サベルヌに想いを馳せて…2

    マドモアゼル・オスカルに会った時の衝撃は今でも憶えている。

    純白の近衛服に包まれ 髪を短く切ってはいても その美しさは隠しようがなかった。
    この世にこれほどまでに 圧倒的な美があるとは! 
    口を聞くことも 目を逸らすことも 瞬きさえもできないくらいだった。
    呼吸を忘れ見入ってしまった。

    それからずっと彼女の姿を追い 傍に行きたくて頑張った。

    気高く 清らかな 清純な白薔薇 

    このベルサイユで唯一 絶対的な善

    そう思っていた。

    けれど 副官になり 隣に立ってみれば なんと彼女はか弱い女性であった。

    始めはわからなかった。剣の腕はわたしと互角。銃はそれ以上。教養も高く 頭もきれる。
    軍におけるお偉いさんとのやりとりも堂々とこなす姿は傍で見ていて

    "さすがは わたしのオスカルさま"

    と誇らしかった。女性なのに一切の甘えがない。そして媚びることもない。
    凛として正義を曲げることがない。孤高にして気高い"氷の花"

    まぶしいくらいだった。

    けれど 本当は違った。

    彼女は 血の通った人間だった。

    氷なんかじゃない。

    非難中傷されれば 傷つくし 男との力の差を縮めるために
    知らず知らずのうちに無理をしていた。
    それに気づくのに そう時間はかからなかった。

    「隊長 少しお休みください」
    勧めてみても
    「ありがとう だがわたしは大丈夫だ」
    そう言って いつも いつも 気を張り続けていた。

    "いったい、このお方はいつ休んでいるのだろう?"

    その答えは難しくはなかった。

    アンドレ・グランディエ

    彼のことも始めは理解していなかった。
    従順な飼い犬の仮面の下にときおり見せる貪欲な狼の表情を嫌悪し、
    彼を彼女から遠ざけたいと思っていた。

    だが…

    激務で疲れた彼女にアンドレがショコラを差し出す時、
    仮眠室でアンドレが彼女に毛布を掛ける時、
    帰りの馬車の用意ができたと アンドレが呼びにくる時、
    オスカルは他の者に決して向けることの無い笑顔を見せる。

    一切の虚飾も構えもない 全く無防備の笑顔。

    勤務を終えると 二人一緒に帰り
    翌朝には、また清々しい顔で 出勤なさるのだ。

    いくら尽くしても 所詮自分は職場の仲間の域を出ることはなかった。

    「おまえが 居てくれて助かる」

    その彼女の言葉に嘘はなく、心から信頼されて 頼られているのは自覚している。

    でも… 違う

    そんな風に 甘えられたいわけではない。

    金モール揺れる肩の震えを抱きとめて差し上げ、
    真紅の軍服の下に潜ませている彼女をむき出しのまま守りたいのだ。

    安心して泣いていただける場所になりたい。

    何もかも全てを受け止められるほど もうわたしは成長したのだと分かっていただきたい。

    近衛の司令官室の窓の外にはチラチラ雪が舞い降り始めていた。
    それを眺めながら ようやく程よく醒めた紅茶をジェローデルは美味しそうに飲み干した。

    そのちらつく雪の中、見慣れた近衛兵が馬を急がせて前庭に駆け込んできた。
    すぐさま ジェローデルは窓辺を離れた。
    待ち望んでいたオスカルの帰還を知らせる前触れが到着したのだ。

    (つづく)

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