫌だ。少し離れて暮らそう。
    そして女を磨いて アンドレの目を自分に向けさせるのだ。

    名付けて"久しぶりに会ったら きれいになったな"作戦。

    「オスカル おまえ スイスに行くのか?」
    進路希望の紙を記入しながら、アンドレは驚いた声を出した。
    「ああ こう見えてもぼくは お嬢様なのだぞ そろそろ お嬢様らしくせんとな」
    「そうか…」
    アンドレは少し暗い顔をした。

    "おっ 早くも効果がでたか!"

    ちょっと 嬉しい。だが
    「そうだな そのままじゃ 嫁にいけないだろうからな」
    ははは…とアンドレが笑ったので 
    「余計なお世話だ!」
    そう怒鳴ってしまった。

    スイスの高等科に進んだオスカルだが 
    アンドレを寂しがらせるつもりが 自分が寂しくなってしまった。
    不安でもあった。それでも我慢した。ここで あいつに自分から泣き付くわけにはいかない。

    アンドレはジャルジェ家から通える進学校に進んだ。将来大学に行きたいと考えているからだ。
    男子校なので 幾分か安心してはいるのだが。

    それにしても もう2ヶ月近く経つのに何も言ってこない。もう限界だ。
    我が国では万聖節の休暇に入っている頃のはずだ。こちらに呼びつけてやる。
    イライラして携帯電話をかけてみた。

    トゥルル…
    「オスカルか!」
    電話に出るなり アンドレは嬉しそうな声を上げた。
    その声を聞くとオスカルは胸が詰まってしまった。今すぐ会いたい!

    「どうした?何故、黙ってるんだ?」
    なにも言わないオスカルを心配してアンドレが声をかける。
    「別に… 」
    グスン… つい涙が零れてしまう。
    「何かあったのか?」
    「何もないが おまえの声を聞いたら つい…」
    「オスカル…」
    「おまえは元気だったか?」
    「ああ おれは大丈夫だ。それより 本当に何もないのか?」
    「うん。ぼくも大丈夫だ」
    「本当に?」
    「ああ」
    懐かしいアンドレの声 まだ2ヶ月も経っていないのに。

    ―アンドレ!ちょっと

    ふいに電話の向こうで 女の声がした。
    「ああ 今行くよ」
    アンドレが通話口を手でふさいで答えていたが 
    慌てているのか ずれていたようで丸聞こえだ。
    「ちっ こんな時に」
    そういう舌打ちまで聞こえてしまった。

    「わるい オスカル 今忙しくて 声が聞けて嬉しかったよ。じゃ 切るな」
    「あ…」
    切れてしまった電話。知らない女の声。

    "ちっ こんな時に"

    それって 今電話しちゃいけなかったってことなのか?
    彼女のいる前で ほかの女からの電話は迷惑ということなのか!

    うわぁぁぁぁぁ!!!!!

    大変だ!すぐに帰国しないと!
    ぼくがいない間に アンドレを取られてしまった!
    いくら男子校でも 学校に監禁されているわけじゃない。
    女の子と知り合うチャンスなんかいくらでもある。

    オスカルがパニックになっていると 目の端にアンドレの姿が映った。
    慌ててそちらを見ると 点けっぱなしになっていたTVに
    なんとアンドレが映っているではないか?!

    「なんで?」

    どうやら ジャポンの災害にヨーロッパの青年たちが
    ボランティアに行っているというニュースらしい。
    インタビューを受けている少年の後ろで アンドレはせっせとパンを配っていた。

    「本当に忙しそうだ。」
    へなへなその場にへたり込んで 笑顔でパンを配るアンドレを見つめた。
    元気そうだった。相変わらず 憎らしいくらい爽やかな笑顔だ。
    短いニュースは終わり次のニュースにかわってしまった。

    "はっ しまった! 録画しとけば良かった"

    その日オスカルはニュース番組を片っ端から見て 
    ついにアンドレの映像を録画することに成功した。
    後でわかった事だがこの時インタビューを受けていた少年がベルナールで 
    アンドレの横で一緒にパンを配っていたのが アランだったのだ。

    (つづく)
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