おれの気持ちー2-

    「おーい アンドレいるか」
    ピエールの声がした。返事はしたくなかった。
    でもあいつはずかずか入ってきて  勝手におれを見つけた。
    「はは ついにやったか。ばかやろう。」
    そう言っておれの横に座った。
    「マロンのばばあに うちのアンドレに変な事 教えるんじゃないよと どやされてきたぜ 
    まっ適当に流しといたけど。」
    フフンと笑って
    「まっ そう落ち込むな。色男」
    いきなり背中をたたかれた。それでもおれは顔を腕で隠して無視した。

    「女でも買いに行くか。あんな男みたいのよりずっと愛想がいいぞ。」
    「オスカルはちゃんと女だ!!」
    しまった。乗せられた。おれはオスカルの事になるとムキになってしまう。
    この悪友はそれを十分知っている。すぐにまたおれは顔をうずめた。
    「今はそんな気分じゃない。」
    大きな声を出したせいかおれはすんなり言葉が出た。
    ピエールはおれの肩を揺さぶった。カチカチだった体が解れていく。
    「いいさ たまには落ち込むのもな。涙の数だけ男っぷりがあがるってもんだ。」
    立ち上がりながら
    「オスカルさまの部屋 灯り点いてたぜ 女が明るい所にいられるなら 大丈夫ってこった。」
    そう言って出て行った。

    妙に説得力があった。今おれは落ち込んで暗闇に身を潜めているし 
    さっきオスカルは部屋の灯りを点けてなかった。少しだけ救われた気がした。

    次の日おれはどのつらさげてという気分だったが 仕事を投げ出すわけにもいかなかった。
    オスカルと顔を合わすと意外なほど いつもと変わらなかった。
    つられておれもいつもの通りにしていた。

    あれは夢だったのか。いやそうじゃない事はおれの体に 今も残っている感触が証明していた。
    実はおれは夢の中でオスカルを何度も抱いた。けれど夢の中でオスカルはいつも笑っていた。
    嬉しそうにおれを受け入れてくれた。あれはやはり現実だったのだ。

    幸いな事におれはその後 急に忙しくなった。
    オスカルが近衛を辞めて 衛兵隊に移る事になったからだ。
    だんなさまは心配されて おれを従卒としてオスカルに付けると言ってくださった。
    喜んで受けてしまった。正直おれはお屋敷を辞めるかどうか悩んでいたのだ。
    あんな事になっておれは自分に自信がなくなっていた。
    けれどおばあちゃんの事を思うと辞める事ができないでいた。

    そしてなによりオスカルの事を放っておけない。あいつの世話は意外と難しいのだ。
    現におれの代わりに供をしたセルジュは一日でもう供をしなくていいといわれた。
    彼は有能な男だ。彼に落ち度はない。オスカルが問題なのだ。
    たとえばあいつは何も言わず 急に走り出してしまう事がある。
    あいつの足は速いので たいていのやつは追いつけない。おれもだ。

    また馬ならなお悪い。オスカルの馬は軍馬の中でも特に良い物に乗っている。
    乗り手のオスカルも軍で一、二を争う腕前だ。
    そんなのにおれ達が乗っているような馬が追いつけるわけがない。
    なので 走り去ったあいつの様子と状況を考えて どうすればいいのか考えて先回りする。

    こんな事幼い頃からあいつを追いかけてきたおれにしかできないだろう。
    万事がこんな調子では誰だって勤まるはずがない。おれ以外は。
    そんなわけでおれがその後戻るまで あいつは供を連れていかなかった。
    だんなさまがおれを指名してくださった事で おれは自分に言い訳できたのだ。
    おれは必要とされていると。ここにいても良いのだと。

    (つづく)
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