袖すり合うも多生の縁<34>

    しかし、最近になって 決定的なものを見つけてしまった。
    アンドレが不在だったため 彼の部屋で帰りを待つ間 
    手帳の整理をしていて うっかりペンを落としてしまった。
    アンドレにもらった大事なペンだ。
    コロコロ転がり べッドの下の奥の方に入ってしまった。
    仕方なく、腹這いになって取ろうとすると 何か箱のようなものがあった。

    何やら 異様な気配のする箱だ。

    "これは もしや"

    通常ならオスカルは決してこの手の箱を開けたりしないだろう。
    だが 今は彼女の人生がこの箱にかかっているのだ!

    こんな場所に置いてあったのに埃はかぶっていない。頻繁に出し入れされているのだろう。
    薄墨色の箱。ベッドの陰に馴染んでぱっと見ただけではその存在に気づきにくい。

    恐る恐る箱のフタを取る。開ける瞬間 怖くて目を閉じてしまった。
    そっと 目を開けると そこには予期したものが きちんと整頓されて入っていた。

    オスカルの体から力が抜ける。
    DVDは背表紙を上にして 立てて収められブックエンドで倒れないようにしてある。
    本類は大きいものから順番に入れられていて、角が箱の隅にぴったりつけられていた。
    所々付箋が付いている。色々な色があるのは 
    なにか彼なりの規則性に沿った分類のためなのだろう。

    あまりに整然としているので 清潔感すら感じられる。
    だが、オスカルの力が抜けたのは そのせいではない。
    その本とDVDのタイトルが いわゆる"普通"だったからだ。
    実はかなり心配していたのだ。

    もしかして アンドレは普通じゃないんじゃないかと

    たとえば そういうことに いっさい興味がなかったり
    男性が好きだったり 特殊な行為が趣味だったり…

    けれど オスカルの見る限り 今目の前にあるのは
    大多数の成人男性が好みそうな感じのものだ。

    "この付箋やっぱり アンドレが好きなページに付いているんだろうな"

    だとすれば そこを見れば彼の好みが分かるはず。
    とりあえず 一番上の本に 手を伸ばす。

    付箋の所を開けると なんと 金髪の美女が○▼□%#*!!!!

    "うっわぁぁぁぁぁぁ!!!!!!"

    タンタン…

    ドアの外の階段を上がる音がする。
    あの足音はアンドレだ!

    慌てて本を戻し べッドの下に 押し込む。
    転がるように 上に這い上がり 何でもない顔して 手帳を開いた。

    間一髪 アンドレが部屋のドアを開けた。

    「お帰り アンドレ」
    「なんだ オスカル いたのか」
    「明日のことで 確認したいことがあったんだ。」
    「電話かメールをくれればいいのに」
    「急ぎではなかったから」

    "本当は仕事の話は口実で 食事でも誘おうと思ってたんだけど。"

    もうそれどころではない。
    要件を済ますと オスカルは早々に部屋を出た。

    一人残ったアンドレは ちょっとふてくされた。

    "なんだよ そんなに急いで帰ることないのに…"

    いつもなんやかんや 人の部屋でくつろいでるくせに。

    ?! !!!!!!!

    アンドレは自分の足もとに落ちている小さな紙切れを見て驚愕した。
    震える手で 確認すると それはやはり見覚えのある付箋であった。

    おぉぉぉぉぉぉ!!!!!神様!

    まさか あいつ

    慌てて べッドの下を確認する。箱を取り出してみると 
    いつもきっちり揃えてある本が 少しずれていた。

    もうダメだ!終わりだ!おしまいだ!

    アンドレは両手で頭をかきむしった。だから あいつソワソワしてたのか!

    いや?

    もし これを見たんなら きっと 今頃 おれは半殺しになって 
    屋敷を追い出されたんじゃないのか?

    アンドレの胸に希望がわく。あのオスカルの事だ。おれがこんなもの見ていると知ったら 
    まるでケダモノを見るような目をして おれを遠ざけるに違いない。

    あいつがソワソワしていたのは 別の理由だ。本を見たのはきっと彼女ではない。
    いったい誰が… いずれにしろ 隠し場所を替えないといけない。

    アンドレは狭い部屋の中で 思案に暮れた。これは大事な箱なのだ。
    アンドレの欲望制御の秘密の詰まった箱なのだから。

    (つづく)
    スポンサーサイト

    コメントの投稿

    非公開コメント

    sidetitle最新記事sidetitle
    sidetitleプロフィールsidetitle

    青林

    Author:青林
    ”ベルサイユのばら”の二次創作サイトを作っています。ぜひ遊びに来て下さいね。

    青林サイトへ

    ただいま、コメントへのお返事は基本的にはしておりませんが、頂いたコメントは大切に読ませていただいています。ありがとうございます。

    sidetitleカレンダーsidetitle
    07 | 2017/08 | 09
    - - 1 2 3 4 5
    6 7 8 9 10 11 12
    13 14 15 16 17 18 19
    20 21 22 23 24 25 26
    27 28 29 30 31 - -
    sidetitleカテゴリsidetitle
    sidetitleリンクsidetitle
    sidetitle月別アーカイブsidetitle
    sidetitle検索フォームsidetitle
    sidetitleQRコードsidetitle
    QR