袖すり合うも多生の縁<31>
次のクリスマス休暇の時。
アンドレは空港までオスカルを迎えに行きたかったが
またもや 慈善事業に駆り出されていた。
各地の孤児院や障害児施設をサンタの格好をして
毎日のように善意の贈り物を届けていたのだ。
ジャルジェ家のお屋敷は広い。同じ屋敷内で寝泊まりしていても
使用人棟のアンドレと母屋のオスカルとでは なかなか顔を会すことが出来なかった。
クリスマス・イブも アンドレは出かけなければならなかった。
行きたくなかったが自分だけ抜ける訳にもいかない。
せっかくオスカルが戻っているというのに!
アンドレが屋敷に戻った時にはもう10時を回っていた。
"あと少しでクリスマス・イブも終わりか…"
オスカルと出会ってから 毎年 欠かさず贈り物を交換してきた。
それが今年は出来そうもない。
暗い気持ちで階段を上る。使用人棟は静まり返っている。
みんなクリスマスのミサに出かけているのだろう。アンドレも着替えていくつもりだ。
階段を上がりきると 自分の部屋から灯りが漏れているのが見えた。
急いで部屋に駆け込む。
「お帰りアンドレ」
そこには天使が いや天使と見間違うほど美しいオスカルがいた。
危うく 抱きしめてしまいそうになるのを 必死でこらえた。
「皆とミサに 行かなかったのか?」
「もちろん これから 行く。でもその前に おまえにクリスマスの贈り物がしたかった」
そう言うと オスカルは小さなプレゼントを出した。
「良かった。おれも渡したいものがあるんだ」
アンドレもまた プレゼントを差し出す。
そして 恒例の掛け声をかける
「せーの!」
8歳の頃から始まった習慣
初めてクリスマスを迎えた時 どちらが先にプレゼントを開けるか揉めたのだ。
結局掛け声をかけて同時に開けることにした。以来毎年そうしている。
「あはっ こういうの欲しかったんだ」
アンドレが嬉しそうにオスカルのくれた時計を腕に当てた。
ワールドタイムの付いたスイスの時計である。黒革のベルトに大きめの文字盤がついている。
「気に入ってもらえて良かった。最近人気が出てきた時計技師の作品なんだが
おまえに似合いそうだと思ったから」
さっそくアンドレは腕にはめてみた。彼の長い腕にしっくりなじむ。
オスカルの貰ったのは 蒔絵を施したペンだった。
黒い漆塗りに黄金に輝く月と美しい桜の花と花びらが散りばめられている。
「ジャポンに行った時買ったんだ」
オスカルも試し書きをしてみる。滑るようにペン先が動きしっくり手になじむ。
「ありがとうアンドレ」
オスカルは愛おしそうにそれを胸に抱いた。
その仕草が 何故かとても女性らしくてアンドレはドキドキした。
「さあ もう行こう。ミサが終わってしまうぞ。着替えるから出てくれないか」
オスカルを外に出して アンドレは急いで支度をする。
(つづく)
アンドレは空港までオスカルを迎えに行きたかったが
またもや 慈善事業に駆り出されていた。
各地の孤児院や障害児施設をサンタの格好をして
毎日のように善意の贈り物を届けていたのだ。
ジャルジェ家のお屋敷は広い。同じ屋敷内で寝泊まりしていても
使用人棟のアンドレと母屋のオスカルとでは なかなか顔を会すことが出来なかった。
クリスマス・イブも アンドレは出かけなければならなかった。
行きたくなかったが自分だけ抜ける訳にもいかない。
せっかくオスカルが戻っているというのに!
アンドレが屋敷に戻った時にはもう10時を回っていた。
"あと少しでクリスマス・イブも終わりか…"
オスカルと出会ってから 毎年 欠かさず贈り物を交換してきた。
それが今年は出来そうもない。
暗い気持ちで階段を上る。使用人棟は静まり返っている。
みんなクリスマスのミサに出かけているのだろう。アンドレも着替えていくつもりだ。
階段を上がりきると 自分の部屋から灯りが漏れているのが見えた。
急いで部屋に駆け込む。
「お帰りアンドレ」
そこには天使が いや天使と見間違うほど美しいオスカルがいた。
危うく 抱きしめてしまいそうになるのを 必死でこらえた。
「皆とミサに 行かなかったのか?」
「もちろん これから 行く。でもその前に おまえにクリスマスの贈り物がしたかった」
そう言うと オスカルは小さなプレゼントを出した。
「良かった。おれも渡したいものがあるんだ」
アンドレもまた プレゼントを差し出す。
そして 恒例の掛け声をかける
「せーの!」
8歳の頃から始まった習慣
初めてクリスマスを迎えた時 どちらが先にプレゼントを開けるか揉めたのだ。
結局掛け声をかけて同時に開けることにした。以来毎年そうしている。
「あはっ こういうの欲しかったんだ」
アンドレが嬉しそうにオスカルのくれた時計を腕に当てた。
ワールドタイムの付いたスイスの時計である。黒革のベルトに大きめの文字盤がついている。
「気に入ってもらえて良かった。最近人気が出てきた時計技師の作品なんだが
おまえに似合いそうだと思ったから」
さっそくアンドレは腕にはめてみた。彼の長い腕にしっくりなじむ。
オスカルの貰ったのは 蒔絵を施したペンだった。
黒い漆塗りに黄金に輝く月と美しい桜の花と花びらが散りばめられている。
「ジャポンに行った時買ったんだ」
オスカルも試し書きをしてみる。滑るようにペン先が動きしっくり手になじむ。
「ありがとうアンドレ」
オスカルは愛おしそうにそれを胸に抱いた。
その仕草が 何故かとても女性らしくてアンドレはドキドキした。
「さあ もう行こう。ミサが終わってしまうぞ。着替えるから出てくれないか」
オスカルを外に出して アンドレは急いで支度をする。
(つづく)
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