おれの気持ちー4-

    だが衛兵隊が落ち着き ほっとしたのも束の間 新たな問題が発生した。
    ついに来たのだ。あいつが。

    その日勤務を終えて屋敷に帰り おれは馬を厩舎に戻しに行った。
    オスカルも付いてきて二人で馬の世話をした。最近オスカルはおれから離れたがらない。
    衛兵隊で乱暴されそうになったりして 怖い思いをしたせいだろう。
    おれもやつらと変わらない"オス"だと思うと胸が痛い。

    ふと見ると客用の駐車場にジェローデル家の馬車が見えた。すご~く 嫌な予感がした。
    オスカルは気づいてないようなので あえて言わなかった。
    屋敷に入る時 だんなさまの応接室に灯りが見えほっとした。
    だんなさまは 近衛の重鎮 ジェローデルは近衛連隊長なのだ。
    近衛の話で来ているのだと思った。

    しかし屋敷に入るとおばあちゃんが泣いていた。オスカルが声をかけると

    「だ…だんなさまが…だんなさまが….オスカルさまに結婚を…結婚を…あ…」

    オスカルがおれを振り返る。オスカルがおれの方を反射的に見るのは
    緊急事態や困った時のクセみたいなものだ。無意識におれに相談を持ちかけているのだ。
    けれどおれは答えを 持ち合わせていない。
    オスカルの視線から逃れるように屋敷を飛び出してしまった。

    ”きたか ついにジェローデル”

    ジェローデルがオスカルに惚れている事は知っていた。
    オスカルはまったく気づいていないが見てれば分かる。
    以前 剣を交えた事があったが あの時の殺気から彼の本気が伝わってきた。

    しかし 何故今頃になって。おれはずっとやつを警戒していた。もっとも危険な立場。
    帯剣貴族の三男坊。家格も年も釣り合いがとれている。
    すぐにでもオスカルに求婚できる立場なのにやつはしなかった。
    おれはどれほどうらやましかったか。思わず飛び出してしまったが 
    とりあえず屋敷に戻って事情を確認したほうが良いだろう。

    屋敷に戻るとオスカルはだんなさまのところへ行っているらしい。
    先に着替えてこようと自室に戻った。
    着替えがすまないうちに 凄い音でドアの閉まるのが聞こえた。 だんなさまの応接室の方だ。

    "しまった出遅れた。こんな事なら着替えないで 先にオスカルの部屋へ行くんだった。
    あのドアの閉め方なら間違いなくやばい。"

    いつものパターンであいつはイライラすると物にあたる。
    だからおれはあらかじめ 怪我しそうな物や高価な物は片づけておく。
    間に合わなかった時は おれが身を挺して備品を守らなければならない。
    そしてオスカルの怒りが収まるまで お付き合いしなきゃいけない。
    けっこう大変なのだ。怪我をさせないように立ち回って誘導する。
    胸倉を掴まれるぐらいは良い方だ。
    一度八つ当たりにいいかと思って羽枕を使ったが 
    枕が破れて羽が部屋中飛び散り掃除が大変だった。
    それ以来この手は使ってない。部屋の中には危険な物が沢山ある。
    特に今日の花瓶はおれが先日 苦労して手に入れた物だ。
    オスカルの好みにドンピシャだったのだが 値段が法外だったのだ。
    金があってもぼったくられるのは嫌だ。
    まっとうな価格までなんとか下げさせたのだ。

    とにかくオスカルの部屋に急いだが オスカルの方が先に部屋に着いた。
    どうしたものか。いつもなら何のためらいもなく遅れて部屋に入るのだが 
    今回のイライラの原因が 結婚の話なのでおれは躊躇していた。
    何と言えば良いのかわからない。おばあちゃんのところへ行って話を聞こうかと思っても 
    もしオスカルに何かあったらと思うと オスカルの部屋の前から動けなかった。
    前におれの留守中 イライラしたオスカルが ランプで手を怪我した事もあったのだ。

    「うわーっち!!」

    やったか おれはすぐに部屋に駆け込んだ。
    犠牲者はバイオリンだった。弦が切れただけなので大丈夫だ。
    それよりオスカルの手だ。怪我をしている。
    おれは部屋の中に常備している救急箱を持って オスカルのそばに行った。
    大した事はなさそうだ。これなら薬を塗ってガーゼを当てて置けば良いだろう。
    手当をしているとオスカルは世間話を始めた。
    沈黙が気まずいのでおれも合わせた。

    でも本当はこんな話をする気分じゃないはずだ。
    おまえがさっきまであれほどイラついていた事は 別の事なんだろう。
    いつもならおれにそれをぶつけてくるのに 何故こんなあたりさわりのない話なんかする。
    おれはもうおまえにとって相談するに足りない相手なのか。それともこの話には関係ないと。

    おれはたまらなくなった。
    今触れているこの手をギュッと握って引き寄せて抱きしめてしまいそうだ。

    ”ダレノモノニモナルナ”

    突然思い出された想い。冷静になれない。手が震える。
    おれは逃げ出した。治療を途中で投げ出して おばあちゃんを呼んで急いで階段を上った。
    足をふみ外した。とたんみじめな思いにとらわれた。

    おれは何をやってるんだ!

    (つづく)
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