白ばらとアブラムシとテントウムシ-2-

    屋敷に戻るとすぐ庭師を呼んで ミントのブーケを渡し
    「これと同じものを 植えられるか」
    そう訊いた。
    「ええ どれも一般的な種類のものですから大丈夫です。すでに庭にあるのも入っていますね。」
    「このリンゴの香りのするのは?」
    「アップルミントです。これは無いので取り寄せます。」
    「そうしてくれ。」

    庭師が下がるとヴィクトールはため息をついた。

    "あんな汚い所で 男色の隊長のもとで 働くのか。"

    気が重い。今まで三男坊の彼は忘れ去られていたかのように田舎に置かれた。
    厳格な修道士を家庭教師につけられラテン語や 歴史など一通りの教養を身につけた。
    いずれ軍人になるので 剣と乗馬 銃なども別の家庭教師がついて学んだ。
    その生活に不満はなかった。
    生活の面倒をみてくれていたじいやは優しくて たまに来る家族よりずっと好きだった。

    空気が綺麗で穏やかな村には 裸足で駆けまわる子供達がいっぱいいた。
    ヴィクトールは彼らと 自分も裸足になって遊んだ。
    御領主さまのご子息とはいえ 三男坊の彼はさほど 
    村人に気にされる事無く 可愛がってもらえた。
    それでも一緒に遊んでいた子供達が だんだん大人の仕事に付き始めると 
    将来に不安を感じ始めた。
    父の「そろそろベルサイユに戻って軍人に」という言葉に素直に従ったのはそのせいかもしれない。

    田舎からはじいやとロミが付いてきた。ロミは村の子供で 一緒に遊んだ幼馴染だ。
    大きくなったとき丁度 田舎の屋敷の人手が足りなかったので下働きに雇った。
    ベルサイユに行く事になった時 思いつきで誘ってみたら 目を輝かせて付いてきた。

    「ヴィクトールさま。おれ 都会で珍しい植物が見たいんです。出来れば育ててみたいです。」
    聞けば屋敷の庭師と仲良くなって 色々教えてもらううちに興味が出てきたそうだ。
    ベルサイユではジェローデル家の本宅ではなく 別館に住むつもりだったので
    別館周りの手入れを手伝わせることにした。正直嬉しかった。ロミが付いて来てくれたのは。

    バルコニーに出るとそのロミがしゃがみ込んで草むしりをしていた。
    「お~い。ロミ」
    「あれ ヴィクトールさま。お戻りでしたか。」
    彼が眩しそうに 手で日差しを避けながら ヴィクトールを見上げた。
    「今から そっちに行く。」
    そう言うやいなや ヴィクトールはひらりとバルコニーから飛び降りた。
    「相変わらず 無茶しますね。足でも挫かれたらどうなさいます。」
    言いながらもロミは笑っていた。
    フフンとヴィクトールは鼻で笑って ロミが摘んでいた雑草を 籠からつまんで指で擦った。
    白い指に濃い緑色が付いた。嗅いでみると子供の頃転げまわった草原が思い出された。

    「今日 宮殿に行った。つまらん所な上に 臭くて汚かった。」
    「ええ?王様の住んでいる所なんでしょ。」
    「おまけに 上司が男色だ。」
    「そりゃ大変だ」
    「おまえ ひとごとだと思ってるだろう。」
    「ひとごとですから」
    「こいつ」
    ヴィクトールがロミの首に腕を回して締め上げても ロミは笑っている。
    その笑い声がヴィクトールには 何より嬉しい。

    (つづく)
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