袖すり合うも多生の縁<38>

    アンドレは早めに仕事を切り上げ、病院のベルナールを見舞った。
    「調子はどうだ?」
    「ああ 経過は順調だ。今週中には退院できるだろう」
    「そうか。良かった。」
    アンドレはお見舞いの果物をサイドテーブルに置く。今が旬のブドウだ。

    「怪我をさせたお詫びに いいネタを教えてやる」
    「おっなんだ?」
    ベルナールが身を乗り出して レコーダーのスイッチを入れる。
    見れば彼の周りは 新聞や新刊が山積みされ 
    べッドテーブルの上はノートパソコンにタブレット スマフォなどが並べられている。
    相変わらず仕事熱心な奴だ。

    「来年 春 アントワネット様がご結婚なさる。お相手はこの間調べてもらったフェルゼンだ」
    「そうか よく マリア・テレジア様がお許しになったな。」
    「テレジア様ご自身も恋愛結婚だからな。」
    「経緯を詳しく教えてくれ」

    アンドレは差支えない程度に 今までの事を話した。
    ベルナールはいくつか質問しながら 熱心に聞いた。

    「記者会見は 明日の午後3時からだ。号外を準備しとけよ。ただしフライングは無しだぞ」
    「言われるまでもない。おれを誰だと思ってるんだ?」
    興奮して パソコンに向かうベルナールをアンドレは微笑んで見た。

    「じゃ おれ 帰るわ」
    立ち上がりかけたアンドレに ベルナールはキーボードを打つ手を止めず 返事をした。
    「今日はありがとうな。オスカルにもよろしく伝えてくれ。」
    「ああ」
    「それから」
    ベルナールはパソコンから顔を上げて にやりと笑う。
    「おれの結婚式も来年だ。介添えを頼めるかな。アンドレ」
    一瞬驚いたアンドレの顔が みるみる 破顔する。
    「こいつ!いつの間に」
    ベルナールの首に腕を回し 締め上げる。
    「ははは… おれを殺す気か」
    言葉とは裏腹にベルナールの声は明るい。
    「本当におめでとう。ベルナール」
    「うん。ありがとう」

    そこに ロザリーが入って来た。
    「あら、アンドレ きていたの」
    「ああでも もう帰るところなんだ」
    ニヤニヤ 自分を見るふたりの男達にロザリーはちょっと顔を赤らめた。
    「何よ 二人とも なんか変よ」
    「聞いたよ ロザリー おめでとう」

    ロザリーの顔には一気に血が昇り 耳まで真っ赤になった。
    「いやだわ。ベルナール しゃべっちゃったの!」
    「いいじゃないか。彼には色々頼みごともしなければならないんだし」
    「そうだけど…」
    もじもじ 恥じらう彼女が可愛いとアンドレもベルナールも思った。

    「じゃあな。」
    アンドレはこれ以上 二人の邪魔はしたくないと 腰を上げた。
    「あっ待って そこまで 送るわ」
    ロザリーは言ったが
    「いいよ。」
    とアンドレは断った。
    けれど ロザリーは強引に付いてきた。

    病室をはなれると ロザリーはアンドレに向き直って
    「アンドレ 本当にありがとう あなたのおかげよ。
    あの日 わたしベルナールに告白したの。」
    アンドレはニコニコ聞いている。
    「あなたに言われるまで わたし自分の気持ちに気づけなかった。
    けれど気づいてしまえば 彼なしの人生なんか 考えられなくなってしまった。」
    ロザリーはアンドレを見上げ 幸せいっぱいの目で感謝の気持ちを表す。
    「ありがとう アンドレ。今度はあなたが幸せになってほしいわ」
    そう微笑むロザリーに アンドレは返事が出来なかった。

    "おれの幸せ?"

    「もう なに 変な顔しているの?」
    ロザリーはアンドレの腕を掴んで振り回した。
    「いつまで オスカルさまを お待たせするつもりなの?」
    「えっ?いやロザリー おれとオスカルはそんなんじゃ…」
    「いいの?オスカルさまだって いつまでも待ってはくださらないわよ」
    「しかし…」
    「あら あなたもいい加減『本当の恋』に気づいた方がいいわよ」
    そう言うと アンドレの顔をつんと突いて笑いながら ベルナールのところへ帰って行った。

    「ベルナール」
    ロザリーが病室に戻ると ベルナールはパソコンに向いたまま聞いた。 
    「お帰り アンドレと何を話したんだい」
    何気ない様子を気取っていても ロザリーには ベルナールの動揺が見てとれる。
    「内緒よ」
    わざと意地悪をしてみる。
    「ふ~ん」
    興味が無い振りをしてもベルナールが拗ねているのが分かる。

    「あら ブドウ」
    「アンドレがくれたんだ」
    「洗ってくるわね。」
    ロザリーが籠を持ち上げる。
    美味しそうなブドウだ。これを 一粒ずつ食べさせてあげれば 機嫌が直るだろう。
    そうしたら 本当のことを教えてあげよう。
    ロザリーはアンドレの髪のようなブドウを手に取った。

    (つづく)
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