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    約束していた言葉 <14>

    「陛下 パリの市民はあなたに会いたがっております。」
    静かにバイイはそうルイに話しかけた。
    それにルイは微笑んで答えた。
    「わたしもそうしたいと願っている。」
    そしてバイイをその温かな体で包んだのだ。
    はじめは驚いていた バイイであったが、やがて 一筋流れた涙をハンカチで拭うと 
    パリの現状について語り始めた。
    それを聞くルイの顔には 先ほどの査問会議で見せたような優柔不断さはまったくなかった。
    「では、ノートル・ダム寺院かテュイルリー宮殿で王をお迎えできるよう計らいましょう。」
    「いや、バイイ殿 わたしは市庁舎に行こうと思っているのだ。」

    これにはさすがに バイイも言葉を失った。
    同じ革命の本拠地といえる 国民議会とパリ市庁舎ではあるが 
    それなりに教養ある紳士の多い国民議会と違い 
    パリ市庁舎は過激な発言を繰り返す危険な輩がうようよしている。
    そういう輩はささいなことでも感激する代わりに 
    ちょっとした刺激で獰猛で野蛮な野獣と化すものだ。

    バイイの顔色が変わったのをルイは認めると
    「わたしの身を案じてくれるのか ありがとう。危険は承知しておる。
    それでもわたしは行かなければならないのだ。
    物事は完璧にやらなければならない。」
    その穏やかだが きっぱりとしたルイの態度に 
    ただバイイは腰をかがめ頭を垂れるしかなかった。

    結局、国民議会は王の意思を尊重して 
    出来る限り王を守るため 40人の議員が先行してパリに向かうこと。
    100人の議員が王に同行することなどを決めた。

    そしてもう一つ重要な要求を王にした。

    ネッケル氏をもう一度 フランスへ

    この要求をルイは苦い思いで受け入れざるをえなかった。
    ネッケル氏への短い手紙を書きながら ルイはため息を付いた。
    思えば この財政難こそが 全ての元凶であり 鍵なのだ。

    (つづく)
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