袖すり合うも多生の縁<33>

    それからも休暇の度に同じようなことが繰り返された。
    帰ってくる度 どんどん美しくなるオスカル。
    話す時間が出来るのは嬉しいが 苦しさも同時に沸き起こってくる。
    あまり いっしょにいる時間が無いのは むしろありがたかった。

    たまに話をしても大した話はしない。互いの近況を報告し合う程度だ。
    「いつも ボランティアばかりなのか アンドレ」
    「そんなこともないぞ。この前はアランと三人で 
    折り畳み自転車を持って ヨーロッパ中を回ってきた。」
    「へー面白そうだな」
    「そうでもないさ。一度など予想以上に坂がきつくて 
    予定していた宿泊施設までたどり着けなくて 野宿したんだ。」
    「そういうのが いいんじゃないか。ワイルドだな。」
    「ワイルドね」

    あの時は確か 三人で山の上から連れションして叫んだんだ。
    『くそばかやろうー!!!一発○りてぇぇぇ・・・!!!』

    「いいな アンドレは 青春してる感じがする。世界を回って 仲間と語らって。」
    「まあな。」
    真相はおまえは知らなくていいんだ。オスカル。
    青春の雄叫びは山だけが知っている。

    オスカルはアンドレが心底うらやましかった。
    スイスの学校は確かに美しい自然豊かな場所で 
    色々な国の子弟が集まり 皆が仲良く勉学に励んでいる。
    少人数制で 今までの中等部や初等部に比べると その質の高さは比べものにならない。
    きちんとした服装。知的で優雅な時間。恵まれていると思う。

    けれど アンドレがいない。 そのことが何より辛い。
    彼のくれたペンは在学中 常に胸ポケットに差していた。
    誰にも触らせず 時々 握り閉めていた。

    アンドレもまた オスカルに貰った時計のセカンドタイムをスイスに合わせ 
    彼女の事を常に気にかけていた。本当に辛かった。

    それでも ベルナールに振り回されたおかげで 
    アンドレはどうにか この辛い高校生活を乗り越えられたのだ。

    やがて オスカルも帰国し 二人は揃って陸軍士官学校に入学した。
    また一緒に学校に通い始めることになったのだが 
    不思議なことにあれほどの息苦しさが消え 昔のようにつきあえるようになったのだ。

    大人になるとは こういうことなのかもしれないな。アンドレは自分の変化をそう感じた。
    あれほど 激流のように荒れ狂っていた欲望を 今は上手に逃がすことが出来るようになった。
    焦りもやわらいでいる。
    世の中にはなるようにしかならないこともあるのだと 学んだせいかもしれない。

    オスカルはそうではなかった。
    3年間アンドレは本当に忙し過ぎて 彼女をつくる暇がなかったようだ。
    その点、ベルナールには深く感謝している。
    しかし、それは後退していないというだけで 事態は前に戻っただけなのだ。
    オスカルの"久しぶりに会ったら きれいになったな"作戦は何の成果もあげてはいない。
    これでは 何のために3年間寂しい思いをしたのかわからない。

    たしかにこの3年で自分はだいぶ女らしくなったはずなのだが 
    アンドレには相変わらず妹のように見えているらしい。
    オスカルのアプローチはさらに続いた。

    今まで以上にアピールのチャンスは増えていた。
    各種パーティー 知人の結婚式 ドレスアップする機会も多い。
    胸元の開いたドレスを着た時は わざとアンドレの前にかがんで見せた。
    もちろん腕を内側に寄せるのを忘れたりしない。
    季節のイベントも最大限活用した。バレンタインには手作りのチョコ。
    ハロウィンには黒猫の扮装をして 長いしっぽでアンドレの顔を撫でてやった。

    陸軍士官学校を卒業して 共に軍務に励む日々の中でも
    オスカルは事あるごとに誘惑してみるのだがこの鈍感男は何の反応もない。
    いい加減、本気でこの男には欲望というものがないのだろうかと思い始めた。

    (つづく)
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