華やかな葬式8

    ジャルジェ家に帰るとオスカルは出迎えたばあやにマントを渡した。
    「アンドレは?」
    「それが まだ 帰っていないのでございますよ」
    「そうか…」

    きりきり 痛んでいた胸が 今度はぽっかり空いたようになった。

    自室の暖炉の前のソファに深く座り、膝を抱えて火を見つめた。

    どうして、不安なのかわからない。

    男として生きてきた。

    これからもそうするだけのことではないか。

    『はっはっは やっぱり女だねえ
    センチメンタルに なんぞ なってるから
    ドジをふむのさ!』

    顔を組んだ腕の中に隠すようにして埋めた。

    「ただいま オスカル」

    アンドレの声にオスカルは隠れるように袖で顔を拭った。
    いつの間にか 泣いていたようだ。

    「どうだった…」
    声の調子から おそらくアンドレはロザリーを見つけられなかったのだろうとは
    予測が付いたが他に言うべき言葉がみつからない。
    「おれもダメだったよ。見つからなかった。
    パリの屋敷のみんなに手伝ってもらったんだけどね」
    「そうか」
    「オスカルはどこを探してたの。だれとも会わなかったみたいだけど」
    アンドレの声の調子がいつもと違う。まるで詰問するかのようだ。

    "怒っているのか?アンドレ なぜ?"

    「わたしは…」
    言いかけてピクリとした。そうだ、わたしは何故帰って来てしまったのだろう?
    まだ まだ 探すべき場所は有ったはずだ。
    「わたしはフェルゼンのところへ行った」
    アンドレは怒ったように自分を見ている。
    その目が怖くて つい 言い訳がましいことを口にしてしまう。
    「ほら フェルゼンとロザリーは知り合いだから」
    「それで 他には」
    「他って…」
    オスカルは言い淀んだ。
    「他はどこを探したんだ」
    「いや…」
    オスカルは目線を逸らして答えた。
    「そうか わかった じゃあおれはもう行く」
    アンドレはイライラして出て行こうとした。

    "いやだ! 一人にしないで"

    オスカルの胸が不安でいっぱいになる。

    けれど アンドレは怒っている。
    それでも 縋らずにはいられない。

    「…アンドレ…」

    アンドレはドアノブを回しかけた手を止めたが 返事をしてくれない。

    「アンドレ!」

    今度は強く呼び掛けた。彼は観念したように戻って来て、暖炉の薪を足し、火を起こした。
    それから ゆっくり自分の方を向いてくれた。

    オスカルの胸の穴が埋まっていく。

    そっと隣に座るアンドレから いつものオーディコロンが香る。
    その胸に顔を埋め目を瞑る。

    アンドレの手がそっと肩に掛けられる。

    それだけで

    たったそれだけで

    すぅと不安な気持ちが消えていく。

    (つづく)

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