剣戟の狭間で-4-

    廊下を早足ぎみに アンドレを引きずるようにジェローデルは歩いていた。
    彼はいらついていた。アンドレはジェローデルの真意を図りかねていたので黙って従った。
    「なんで。」
    唐突にジェローデルは言い出した。
    「なんで ああわからないんだ。男心がまるでわかってない!」
    何のことか アンドレにはわからなかった。
    「きみはよく 黙っていられるな。」
    突然振られてアンドレはとまどった。

    「隊長だ!連隊長!」
    ああ やっとアンドレは彼の行動の意味がわかった。
    「仕方ないでしょう。連隊長殿は女でございます。男心などわからなくて当然でございます。」
    アンドレはつまらなさげに言った。ジェローデルの足が止まった。
    「女だから・・・」
    「さようでございます。」
    「そうか。そうだね。」
    ふふっとジェローデルは笑った。
    ふとアンドレの手に巻いたハンカチから血が滲み出ているのを見て 
    自分のハンカチをさらに巻いた。そして今度はゆっくりと歩き出した。

    医務室にはもう誰もいなかった。
    ジェローデルは迷わずてきぱきと薬品やら包帯やらを用意していく。
    「わたくしは自分でいたします。」
    「よい。すぐ済む。片手ではやり難かろう。」
    ジェローデルは本当に手際良く傷の手当をした。
    「すごい。お上手ですね。」
    アンドレは感心してつい言ってしまった。
    「当たり前だ。わたしは軍人だぞ。傷の手当もできないで務まるか。」
    少しムッとしてジェローデルは言った。アンドレは肩をすくめた。
    オスカルの手当は大抵アンドレがするので オスカルはたぶんこんなに上手にできない。
    おれはオスカルを甘やかし過ぎかなとアンドレは思った。
    そういえば ジェローデルは供を連れてこない。身の回りの事は何でも自分でやるようだ。

    「できたぞ。」
    パタンと薬の箱を閉めながらジェローデルは言った。アンドレの手はきれいに包帯が巻かれていた。
    おれがやるよりきれいだな。アンドレは思った。
    「ありがとうございました。」
    アンドレはわりあい素直に礼が言えた。

    二人で医務室を出て アンドレはジェローデルの後ろにつくようにわざとゆっくり歩き出した。
    するとジェローデルはアンドレに合わせて速度を落として横につこうとする。
    アンドレはさらに速度を落としたがジェローデルも合わせてくる。
    何度か黙ってもたもた歩いていたが アンドレは根負けしてジェローデルと並んで歩き出した。

    廊下の窓から夕日が射してきた。
    「わたしは謝らないぞ。」
    ジェローデルは言った。
    「今度は格闘術にするか。きみは素手の方が得意なんだろう。」
    「もう お許しください。」
    アンドレは手を振っておどけた。フンッとジェローデルは鼻で笑った。
    あとは司令官室まで何もしゃべらなかった。

    この後も アンドレとジェローデルはバトルをくり返した。オスカルが近衛を辞める頃には 
    アンドレはジェローデルにためぐちをきくようになっていたが 
    当人達はこの変化に気づいてなかった。

    FIN

    ”剣戟の狭間で”はこれで終了です。お読み頂きありがとうございました。
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