約束していた言葉 <53>

    オスカル軍の相手はフランス東部に陣をはる
    プロイセン軍とオ-ストリア軍である。
    オスカルが王とラ・ファイエット将軍と立てた作戦はこうである。

    東部をオスカルが、西武をラ・ファイエット将軍が受け持ち 
    中央作戦室はルイと老獪な2大将軍、ブイエ将軍とジャルジェ将軍が受け持つのだ。
    本来であれば 総司令官であるラ・ファイエット将軍はパリにいるべきであるのだが、
    士気を鼓舞するために あえて人気のある彼が前線にむかったのである。
    ラ・ファイエット候の敵はイギリスである。自然、海戦になるだろう。

    オスカルは戦地に到着すると あえて 敵軍の主力ではなく つまらない小隊を狙った。
    これも作戦である。まずは何が何でも勝ち戦をしなければならなかったのだ。
    そのためには戦略上の利よりも勝てる敵を探したのだ。

    第一戦はもちろん 圧勝であった。
    まさか 敵に襲われると思っていなかったプロイセン軍は驚き敗退した。
    オスカルは深追いせず すぐに軍をまとめ 次の目標に向かった。
    ぐずぐずしていたら プロイセン軍の主力がきてしまうからだ。

    こうしてオスカルは 自軍を分散させることなく 小規模な転戦を繰り返した。
    同じことを ラ・ファイエット候の軍も西部で行っていた。

    東西から連日もたらされる勝利の報を ベルナールたちの出版社だけでなく、
    各社一斉にこぞって書き立てた。
    それは実際にはあまり好転していない戦局を
    あたかも圧倒的にフランス軍が押しているかのような印象を フランス全土に与えたのである。

    フランス国民は沸き立ち みなこぞって祖国の為に立ち上がった。
    連日志願兵が溢れ、その対応に苦慮するほどであった。
    また、オスカルの存在が女達にも火を点け 多くの女性達が戦うと言い出した。
    さすがに国民衛兵隊では 女性の正規入隊を認めはしなかったが 
    それでも女達は男装して 軍に紛れ込んだのだ。

    各地の衛兵隊では こうした女性を歓迎した。
    中央が認めなくとも 現場では受け入れられていたということだ。
    しかも彼女たちは常に前線に立ちたがった。
    これは味方の兵士にすれば 女に後れを取ってたまるかと鼓舞することになり、
    敵にすれば戦い難い相手と言うことになる。

    戦っていたのは兵士ばかりではない。
    フランスに侵入した敵軍を見つけると 農民たちは敵軍が休憩を取り 
    馬に水を与えたり 食事を作るために使っている川の上流に回り込み 
    家畜の糞を川に流したのだ。

    これでは敵の兵士達はたまったものではない。
    水が使えないとなると 命に係わる。
    もちろん、農民たちも困るのだが上流まで水を汲みに行く苦労より 
    はるかにフランスと革命を守ろうと言う気概の方が上回っていたのだ。

    オスカルの軍もしだいに戦慣れし、後から入隊した兵士で人数も膨らんだので 
    いよいよオスカルは本格的な戦闘を始めた。

    正規の訓練を受けた軍隊と戦うため 
    正面からの衝突は避け 側面からはさみ内にする作戦を立てた。

    2隊に分けた 一方の隊長はアランが務めた。
    オスカルとアランは 息を合わせ敵を拡散させた。
    敵の殲滅が目的ではない。士気を下げて敗走させるのが狙いなのだ。

    フランス軍が本格的に 軍の主力部隊にまで攻撃を始めたとなると 
    増々敵軍はやる気を失くしていった。
    ただでさえ、雇われ軍人と高い思想を掲げて
    みずから喜んで戦闘に参加しているフランス軍では気概が違う。

    ここに 雪が降り始めた。

    このままフランスを攻めて占領しても 
    農民たちの激しい抵抗に遭うことを懸念し始めていた各国は
    この雪を機に撤退を開始した。
    フランスは危機を脱したのである。

    しかし、オスカル達フランス軍は緊張を解くことはなかった。
    いつまた各国が反革命に乗り出すか分からないのだ。
    オスカルは東部に留まり 新兵達の訓練を冬中続けた。

    なにせ 銃を触った事すら無い者も多い。
    しかも一度に多くの志願兵が生まれたので 教練の時間はいくらあっても足らなかった。

    「オスカル たまには休まないと 再発するぞ。」
    アンドレはリ先生から送ってもらっている薬草を煎じながら オスカルに小言を言っていた。
    アンドレの目はかなり回復していて ほとんど生活に支障のないところまできていた。
    オスカルもまた、結核の症状はこのところ出てはいない。
    「この薬のおかげで 症状が収まっているだけなんだからな。」
    そう言いながら 苦い薬を残さず飲んでいるか見張っている。
    「ふん、ちゃんと飲むさ。」
    鍋を抱えて オスカルの行く先々で 薬を煎じてくれるアンドレに感謝しつつも 
    やはりこの味には慣れないオスカルであった。

    「アンドレ またその薬か。」
    アランが書類を片手に司令官室に入ると顔をしかめた。
    アランはもう全快していて薬は必要なかった。
    「少し前なら 魔女扱いされそうな匂いだ。」
    「おいおい せめて 錬金術師といってほしいな。」
    今度は自分の薬を煎じながらアンドレが笑う。
    外は雪が積もっている。春になればまた各国が攻めて来るやもしれない。
    それまでに少しでも 軍を強くしなければと オスカルは思った。

    (つづく)

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