約束していた言葉 <59>

    アントワネットを宴席まで送ると 
    オスカルは再び 一人になりたくてその場を離れた。
    暗い回廊を進んで セーヌの見える窓辺に腰を掛けた。

    「オスカル」
    その声にオスカルは驚かなかった。
    回廊を近づいてくる規則正しい足音を  オスカルは良く知っていたから。
    振り返らずにオスカルは返事をした。
    「フェルゼンか…」

    「すまなかった。」
    突然、謝られてオスカルは彼の方を向いた。

    「すまなかった。以前わたしは君の思いも知らず、酷いことを言ってしまった。」
    「それは… それはわたしもいけないのだ。君には何も話していなかったのだから。」
    「話せなかったんだろう。わたしには。」
    「…」
    「それでも、わたしは友人として 君を信ずるべきだった。
    それなのにわたしは君を疑ってしまった。」
    「わたしは アントワネットさまを裏切るような行為をしたのだ。仕方あるまい。」
    「ふふ…君は相変わらず 潔いな。オスカル。
    ラ・ファイエット候に聞いたよ。今までのことを。」

    オスカルは柔らかい笑顔をフェルゼンに向けた。
    「どうやら、わたしはアントワネットさまのことになると 頭に血が昇ってしまうようだ。」
    フェルゼンは頭をかいて 恥ずかしそうに目を逸らした。
    「気にするな。わたしもそういう男を身近に一人知っている。」
    オスカルは空を見上げる。フェルゼンに顔を見られたくなかった。

    「そして、そういう男に愛される女性は幸せなんだぞ。」

    ふっとフェルゼンは笑って 友の背中に言葉をかけた。
    「幸せなのだな。オスカル。」
    「ああ…」
    オスカルはゆっくり振り返った。

    "ああ 君はこんなにも愛らしい女性だったのか…"

    今目の前にいる人は真に女性であった。
    月明かりの中で 金色の髪は煙るように幻想的に輝き 
    それに縁どられた顔は柔らかに微笑んでいた。
    目に映り込む星々の輝きと薄桃色の唇は 
    白い肌をキャンバスにこの上ない幸せを描きだしていた。
    軍服を着ていても 彼女を男と見間違えることなどあり得ないだろう。

    「これからも 友達でいられるな。」
    「もちろんだ フェルゼン。」

    「今度 一緒に食事でもしよう。アンドレも一緒に。」
    「うん…」
    恥じらいながら 頷くオスカルを
    フェルゼンはもう一度可愛いと感じたのだった。

    宴席に一緒に戻るとアンドレが心配そうに こちらを見ていた。
    フェルゼンはふっとオスカルに目くばせしてから、
    アンドレに近づきその肩をポンッと叩いた。
    「アンドレ 今度、一緒に飲もうな。」
    「えっ あっ はい。」
    フェルゼンは満面の笑みを浮かべ 
    ポンポン二度アンドレの肩を叩いて 客の間に戻って行った。

    (つづく)

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